通俗心理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
通俗心理学(つうぞくしんりがく)とは、市井の人々が日常生活の中で自分や他人の心や行動を理解・説明する際に援用する知識や理論のこと。学術的な心理学の知識を持たない人が心理学だと思い込んでいるものであり、学術的論考では使われない概念や疑似科学的な理論が多く含まれる。ポピュラー心理学とも呼ばれる。
日本における事例としては、極めて限定的な条件の下で、極めて限定的な選択肢を選ばせた結果から心理分析や性格診断を行う心理テスト(統計学を用いる学問的な心理テストと呼称が同じだが全くの別物である)や、血液型性格診断などが代表的である。 通俗心理学の広まりについては書籍やテレビの影響が大きいが、ときに心理学者自身がこれに加担していることがある。
目次 |
[編集] 通俗心理学の信憑性
通俗心理学の信頼性を高めるために、しばしば「統計学的に証明されている」という文句が使われるが、当然そのような証明はされていない。 こういった主張をする人間は一様に統計学を正しく理解おらず、データを自分にとって有利なように解釈している事などがほとんどである。
通俗心理学は一般的な経験則や認識に当てはめて考えると、妙に納得してしまう主張や結論を導きだしているため、簡単に信じてしまう人が多い。しかし、通俗心理学で導かれる結論は「強引に解釈すればそう考えられない事もない」という程度のもので、根拠のない安易な人格批判を生み出しているという指摘がある。
[編集] 通俗心理学の功罪
通俗心理学は好奇心をかきたてる事から、長年コミュニケーションの1つとして親しまれている。そのため商業的に大きく取り上げられる機会が多い。 近年、「通俗心理学は科学的に実証されている」と主張して信憑性を高める事で、その有効性を強調する傾向があるが、それは「科学的な根拠がある」と宣伝すれば商業的な成功に繋がりやすいという背景があるからである。 当然、正しい手続きで行われた科学的な実証はされておらず、通俗心理学の有効性は限定的であるというのが、心理学研究者の間の共通見解である。むしろ他者への安易な人格批判に結びつくなどの問題点があるため、影響力の強いテレビ番組への批判は非常に多い。
[編集] 通俗心理学的知識(誤解)の例
- 心理学を学ぶと人の心が読めようになる。
- 雑誌やテレビで目にする心理テストは心理学の研究成果である。
- 心理学の祖はフロイトであり、精神分析が心理学の主流である。
- 血液型性格分類
- 右脳・左脳論
- 三歳児神話
[編集] 書籍
通俗心理学を批判した本
- 『フロイト先生のウソ』 (原題=『Lexikon der Psycho-Irrtuemer』(心理学間違い事典)ロルフ・デーゲン ISBN 4167651300
- 『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』村上 宣寛 ISBN 4822244466