抵当権の消滅
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抵当権の消滅(ていとうけんのしょうめつ)とは、民法学の概念で、文字通り抵当権が消滅する現象一般を指し示す用語である。どのような場合に消滅するか、その消滅原因が問題になる。なお、民法第2編物権第10章第3節の名称は「抵当権の消滅」であるが、抵当権の消滅事由すべてがその節の条文に網羅されているわけではない。
目次 |
[編集] 附(付)従性による消滅
被担保債権の弁済があった場合は、抵当権は消滅する。これを抵当権の附(付)従性という。
[編集] 時効による消滅
被担保債権が時効により消滅した場合にも、抵当権は消滅する。また抵当不動産につき取得時効が成立した場合にも抵当権は消滅する。抵当権には随伴性が認められているものの、時効取得は承継取得ではなく原始取得であるからである。 また、抵当権も「債権又は所有権以外の財産権」として被担保債権とは独自に20年の消滅時効にかかるが(民法第167条第2項)、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しないとされる(民法第396条)。
[編集] 代価弁済による消滅
代価弁済(だいかべんさい)とは、抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅するという制度である(民法第378条)。後述の抵当権消滅請求との違いは、抵当権者のイニシアチブによって開始されることである。
[編集] 抵当権消滅請求による消滅
抵当権消滅請求(ていとうけんしょうめつせいきゅう)とは、抵当不動産について所有権を取得した第三者が、民法383条の規定により、同条3号の代価又は金額を抵当権者に提供して抵当権の消滅を請求できる制度のことをいう(同法379条)。上述の代価弁済制度との違いは、抵当不動産の第三取得者のイニシアチブによって手続が開始されることである。
抵当権消滅請求は、平成15年(2003年)法律第134号による民法の改正により、従来の滌除(てきじょ)に代わるものとして創設された制度である。第三取得者を保護するための制度であるから、主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができず(民法第380条)、また、抵当権者の地位の安定のため、抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない(民法第381条)とされる。
抵当権消滅請求の手続きとしては、登記をした各債権者に対し、次の書面を送付する必要がある(民法第383条)。
- 1.取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在、及び代価その他取得者の負担を記載した書面
- 2.抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
- 3.債権者が2ヶ月以内に抵当権を実行して競売の申立をしないときは、抵当不動産の第三取得者が1に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面
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抵当権請求の時期的限界については、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に抵当権消滅の請求をしなければならないとされている(民法第382条)。
登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する(民法第386条)。債権者のみなし承諾規定の存在につき民法第384条参照。