政事要略
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政事要略(せいじようりゃく)は、平安時代の政務運営に関する事例を掲げた書。編者は明法博士令宗(惟宗)允亮。惟宗氏は代々明法家の名門で、彼の曽祖父は、『律集解』『令集解』を編んだ惟宗直本、祖父は『本朝月令』を編纂した惟宗公方。本書は、惟宗氏の明法家としての活動の集大成といえる書で、平安時代の政治を理解するうえでの重要な史料である。なお、「令宗」の姓は、惟宗氏全員の改姓ではなく、長保元年(999年)頃、允亮と彼の弟と思われる允正のみに与えられた。「令宗」は「律令の宗師」という意味である。
本書の成立年代は詳らかではないが、一条天皇朝に行われ、長保4年(1002年)11月に編纂が完了したが、允亮の歿年と考えられる寛弘5年(1008年)頃まで追記がなされている。また、本書の編纂は、小野宮右大臣藤原実資の依嘱によってなされたとされる。その根拠は、『小記目録』(『小右記』の目録)に「長保四年十一月五日、世事要略部類畢んぬ事」と記されていることや、本書が代々小野宮家に相伝されていたこと等である。
巻数について、『中右記』『本朝書籍目録』等で、全130巻あったことが分かるが、現存するのはそのうちの25巻である。全130巻の部立てはおそらく、
- 年中行事(全30巻)
- 公務要事(5巻程度)
- 交替雑事(20巻)
- 糺弾雑事(30巻程度)
- 至要雑事(5~10巻)
- 国郡雑事(巻数不明)
- 臨時雑事(巻数不明)
であったと推定されている。
このように、本書は政務に関するあらゆる事例を掲げたもので、それぞれに関係する律令格式の条文や国史・日記の記事、その他和漢の典籍を正確に引用し、彼自身や父祖先輩の勘文・勘答も収録している。よって、本書によって知られる官符や典籍もあり、それの逸文も多く含まれているので、その史料的価値は高い。また、国史の記事の引用について、祖父公方が編纂した『本朝月令』が、直接『日本書紀』以下の六国史から引用しているのに対し、本書は、六国史からの引用と、菅原道真が編纂した『類聚国史』からの引用も見られる。
本書は、小野宮家相伝の書であったため、広く流布しなかった。近世に入り、中原章純が、天明6年(1786年)に本書の残闕本を各所より収集して、ほぼ現在の形まで編輯した。現在、本書のテクストとして広く新訂増補国史大系本が用いられるが、これは、中原章純本の系統を踏む福田文庫本を底本として用いている。