数学者
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数学者(すうがくしゃ)とは、数学を学び、研究している人物のことである。学ぶことだけでなく研究という言葉もここでは強調しておきたい。この分野を学習したことのない人には、数学では全てのことが既に知られているという誤解が多いからである。事実、数学における新しい発見の発表は、数学や数学を応用する分野の何百もある科学雑誌の中で、かなりの割合を占めている。
一般に信じられているのとは異なり、数学者とは、数を足したり引いたり、おつりの計算が素早くできることに長けているわけではなく、それよりももっと別の知的職業の徒である。——実際、最高の数学者の内の幾人かは、そういったことに不得手であることで有名である。数学者に共通して見られる顕著な能力としては、例えば、本人がそれまでほとんど知識を持っていなかった問題に関する非常に複雑な話題についてであっても、特にそれが論理的なものであればあるほど、その論理にのっとり非常に早くその内容を理解し、さらに必要ならばそれらの問題点を指摘できる能力、物事の背後にある普遍的かつ本質的なものを見極めた上で、一般的に無関係だと思われていたものの深い関係などを見つけられる能力などが挙げられる。——数学者から転向して実社会で活動した多くの数学者がこのことを証明している。これらの能力は、日ごろの数学者の活動の中で、絶え間なく養われているものである。
数学者は一般に、数、図形、変化に関する問題を起源として生じるような、しかし今は数学自身の問題として抽象化されている様式(パターン)を見つけ、記述することに興味を持っている。数学者の発表された研究からは、しばしば公理と呼ばれる、いくつかの与えられた仮定から最初のアプローチが始まるように見える。そして仮定から従う事実を論理の厳密な規則に従って証明することへと進む。しかしこれは、最終的に印刷される出来上がったもののことであって、進行中の研究のことではない。
数学者は、(ほとんどの場合)根本的な疑問が人間の知性の置かれた状況を越えて仮定されている、という点で哲学者とは異なる。「2+2=4 は正しい命題である」というのは、人間の知性がそれを述べる、ということを必要とせずに存在する。全ての数学者が上に述べたことに完全に賛成するわけではない。数理哲学者は、この問題に対して異なるいくつもの見解を持っている。
数学者は、彼らの結論を強固にしたり否定したりするために実験をすることがないという点で、物理学者や工学者のような自然科学者とは異なる。全ての科学の理論は真理を近似することの試みであるのに、数学で述べられることは真理を把握する試みである。ある命題がいくつかの仮定の集まりから論理的に証明されたり、反例を挙げられたりしていない時、それは予想と呼ばれ、それとは反対に最終的な目的地——全く正しいものを定理という。自然界において新たな情報が発見されるといつでも変更を被るかも知れない物理理論とは異なり、数学の理論は"静的"——一度命題の正しさが証明されれば、それは永遠に正しいままである。