座敷童子
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座敷童子(ざしきわらし)は、主に岩手県に伝えられる精霊的な存在。岩手県の金田一温泉「緑風荘」の座敷童子が有名。
一般的には、赤面垂髪の5、6歳くらいの小童(童子のことも童女のこともある)で、豪家や旧家の奥座敷におり、その存在が家の趨勢に関ると言われるため、これを手厚く取り扱い、毎日膳を供える家もある。座敷童子は悪戯好きで、夜になると客人のふとんの上にまたがったり枕を返したりするが、見たものは幸運が訪れるといわれる。 小さな足跡を灰やさらし粉の上に残し、夜中に糸車をまわす音を立てるともいわれ、奥座敷で御神楽のような音をたてて遊ぶことがある。その姿は家の者以外には見えず、また、子供には見えても、 大人には見えないとする説もある。狐持や犬神持に類似した構造を持つが、座敷童子の住んでいることを迷惑がらず、むしろ神として保護し、周囲の人間も座敷童子のいる家に対して、一種畏敬の念を持って接する点が、狐持や犬神持とは異なる。座敷童、ザシキワラシ、座敷童衆とも表記する。同様のものに「座敷ぼっこ」「蔵ぼっこ」「座敷小僧」などがある。
柳田國男の『遠野物語』や『石神問答』などにより知られる。『遠野物語』には17話・18話に座敷童子の話がある。「この神の宿りたもう家は富貴自在ということなり」とのこと。『遠野物語』での表記は「ザシキワラシ」または「座敷ワラシ」。「ザシキワラシは座敷童衆なり」の注がある。『十方庵遊歴雑記』には、岩手県江刺市(現・奥州市江刺区)稲瀬の座敷童子についての記述が見られ、家の土間にいる座敷童子を、「コメツキワラシ」、「ノタバリコ」、「ウスツキコ」等と言い、 奥座敷にいる色の白い最も綺麗な座敷童子を「チョウビラコ」と呼んでいる。 また、手を出して人を招き、火事、洪水、津波などの災禍を知らせる為、「細手」、「長手」と呼んでいる例もある。 その他これに類するものに遠州門谷の「座敷坊主」、徳島の「アカシャグマ」、 その他「クラワラシ」、「クラボッコ」と呼ばれる、土蔵の中にいる座敷童子も存在する。石川の「マクラガエシ」は、ある家の座敷に寝ると、特に二本差しや髭を立て洋服を着て高慢な顔をしたものが泊まると隣室に引き出すという。四国金毘羅宮の、奥の院周辺の家には、夜になると仏壇の中から「アカシャグマ」が出てきたという。アカシャグマとは、赤く染めたクマの毛のことで、これを被った小さな子供のようなものが、家の持ち主の婆さんをくすぐることが毎晩だったという。
座敷童子の由来は明白でないが、東北地方には新生児を間引いて屋内に埋める風習があり、その間引かれた子供の霊を祭る信仰を核として、呪術師の使役する役霊、つまり仏教でいう護法童子、 民間でいう心得童子の信仰が加味され、今日に伝わったものと考えられる。この場合、東北地方の蚕神、竈神として祭られる「オクマイサマ」、「オシラサマ」と同様、ある種鎮魂信仰としての側面が強い。
文学上の座敷童子について、よくあるモチーフは以下の通り。
- ある栄えている家があり、そこには座敷童子がいると言われていた。ある夜、男が道で見慣れぬ童子に会う。どこから来たかと聞くと、その栄えている家から来たと答える。どこへ行くのかと聞くと、別の家に行くと答える。はたして、それまで栄えていた家は没落し、童子の行った家は栄えた(この話は『遠野物語』18話にある)。
- 子供たちと座敷童子が遊ぶ。その姿は大人には見えない。
- 子供たちが集まっている。数を数えると一人多いのだが、誰が多いのかわからない。しばらくしてもう一度数を数えると、こんどはちゃんと合っている。さっき多かった一人は座敷童子であろうということになった。
[編集] 座敷童子が登場する作品
漫画
小説
- くらのかみ
ゲーム
- ポケットモンスター(ユキワラシというポケモンは座敷童子からきている)
[編集] 芸術における座敷童
- ユタと不思議な仲間たち