自由心証主義
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自由心証主義(じゆうしんしょうしゅぎ)とは、訴訟法上の概念で、事実認定・証拠評価について裁判官の自由な判断に委ねることをいう。法定証拠主義(恣意的な判断を防止するため、判断基準を法で定めること)の対概念をなす。歴史的には、かつての法定証拠主義から、自由心証主義への変遷がみられる。
[編集] 民事訴訟上の自由心証主義
自由心証主義について、日本の民事訴訟法は明文の規定を置いている。
- 民事訴訟法第247条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
[編集] 刑事訴訟上の自由心証主義
刑事訴訟上の自由心証主義は、主として証拠の証明力(価値)の判断を裁判官の自由な判断に委ねることを意味する。ヨーロッパの法制度では、フランス革命期までは法定証拠主義が採られていたが、この制度は被告人の自白を有罪の要件とした点に問題があった。すなわち、自白を得るための拷問や過酷な取調べを容認したからである。
自由心証主義について、日本の刑事訴訟法は明文の規定を置いている。
- 刑事訴訟法第318条 証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。
もっとも、自由心証主義といっても、一定の合理的枠組みを持ち込むために、刑事訴訟法には自由心証主義を担保する諸制度が置かれている。
- 証拠能力の有無。違法な手続きで収集された証拠には、証明力を認めることができない。
- 自白に関する補強法則。すなわち、自白が唯一の証拠である場合には、有罪としてはならないという規定である(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)。
- 上訴制度。判決に理由を付さなかったり、理由に食い違いがある場合は、控訴理由になる(刑事訴訟法378条)。事実の誤認があった場合(同382条)も同様である。