蒲団 (小説)
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『蒲団』(ふとん)は、田山花袋の中編小説。1907年8月号「新小説」に掲載され、のち易風社から刊行された『花袋集』に収録された。
花袋に師事していた弟子の岡田美知代とのかかわりをもとに描いた小説。日本における自然主義文学、また私小説の出発点に位置する作品で、末尾において主人公が女弟子の使っていた蒲団の匂いをかぐ場面など、性を露悪的にまで描き出した内容が当時の文壇とジャーナリズムに大きな反響を巻き起こした。
自分のことを暴露する小説としては、これより先に森鴎外の「舞姫」があったが、下層のドイツ女を妊娠させて捨てるという内容ゆえに、女弟子に片思いをし、性欲の悶えを描くという花袋の手法ほどの衝撃は与えなかった。小栗風葉は「中年の恋」という主題にのみ着目して、「蒲団」に続いて「恋ざめ」を書いたが、自然主義陣営の仲間入りはできなかった。以後三年ほど、花袋は文壇に君臨したが、一般読者にはあまり受けなかった。
花袋の盟友ともいうべき島崎藤村は、その後、姪との情事を描いた『新生』を書いて花袋にも衝撃を与えたが、私小説の本格的な始まりは、大正二年の近松秋江「疑惑」と木村荘太「牽引」だとする説もあり、花袋や藤村はその後、むしろ平凡な日々を淡々と描く方向に向かった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
34歳くらいで、妻と三人の子供のある作家の竹中時雄のもとに、横山芳子という女学生が弟子入りを志願してくる。始めは気の進まなかった時雄であったが、芳子と手紙をやりとりするうちにその将来性を見込み、師弟関係を結び芳子は上京してくる。時雄と芳子の関係ははたから見ると仲のよい男女であったが、芳子の恋人である田中秀夫も芳子を追って上京してくる。
時雄は監視するために芳子を自らの家の2階に住まわせることにする。だが芳子と秀夫の仲は時雄の想像以上に進んでいて、怒った時雄は芳子を破門し父親と共に帰らせる。そして時雄は芳子のいない空虚感のために、芳子が寝ていた蒲団に顔をうずめ、泣くのであった。