聖槍
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聖槍(せいそう 仏:Sainte Lance 独:Heilige Lanze 英:Holy Lance)とは、十字架上のイエス・キリストの死を確認するため、わき腹を刺したとされる槍である。イエスの血に触れたものとして尊重されている聖遺物のひとつ。聖書の新約聖書四福音書の、「ヨハネによる福音書」に記述されている(19:34)。ヨハネ伝の作者は、この箇所を、仮現説論者に対し、イエスの死を見せつけるために強調しているとも考えられる。後にロンギヌス信仰と結びつき、「ロンギヌスの槍」(仏:lance de Longin 独:Longinuslanze 英:Lance of Longinus)とも呼ばれる。またキリスト受難の象徴でもある。 「所有するものに世界を制する力を与える」との伝承があり、アドルフ・ヒトラーの野望は、彼がヴィーンのホーフブルク王宮で聖槍の霊感を受けた時より始まるといった俗説もある。
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[編集] ロンギヌス
ロンギヌスとはラテン語の longus が元になったと思われる男性の呼称で、イエスが本当に死んでいるのかどうかを調べるために槍を突き立てたローマ兵を指す。
聖伝によれば、この人物は、ローマ軍団の百卒長ガイウス・カシウスとされている。彼は白内障を患っていたが、槍を刺した際に滴ったイエスの血がその目に落ちると視力を取り戻した。それを契機として彼は洗礼を受け、後に聖者(聖ロンギヌス)と言われるようになったという。
ただしロンギヌス自身の実在については、ロンギヌスの槍に関する記述が新約聖書のヨハネによる福音書にしか見られず、信憑性に乏しいため、後世に創作された人物であるとされている。
[編集] アーサー王伝説の聖槍
聖槍はまた、キリスト教説話としての性質の濃い、アーサー王伝説の聖杯探索のくだりにも登場する。 聖杯城カーボネックを訪れた円卓の騎士らの前に聖杯とともに現れ、穂先から血を滴らせた白い槍という姿で描写される。名前はロンゴミアントと言われている。
[編集] 十字軍
第一回十字軍がアンティオキアで苦戦しているとき、トゥールーズ伯レイモン麾下のペトルス・バルトロメオなるものが、聖アンデレのお告げにより聖槍を発見したと主張した。十字軍将兵の士気は高まり、勝利を得る事ができたが、槍の真贋を疑うものも多かったため、自ら神明裁判を買ってで、槍をたずさえ火に飛び込んだが、数日後に死亡した。
[編集] フィクション
その神秘性から、アニメやゲームにおいても強力な武器、もしくは物語に関わる重要な道具として登場する。例えば、『新世紀エヴァンゲリオン』では「ロンギヌスの槍」と呼ばれる大いなる力を秘めた兵器が登場したり、プレイステーション用ソフト『ペルソナ2 罪』では主人公達の特殊能力を封じる武器として登場している。