核拡散防止条約
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核拡散防止条約(かくかくさんぼうしじょうやく、Nuclear Non-Proliferation Treaty = NPT)は、正式名称を核兵器の不拡散に関する条約(かくへいきのふかくさんにかんするじょうやく)と言う。アメリカ合衆国、ロシア、中華人民共和国、フランス、イギリスの5カ国以外の核兵器の保有を制限し、核軍縮を進めるための条約のひとつである。元は第二次世界大戦の敗戦国であった日本とドイツの核武装を阻止する為に提案されたものである。
[編集] 概要
核拡散防止条約は、1963年国連で採択され、関連諸国による交渉、議論を経て1968年に最初の62カ国による調印が行われた。発効は1970年3月。締結国は189カ国(2003年12月現在)。日本は1970年2月に署名、76年6月に批准した。インド、パキスタン、イスラエルは未加盟の核保有国である。また北朝鮮が2003年1月に脱退を表明した。
条約では、1967年1月1日の時点で既に核兵器保有(被許可)国(核兵器国)であると定められたアメリカ、ロシア、イギリス、フランス(1992年批准)、中国(同年批准)の5カ国とそれ以外の国(非核兵器国)とに 分ける。前者の核兵器国については、核兵器の他国への譲渡を禁止している。また、核軍縮のための交渉を進めることが義務付けられる。後者の非核兵器国については、核兵器の製造、取得を禁止している。また国際原子力機関(IAEA)による保障措置を受入れることが義務付けられる。他に、原子力の平和利用については条約締結国の権利として認めること、5年毎に会議を開き条約の運営状況を検討すること、などを定めている。
しかし、現実には核兵器保有国の核軍縮は全く進んでいない。アメリカは世界最大(1万発以上とも言われる)の核弾頭を保有し続け、地下貫通型核兵器の実用化研究まで行い、更には“ならずもの国家”に対する限定核攻撃の可能性にまで言及した(2006年にはイランがその標的候補に挙げられた)。また、中国の軍部高官は、自国に有事の際は米国ないしその軍事施設に対し核攻撃を行なう用意があると公言している。こうしてこの条約は、事実上、連合国が核兵器を永遠に独占し、グローバルな軍事覇権を永続化させる体制に換骨奪胎された。
また、当然ながら、非加盟の核保有国に対しては何らの規制も出来ない。そのため、条約に一度も加盟していない各国の核開発については、2006年にアメリカがインド、パキスタンの核開発を容認するなど、2006年現時点ではおおむね許容されている。しかし、一度NPTに加盟した上での核開発には厳しい目が向けられており、イランのような加盟国でありながら核開発を進めている国々との対立に発展している。
条約は25年間の期限付きで導入されたが、発効から25年目にあたる1995年には、NPTの再検討・延長会議が開催され、条約の無条件、無期限延長が決定された。
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カテゴリ: 核軍縮 | 軍縮条約 | 国際連合 | アメリカ合衆国の国際関係