柏尾川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
柏尾川(かしおがわ)は神奈川県南部を流れる二級河川で境川の支流。戸部川とも呼ばれる。全長は戸塚区柏尾町から藤沢市川名で境川と合流するまでの約11km、流域面積は約84km²。
[編集] 地誌
源流は栄区・戸塚区内を流れる複数の小川。戸塚駅付近より大船駅付近までJR東海道本線沿いを走り、その後手広付近までは神奈川県道304号腰越大船線沿いをほぼ平行に走る。手広付近からは神奈川県道32号藤沢鎌倉線を藤沢駅方向に流れ、藤沢市川名で境川と合流する。
流域は工場や宅地が数多く立ち並んでいるため、 高度経済成長期ごろになると大量の工場廃水・生活廃水が川に流れるようになった。このため川はヘドロで淀み、夏場になると悪臭が漂うドブ川となっていたが、下水処理網の整備が進んだことなどにより近年では川鳥や川魚が生息できるような状態に改善されている。
戸塚駅周辺の河川敷には桜並木が植えられており、地域住民の憩いの場となっている。
[編集] 柏尾川に生息する生物
水質汚濁によって一時魚が見られなくなっていた柏尾川だが、工場廃水・生活廃水の減少にともない、まずコイやフナ(下流部にはハゼ・ボラ)といった、比較的水質汚染に耐性のある魚が多く繁殖した。また長年にわたるメダカやオイカワなどの放流によってこれらの魚も次第に定着、また近年ではさらなる水質の改善に伴ってアユ、スズキの遡上も見られるようになった。
水質の改善によって魚が生息するようになると、こんどはそれらをエサにする鳥達も集まるようになった。柏尾川では1990年代頃からサギ類やカモ類などの水鳥が頻繁に見られるようになり、少数ながらカワセミも見られる。また河口部ではカモメなども数多く見られる。
[編集] 水害について
柏尾川はかつて大雨が降るたびに氾濫していたが、近世以降に度々行われた治水工事によって次第に氾濫は減少していった。
しかし昭和30年ごろから始まる周辺地域の急速な宅地化によって、それまで水を蓄えていた水田・森林が減少すると、柏尾川の保水能力は低下し再び氾濫が頻発するようになった。昭和40年ごろより遊水地(栄区)の設置や川幅の拡張、川底の浚渫などさらなる治水環境の整備がたびたび行われたため、1982年以降大きな氾濫は絶える事になる。
久しく水害とは縁のなかった柏尾川だったが、2004年10月9日に関東地方を襲った台風22号では、低地となっている大船駅周辺、境川との合流地点である藤沢市川名付近など広い範囲で氾濫を起こし大きな被害を残した。このため地域住民からは治水対策の見直しを訴える声も聞かれた。