東京キリストの教会
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東京キリストの教会(とうきょう-―-の-きょうかい)
1世紀の互いに愛し合う教会を実現するという純粋な動機のもとに教会活動をしていたが、その行き過ぎた規律主義が教会内で問題を起こし、破壊的カルトと呼ばれている。
概要
- 信者同士がディサイプリングという主従関係をとっており、主となる人は「ディサイプラー」と呼ばれ、従となる信者は「弟子」と呼ばれる。「弟子」は「ディサイプラー」に対して100%の報告義務を課され、就労、余暇の過ごし方、金銭面での管理、献金、などは勿論のこと、心の中で感じたことの全てを伝えることを課される。このディサイプリングというシステムは海外のICOCより入ってきたものだが、日本独特の上下関係の伝統と国民性が加わって、度を越した上下関係が教会内に存在することとなった。いろいろな解釈が可能である聖書の内容、様々な解決策があり得る事例など、全てにおいてリーダーの判断が全てとなる絶対権力をリーダーが持つという形態が教会内で発生している。信者は年上のリーダーに対してもファーストネームで呼ぶなど、表面的な面においては欧米のカジュアルな伝統が入ってきているが、そのことが内部に存在するヒエラルキーの厳しさを隠すこととなっている面もある。
- 厳しい勧誘ノルマが信者に課されており、その活動を「伝道」もしくは「sharing」と呼ばれている。本屋などで人に声をかけ、教会に誘い、聖書を勉強してもらってクリスチャンにすることが目的であり、その一連の行動を「救う」とよんで信者はその活動に励んでいた。その勧誘活動はきっちりと組織されており、バイブルトークリーダーと呼ばれるリーダーが7、8名のメンバーを取り仕切り、日曜日の礼拝に向けての勧誘をリードする。
- クリスチャンとは、東京キリストの教会およびその国内外の系列教会の信徒のことであり、伝統的なプロテスタント、カトリックなどの教会のことは「宗派」の教会と侮蔑し、それらに属する信徒はクリスチャンではないとの認識が植えつけられる。
- リーダーは毎週状況をその上のリーダーに報告し、最終的にチャーチリーダーと呼ばれる牧師に全ての状況が伝わるようになっている。「伝道」で教会に連れてこれる人が少ないグループは「信仰が薄い」と非難され、叱咤を受ける。その行為を「チャレンジ」と呼んでいる。
- 有給スタッフは全員が必ずしもいい給料をもらっているわけではない。スタッフは概して高学歴、留学経験あり、有名企業出身というタイプが多く、それら値する賃金を蹴って教会勤務を選んだという選民思想的なイデオロギーがバックボーンとなっている場合が多い。当初はインターンという中小企業の大卒初任給並みの給料が支払われるだけだが、伝道者という地位に達すると給料が破格に上がる。その伝道者への資格は自分のグループの勧誘率が高かったら与えられる。よって各インターンは、伝道者目指して熾烈なる勧誘活動を指導していく。
- 礼拝への出席は絶対であり、出席できない場合は必ず連絡することが要求される。無断で礼拝を欠席した場合は「霊的に弱っている」と言われ、指導の対象となる。
- 以上のような過酷な信者活動に耐えれなくなった信者は脱退していく。脱退した信者は「地獄に落ちた」というレッテルを貼られて教会の他のメンバーは連絡を取ることを禁じられる。
- 男女関係も教会内のリーダーの了承が無ければ交際も許されない。男女関係の交際は教会内に限定されている。 教会外の人を「世の中の人」もしくは「闇の人」と称し、交際してはならない人として規定されている。教会内の信者同士の交際は教会リーダーの認定の下に許可が下りる。その成立した関係をステディー(steady) と呼んでいる。steadyはすでに結婚を前提とした関係として扱われる。 交際がうまくいかなく別れた場合は「break した」といわれる。そのsteady になること break することも全て教会内のリーダーの認定の下で行われる。
- ステディになってしばらくたち、2人の男女関係がリーダーの意向に沿うものであったら、そのステディカップルは婚約の許可が与えられる。婚約の手順はまず男性が女性のディサイプラーにその女性が婚約の意思があるかどうかの確認を取る。その意思の確認が取れ次第、男性はリーダーに申請して婚約の日付を設定する。男性から女性への婚約の申し込みは個人差があるが、念入りな演出の基に女性にとって特別なものとなるように行われる。婚約を申し込み、お互いの同意が取れたら信者が集まる場所へ行き、報告を行う。この一連の流れは土曜日に行われる場合が多く、翌日の礼拝では婚約の事実が報告される。 その後婚約した2人は既婚の夫婦から「結婚カウンセリング」という婚約者向けに特別にカリキュラムを組んだ指導を受ける。その指導内容は一般的な夫婦間の常識がほとんどだが、性的なことも重要な項目として含まれている。 教会内では性的なことを語ることがタブーとされているため、性的な指導は特に慎重に行われる。
