求核置換反応
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求核置換反応(きゅうかくちかんはんのう)とは、反応の中心となる原子に対して求核剤が求核攻撃し、脱離基が脱離する反応。反応の形態によってSN1反応、SN2反応がある。
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[編集] SN2反応
SN2反応では、求核剤が四級の炭素に対して、脱離基の背面から衝突することで反応が始まる。 これにより中心の炭素は求核剤、脱離基が軸方向にある三方両錘型の遷移状態となり、ここから脱離基が抜けることで求核置換反応が終了する。このため、生成物の中心の炭素の絶対配置は完全に反転する(ワルデン反転、立体化学の反転)。また、この反応の反応速度は基質、および求核剤の濃度のそれぞれに一次であり、二分子的求核置換反応である。
[編集] 反応性
SN2反応は脱離基の背面から衝突するので、脱離基の背面に大きな置換基があると反応性が低くなる。
(CH3)3C-X << (CH3)2CH-X < CH3CH2-X << CH3-X
[編集] SN1反応
SN1反応では、まず基質の脱離基が脱離し、平面状のカルボカチオンを生成することから始まる。ここに、求核剤が攻撃することで反応が終了する。求核攻撃はどちらの側からも起こるので、生成物の中心炭素の絶対配置は決まらず、ラセミ体となる。(なお、カルボカチオンの生成の段階で、脱離基がカルボカチオンの近傍に存在するため、生成物は完全にはラセミ体とはならず、一部がラセミ化した状態となる。これを部分ラセミ化と呼ぶ。)また、この反応の律速段階は初めのカルボカチオンの生成の段階であり、反応速度は基質の濃度に対して一次である。
[編集] 反応性
SN1反応は一般に第3級の基質でおこる。第3級以外であるとSN2反応が優先して起こるからである。特にCH3-XはほとんどSN1反応しない。
R3C-X >> R2CH-X > RCH2-X > CH3-X
この反応性を利用してSN1反応は第1級、第2級、第3級アルコールの検出に使われる。