通貨偽造罪
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通貨偽造罪(つうかぎぞうざい)とは、行使の目的で通貨等を偽造する罪をいう。日本では、刑法(明治40年法律第45号)148条1項により罰せられる。日本国外において犯したすべての者にも適用される(同法2条4号、講学上のいわゆる保護主義)。準備(同法153条)、未遂(同法151条)も罰せられる。広義には、刑法第16章に定める罪すべてを含むため、外国通貨偽造及び行使等罪(同法149条)・偽造通貨等収得罪(同法150条)および収得後知情行使等罪(同法152条)も含む。
偽造通貨の流通はその国の信用を揺るがし、最悪の場合、国家の転覆をも生じかねない性質を持つため、どの国においても金額の多少に関わらず重罰が適用される。
目次 |
[編集] 法文
刑法(明治四十年四月二十四日法律第四十五号)
- 第十六章 通貨偽造の罪
- (通貨偽造及び行使等)
- 第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
- 2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
- (外国通貨偽造及び行使等)
- 第百四十九条 行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
- 2 偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
- (偽造通貨等収得)
- 第百五十条 行使の目的で、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を収得した者は、三年以下の懲役に処する。
- (未遂罪)
- 第百五十一条 前三条の罪の未遂は、罰する。
- (収得後知情行使等)
- 第百五十二条 貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。
- (通貨偽造等準備)
- 第百五十三条 貨幣、紙幣又は銀行券の偽造又は変造の用に供する目的で、器械又は原料を準備した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
[編集] 主な解釈論
[編集] 保護法益
通貨に対する社会の信用であるという説と、通貨を発行する者の発行権であるという説がある。判例は明確ではないが、前者に傾いている(最判昭和22年12月17日刑集1巻94頁)。
[編集] 行使の目的
流通におく目的が必要というのが判例・通説である(有価証券偽造罪の場合は、行使する目的で足りる)。他人をして流通におかせる目的でもよい(最判昭和34年6月30日刑集13巻6号985頁)。
[編集] 行使
判例により、両替(最決昭和32年4月25日)、他人に贈与(大判明治35年4月7日)、自動販売機への投入(東京高判昭和53年3月22日)の各行為は行使にあたるとされている。一方、偽造した通貨を自己の信用を示す為に見せることは、行使にあたらないというのが通説である。また、犯罪の身代金等に偽造した通貨を渡す行為も本罪の行使にはあたらないとされる。
[編集] 交付
判例・通説によれば、行使の目的で、偽貨であると告げて相手に渡すか、偽貨であると知っている相手に渡す場合である(大判明治43年3月10日刑録16輯402頁)。偽貨であることを知らない相手に渡すのは行使罪を構成する。
[編集] 罪数
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 山中敬一 『刑法総論II』 成文堂、1999年。
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