- 独身の信者はアパート、マンションの一室を借りて同性の3~4人が一緒に生活している。その住居は「ハウスホールド」と呼ばれており、連日「ファミリータイム」と呼ばれるパーティーを開いている。そのパーティーに勧誘した人を呼んで聖書の話をし、聖書の勉強を勧める。
- 「聖書の勉強」では「信仰の土台」というカリキュラムに沿って進められる。通常、勉強する人一人に対して3~4人の信者が付き添って行われる。そのカリキュラムはいくつかの段階に分けられており、「弟子の決心」という箇所では「クリスチャンとしてやっていくために全てを捨てれるか?」という問いを問いかけられ、場合によっては現職を辞めること、現在交際中の異性との関係を終わらせることも要求される。その次の「罪」という箇所では聖書に沿って罪とはどういうものかを学び、その際、過去の罪を紙に列記し、勉強している皆へ告白することを要求される。その告白の度合いに一切の妥協は無く、過去の性関係は勿論のこと、もし過去に痴漢やその他の猥褻行為の経験があれば告白が要求される。近日中にマスターベーションなどの行為があったとすればそのことの告白も要求される。すべてのカリキュラムを終えた人は教会のリーダーと対面して最終的な確認が行われる。それを「カウントコスト」と呼んでいる。「カウントコスト」では、本当にクリスチャンとして生きていく決心があることを確認される。その際、この教会は地球上で唯一の教会であることを教えられ、神様の唯一の教えを広めていくことの決心を確認される。また、将来結婚する相手は同じ教会の異性であるべきことも伝えられ、それに合意することをもって、その人はクリスチャンとなれる。
- 勧誘して連れてきた人が聖書の勉強をしてクリスチャンになったら、その勧誘した会員は「実を結んだ」と言われ、この上ない賞賛を教会内で得る。このことは東京キリストの教会の会員にとっての最高の誉れであり、会員はその誉れを目指して日々勧誘活動に励んでいる。
- 東京キリストの教会のクリスチャンになるということは人生の全てにおいて教会活動を第一とするということを意味する。例えとして、1. 礼拝出席はいかなる他の用事よりも優先する。その日に資格試験の受験、知人の結婚式等があった場合は必ず礼拝の欠席理由をディサイプラーへ報告の上、その欠席理由が妥当との判断と許可をもらった上で行う必要がある。場合によっては認められない場合もある。 2. 日々の活動は勧誘活動が全てにおいて優先する。仕事の多忙により勧誘活動に参加困難となる場合は転職を要求される。 転勤の場合は仕事を辞めてまでも教会に尽くすことを要求される。そのときは「仕事と神様とどっちが大事だ!」という叱咤(チャレンジ)を受ける。
- 信者は「10分の1の献金」ということで毎月収入の10%を献金として教会に支払っている。それに加えて、毎年ボーナス時期に特別献金というものがあり、余剰な献金を支払う。その献金が有給スタッフに余剰に給与として支払われていたことが過去にあった。(例:主任牧師の給与が年収1000万円以上、牧師の海外出張はビジネスクラス使用など)
以上のような行き過ぎを改める動きが教会内で起こり、それに対して建て直しを現在模索中である。
- 過去の有給スタッフは教会内の改革の動きの中でほとんどが自主的な辞任に追い込まれており、現在は4、5名のスタッフが取り仕切っている。東京キリストの教会のスタッフは専門に神学的な事を勉強したわけではないので、彼らを真に牧師とよぶことは出来ないという声が教会内から出ている。
- 現在は「小グループ」という旧バイブルトークの類似グループをつくって活動をしている。ただ、以前ほど勧誘活動に主が置かれているような形跡はない。
姉妹教会
大阪、名古屋、北海道、福岡。
- 過去の有給のスタッフは自主的な辞任に追い込まれた。
- 地方教会の場合は東京で言う「伝道者」といわれる有給スタッフが統治しているわけではなかったので、東京で起こった教会内の混乱が時間差で起こった。地方教会の有給スタッフの給与は地方教会ごとの独立採算となっていたため、教会の会員減少に比例して彼らの給与も減少し、最終的に自主的辞任という形で教会を離れた。現在の地方教会は現地の有志と不定期に東京から送られるスタッフによって活動が保たれている。教会内にかつての勧誘ムードや厳しい規制、ディサイプリングなどはなくなったようだが、それはなくなったというより、誰も何も言わなくなったといういわば野放しの状況になっていると言ったほうが自然かもしれない。