故意落球
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故意落球(こいらっきゅう)とは、野球で、内野手が飛球に触れた後に落球したときに適用されるルールである。似たようなルールにインフィールドフライがあるが、宣告条件が異なる。
[編集] 概要
故意落球のルールは、無死または一死で、一塁に走者がいるとき(走者一塁、一二塁、一三塁または満塁のとき)に起こる。内野にフェアの飛球(フライ)またはライナーが飛んだとき、内野手が通常の守備を行えばこの飛球またはライナーを容易に捕球できると審判員が判断したものについて、内野手が現実にグローブや手でボールに触れて地面に落とした場合に、故意落球が適用となる。審判員の判断の基準は、審判員から見て「容易に捕れる」と判断した飛球またはライナーを、内野手が実際に触れて故意に落とす行為があったとき、その行為に「併殺を狙って故意に落球した」という意図が感じられた場合である。
故意落球が発生したら審判員は、直ちに両手を上方に広げて(ファウルボールと同じジェスチャー)、「故意落球」と宣告する。この宣告により打者はアウトになり、ボールデッドとなる。走者は投球時に占有していた塁に戻され、進塁できない。なお、インフィールドフライと宣告された飛球が「故意落球」となった場合は、インフィールドフライの宣告が優先される。したがってこのような場合はボールインプレイであり、「故意落球」も宣告されない。
この飛球またはライナーには、バントで打った場合も該当する。ここで、内野手とは内野に守備位置を取っている野手をいい、投手、捕手はもちろん、内野に守備位置を取った外野手もこれに含まれる。逆に、外野に守備位置を取った内野手は含まれない。
この規則は、野手が故意に飛球を落下させたのち、二塁、一塁と送球することでフォースプレイでの併殺を狙おうとする行為を締め出すために存在する。だが、外野手(外野に守備位置をとっている野手)には適用されないので例外的なプレイも現出する。
- 無死または一死で走者一二塁のとき、打者が浅いセンターフライを打ち、走者はハーフウェイで見守るが、二塁走者から落下点は目前の距離なのでさほど離塁できない。
- 中堅手は故意に落球し、すぐに球を拾い上げて二塁へ送球し一塁走者をフォースアウト。
- 二塁走者は落球の時点で三塁へフォースの状態となるので慌てて三塁へ走るが、二塁での離塁が少ないので二・三塁間でランダウン(挟殺)プレイとなり、結果併殺される。
この種のプレイは周囲に対してあまりフェアに映らないので、高校野球では見ることは少ないが、大学野球ではそう珍しくなく行われている。
なお、しばしば、野手が何らかの理由で意図的に飛球を捕球せず、地面に落下させてから捕ることを「故意落球」と呼んでこのルールと混同することがあるが、現実に触れていない「意図的な落球」と「故意落球」のルールは異なるものであり、注意が必要である。