心房中隔欠損
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心房中隔欠損(しんぼうちゅうかくけっそん、ASD)は心臓の右心房と左心房を隔てる心房中隔に穴が開いた病気。
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[編集] 概念
右心房と左心房を併せて心房と言う。左右の心房を隔てる壁を心房中隔と言う。心房中隔に穴が空いた病気。穴の事を孔と言い、穴が空いた状態の事を欠損といい、空いた穴を欠損孔と言う。
左心系と右心系の血液が網細血管を経ずに移動することを短絡(シャント、shunt)と言う。左心系から右心系への短絡を左右短絡、右心系から左心系への短絡を右左短絡と言う。本症は短絡性心疾患の一つ。
[編集] 病態
心房を隔てる心房中隔が欠損しているので、短絡が起こる。心臓は体循環系である左室系のほうが肺循環系である右室系よりも高圧なので、本症では左右短絡が起こる。左右短絡では、右心系は本来よりも高い圧に曝されて、その血液を送り出すために右心負荷が掛かり、肺血流が増加する。
[編集] 分類
一次孔欠損と二次孔欠損があり、高位欠損型、中央部欠損型(卵円孔開存)、下部欠損型、に分けられる。
[編集] 原因
[編集] 統計
- ICD-10: Q21.1
- 中央部欠損型(卵円孔開存)が70%、下部欠損型が20%、高位欠損型が10%、となっている。
- 短絡量が50%以上の場合が多い。
[編集] 疫学
- 女性等華奢な体格の人に良く診られる。
[編集] 症状
労作性呼吸困難、動悸、息切れ、易疲労など。また低血圧も併発しやすい。
[編集] 検査
[編集] 身体基本検査
[編集] 聴診
- 肺動脈領域の駆出性収縮期雑音
- 右心負荷による肺高血圧症による。
- II音の固定性分離
- 正常心音のII音は大動脈弁の閉鎖音(大動脈成分、以下IIa)と肺動脈弁の閉鎖音(肺動脈成分、以下IIp)とから構成されるが、本症では右心負荷によってIIpが常にIIaよりも遅れて別々に聞こえるので、これをII音の分離という。遅れ方が常に一定なので固定性分離と言う。
- III音
- 収縮期に左心房から右心房へ短絡した血液の分だけ肺循環系を通って左心房へ多く流れ、その分だけ拡張早期に左心房から勢いよく血液が左心室壁を振動させる事で生じる。
- 胸骨左縁下部の拡張中期雑音
- 左右短絡による相対的三尖弁狭窄による。
[編集] 心臓超音波検査
- 心室中隔奇異性運動
- 右心負荷による
[編集] 静脈カテーテル検査
- 上大静脈血から右心房血への血中酸素飽和度の上昇
- 左右短絡による
[編集] 診断
カラードップラー心臓超音波検査で左右短絡を認めたら本症と診断する。
[編集] 治療
欠損が極めて小さく10歳以下の場合は自然閉鎖も期待できる場合もある。
短絡量が50%以下の場合は手術の必要が無いものもある。
短絡量が50%以上の場合は幼時期に待機手術を行う。手術療法は、過去においては人工心肺を使用し実際に胸を切り開き直視下で欠損孔を縫って閉じるパッチと呼ばれる手術方法しかなかったが、米国のAGA Medical Corporationが製造するAmplatzer(アンプラッツァー) Septal Occluderと呼ばれる欠損孔を閉鎖する専用の医療機器を国内の企業が2005年に厚生労働省より輸入の承認を取得しASD閉鎖セットの販売名で医療現場へ提供を行っている。この医療機器を使用した治療方法は血管内カテーテル手術と呼ばれ、足の付け根の部分の血管(大腿静脈)から欠損孔を閉鎖する為の医療機器を折り畳んだ状態で専用のカテーテルにセットし、逆行性に下大静脈、右心房、欠損孔を通して左心房と向かい、欠損孔に医療機器を留置することにより欠損孔を閉鎖する。この医療機器を使用する上でのメリットは小児患者に使用する場合は特に、患者の肉体に与える負担が極めて小さい(低侵襲性)、入院期間が極めて短い、医療費の負担が開胸手術に比べて少ない(健康保険適用)、開胸しないため細菌等による術後の感染のリスクが極めて少ない等が挙げられる。また他のメリットとしては開胸しないため従前のパッチ手術の様な傷跡が残らないと言う事も挙げられる。デメリットは全てのASD疾患の患者に使用できると言う訳ではなく、事前に医師による医療機器が使用できるかどうかの専門の検査が必要である。また、2006年10月現在、東北、北海道にはこの治療を行える施設が無いのも問題点の一つであろう。
2006年10月現在、Amplatzer Septal Occluderによるカテーテル治療を行っている施設
- 国立循環器病センター小児科(大阪府)
- 埼玉医科大学小児心臓科
- 岡山大学小児科
- 千葉県立こども病院循環器科
- 榊原記念病院小児循環器科(東京都)
- 神奈川県立こども医療センター循環器科
- 静岡県立こども病院循環器科
- 長野県立こども病院循環器科
- 社会保険中京病院小児循環器科(愛知県)
- 雪の聖母会聖マリア病院小児循環器科(福岡県)
[編集] 予後
- 40歳以上でうっ血性心不全を生じて、右心不全を来たしやすい。
[編集] 診療科
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