第二ファウンデーション
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『第二ファウンデーション』 ( Second Foundation ) は、アイザック・アジモフのSF小説。ファウンデーションシリーズの3巻で、『ファウンデーション対帝国』の続編にあたる。アメリカにおいて初版は1953年に発行された。物語に登場する架空の集団の名称でもある。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 概要
2本の中編からなる。1948年と1949年のアスタウンディング・サイエンスフィクション誌に掲載されたもので、『今度はわかったな――』と、3回に分けて掲載された『――しかもわかっていなくもある』をまとめたもの。
銀河系の端にある惑星ターミナスに銀河百科辞典編纂者の集団「ファウンデーション」が追放されて約300年後の世界。勢力を伸ばしていたファウンデーションが突然変異体のミュールの手に落ちて5年ほど経過した頃から物語が始まる。ファウンデーションは陥落したものの、存在だけが知られている第二ファウンデーションは発見されていなかった。この謎の集団である第二ファウンデーションを探索する物語であり、最後にその位置が読者へと明らかにされる。
創元推理文庫版『銀河帝国の興亡』訳者の厚木淳により、形而上学における第一動者(プライム・ムーバー)という概念が、第二ファウンデーションの長である第一発言者に当たると指摘されている。さらにそれは登場人物の名前にも示されている。
[編集] あらすじ
第二ファウンデーション探索にあと一歩で失敗したミュールは、惑星カルガンに本拠地をおき最後の探索を開始した。将軍ハン・プリッチャーと、有能な若者ベイル・チャニスが探索に出されたが、チャニスは独断で惑星タゼンタへと向かう。チャニスは、第二ファウンデーションの位置についてハリ・セルダンが残したヒント「星界の果て」がタゼンタと符合することをプリッチャーに説明し、納得させる。
チャニスらはタゼンタの影響下にある惑星ロッセムに一旦着陸し、プリッチャーの精神が第二ファウンデーションの干渉を受けている事を話す。狼狽するプリッチャーだが、そこにミュールが現れ、第二ファウンデーション員であったチャニスと精神制御能力の戦いになる。ミュールはチャニスをねじふせ、第二ファウンデーションの位置が惑星ロッセムであることを知る。しかしさらに第二ファウンデーションの長である第一発言者が現れ、ロッセムでさえも本当の位置ではないことを話したうえ、ミュールが罠にかかったことを告げて戦いを終結させる。後にチャニスは脳波構造を元に戻し、真実を思い出す。
ミュールの死後独立を果たしたファウンデーションは新しい時代を迎えていた。大衆は危機に際して第二ファウンデーションを頼りにした。さらに第二ファウンデーションが第二銀河帝国の支配層になるのではないかと危惧し、危機感を持つダレル博士のような人も出てきた。第二ファウンデーション側も、ミュールへの反抗によって力の一端を露呈してしまった事で、セルダン計画が気泡に帰することが危惧されていた。
ダレル博士らは第二ファウンデーションの資料を集めるため、惑星カルガンに図書館員のホマー・マンを送り出すが、興味をもったダレル博士の娘アーカディが勝手に付いて行ってしまった。資料があるとされ、今は封印されているミュールの宮殿に入るため、アーカディはカルガンの支配者ステッティン卿の愛人カリアを説き伏せる。しかし話を聞いたステッティン卿は、自らの手で第二銀河帝国を復興させることを夢想する。カリアの手によって脱出したアーカディは宇宙空港で捕まりかけたが、惑星トランター農協の代表プリーム・パルヴァー夫妻に助けられ、一緒にトランターヘ向かう。
その後、ついにカルガンとファウンデーションの間に戦争が起きる。不利な位置にあるファウンデーション側は連敗を喫したが、ついに自らの力で重要な戦闘に勝利する。やがて戦争が終わった後、ダレル博士らはアーカディの伝言から第二ファウンデーションの位置を突き止める事に成功、構成員を捕らえることにした。
最後、第二ファウンデーションの第一発言者と学生の対談の中で、今回の事件の顛末と、第二ファウンデーションの本当の位置が語られる。第一発言者が銀河を見あげながら、セルダンの残した「星界の果て」という言葉の意味に想いを寄せるところで、物語は一旦終了する。
[編集] 登場人物
[編集] 第1部・ミュールによる探索
- ミュール
- 突然変異体。32歳。ファウンデーションを占領し、世界連邦を打ちたてて首長となり、第一市民を名乗る。勢力の拡張を止め、第二ファウンデーション探索を続ける。
- ハン・プリッチャー
- ミュールの将軍。5度の探索を行うが成果はなく、最後の探索を命ぜられる。
- ベイル・チャニス
- 有能な20代の若者。ミュールによって転向されておらず、野心を利用されてプリッチャーとともに探索の旅に出る。
- 第一発言者
- 第二ファウンデーションの人間。議会で最初に発言する権利を有しており、事実上の代表者。
[編集] 第2部・ファウンデーションによる探索
- アーカディ・ダレル
- 惑星ターミナスに住む14歳の早熟な女の子。ベイタらの孫で、第二ファウンデーション探索に首を突っ込む。
- トラン・ダレル
- アーカディの父。42歳。電気神経学者で、第二ファウンデーションに危機感を持っている。ミュールを一時的にせよ打ち負かしたことで知られるベイタらの息子であり、そのことによりダレル家は名家とされていた。
- ペアレス・アンソーア
- 電気神経学を学ぶ学生で29歳。ダレル博士に協力する。
- ジョウル・ターバー
- 放映記者。ダレル博士に協力しており、従軍記者としてファウンデーション艦隊に赴く。
- ホマー・マン
- 図書館員。第二ファウンデーション探索の資料を入手するため、ダレル博士らによって惑星カルガンに行かされる。
- エルヴェット・セミック
- 物理学の名誉教授で老人。ダレル博士に協力しており、指定された小さな機械を作りあげる。
- ステッティン卿
- ミュール亡き後の惑星カルガン君主で第一市民を名乗る。アーカディとの子孫で第二銀河帝国を復興させることを夢想する。
- レヴ・メイルス
- ステッティン卿に仕える大臣。冷静な判断力の持ち主で、ステッティン卿に対し度々諌言をする。
- カリア夫人
- ステッティン卿の愛人。
- プリーム・パルヴァー
- 惑星トランターの農協代表。惑星カルガンでアーカディを保護し、ダレル博士に重要な伝言を伝える。