治外法権
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治外法権(ちがいほうけん)とは、一国の国内であって、その国の主権が及ばない特権であり、外部の法によって治めることができる権利。
治外法権は、外交上の慣例として、派遣国の認証があり、接受国による信任状の受理(接受)があった場合において、派遣された外交官に対して相互に認められる特権として確立されてきた。ウイーン条約においては、外国の公使館および外交官特権を所持している外交官に認められる。
何らかの戦争が生じ、その敗戦の結果、戦勝国などに治外法権の租借地を期限付きで認めた場合などには、片務的な特権としての治外法権の問題が生じる。多くの場合は接受国の認証なく、単に戦勝国の国民・あるいは兵士であるという地位において治外法権を享受することが可能となるため、外交交渉においてこれらを撤廃することは重要な外交課題となる。
[編集] 在日米軍
在日米軍基地および公務中の在日米軍の構成員及び軍属は、在日米軍地位協定により日本の裁判権の管轄外とされている。在日米軍の構成員及び軍属が基地内部で起こした犯罪、および「公務中に基地の外で起こした犯罪」に対しては日本の法律が適用されない(客観的にはそうでなくても軍当局が公務中であると主張した場合、日本は受け容れざるを得ない)。このため沖縄や横須賀、佐世保などでは在日米軍兵士の起こした犯罪に対する裁判権の管轄問題がしばしば問題となる。 ただし現実の運用においては捜査権限の競合が問題の中心となるケースが大半であり(基地の外において米兵が犯罪行為を犯した場合、米軍の憲兵と日本の検察・警察の捜査権限は競合しており、先に身柄を確保した側に優先的な捜査権限がある)、あきらかに公務以外での犯罪行為であるケースでは身柄を日本の警察・検察側に引き渡し、日本の司法により裁判をおこなうことが慣例となっている。