手配旅行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
手配旅行(てはいりょこう)とは、旅行業法に定められた旅行契約形態のひとつ。
旅行会社が、旅行者の委託により、旅行者が運送・宿泊機関等のサービスの提供を受けることができるように、旅行者のために代理、媒介又は取次をする契約のこと。一般にJR券、航空券、宿泊券等の予約・手配・販売がこれにあたる。この場合、手配する機関・施設の数は問題ではなく、単独の手配でも、複数を組み合わせた手配でも以下に述べる条件を満たしていれば手配旅行とみなされる。
目次 |
[編集] 特徴
- 委任契約
旅行業法では、手配旅行とは旅行会社が旅行者のため、または運送機関や宿泊施設等のために、それらのサービスの提供について代理して契約を締結し、媒介をし、または取次ぎをすることをいうと定義されており、民法上の委任契約にあたるとされている。
- 旅行代金内訳の明示
企画旅行は旅行会社の独自の仕入による運送・宿泊・観光などを組み合わせた全体としての旅行であるのに対し、手配旅行は旅行者の依頼による運送・宿泊・観光などの細目ごとの手配である。したがって、旅行代金は全体での包括表示ではなくそれぞれの細目ごとの費用内訳が明示されなくてはならない。
- 原価と手数料の分離表示
また、費用内訳において運送・宿泊等のサービス提供機関への支払原価(JR券代や航空券代など)に旅行会社の収益を加えてはならず、手数料を収受する場合は、原価とは別途に、国土交通省の認可を受けた旅行業務取扱料金を明示しなくてはならない。取消の場合はサービス提供機関の定めた取消料と旅行会社の変更手続料金が必要になる。
[編集] 企画旅行との違い
- 誰が計画を立てるのか
企画旅行では旅行の計画を立てるのが旅行会社であるのに対し、手配旅行では旅行の計画を立てるのは旅行者自身である。したがって、手配旅行においては旅行会社の企画的要素は存在しない。これが最大の相違点である。
- 義務と責任
旅行会社は手配旅行契約による手配を行うにあたっては善良なる管理者の注意義務をもって業務を遂行しなくてはならない。すなわち手配旅行においては民法でいう善管注意義務は存在するが、企画旅行にあるような旅程管理、旅程保証、特別補償の責任はない。手配旅行では予約が取れなかった場合でも、旅行会社に過失がなく考えられる最大限の努力をしたのであれば、旅行会社に予約確保の義務はない。また、予約した便が当日急に運休となった場合でも(善管注意義務により運休になったことを旅行者に通知する努力は必要であるが)旅行者からの依頼がない限り旅行会社が自ら代替便を手配する責任はない。
[編集] フリープラン、宿泊プランは手配旅行か?
- フリープラン
フリープランと呼ばれる旅行商品は手配旅行ではなく募集型企画旅行である。フリープランは通常、旅行者が交通や宿泊、時には観光も内容を選択して組み合わせるものが多く、細目ごとの代金内訳も明示されているので一見手配旅行のように見える。しかし
- パンフレットの中で選んでいるだけである =計画したのは旅行会社である
- 団体料金や旅行会社の契約料金が適用されている=旅行会社の独自の仕入がなされている
- 細目ごとの旅行代金は原価ではない =原価と手数料が分離表示されていない
以上の点で明らかに手配旅行ではなく、旅行者に選択させる要素を持たせた募集型企画旅行といえる。
- 宿泊プラン
フリープランに似たものに宿泊プランと呼ばれるものがある。「露天風呂のある宿」「東京ビジネスホテルプラン」といった類のパンフレットで、交通を組み合わせることができるものもあるが宿泊のみのものが多い。これは多くの旅行会社が募集型企画旅行として取り扱っているが、手配旅行として取り扱っている会社もある。結論から言うとこれはどちらでも良いとされている。手配旅行としての条件を遵守すれば、すなわちパンフレット(この場合は募集パンフレットではなくなるが)に記載された金額でクーポンを発行し、それに対する送客手数料を宿泊施設から収受するというやり方であれば手配旅行でかまわないし、募集型企画旅行として販売してもいいのである。無論、募集型企画旅行にすれば旅程管理、旅程保証、特別補償という責任が旅行会社にかかってくるが、逆に受託販売が可能になる、募集型企画旅行としての取消料が収受できるなどのメリットもある。宿泊プランは毎日何室かの在庫を仕入れているケースが多いので、募集型企画旅行として販売するほうが販売上のメリットが大きいと判断している旅行会社が多いようである。