帯をギュッとね!
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキポータル |
日本の漫画作品 |
日本の漫画家 |
漫画原作者 |
漫画雑誌 |
カテゴリ |
漫画作品 |
漫画 - 漫画家 |
プロジェクト |
漫画作品 - 漫画家 |
『帯をギュッとね!』(おびをギュッとね)は河合克敏による柔道漫画。1988年から1996年まで「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された。単行本は全30巻、ワイド版は全15巻、文庫版は全16巻。通称は「帯ギュ」。
昇段試験で出会った5人の少年達が、柔道部のない高校で再会して柔道部を作り、全国大会を目指すという物語。
目次 |
[編集] 概要
「ニューウェーブ柔道漫画」と銘打って連載された本作は、多数のギャグを交えた軽妙なストーリー運びで、従来のスポ根一辺倒の柔道漫画とは一線を画した。そしてそれまでの汗臭い柔道のイメージを、スポーツ競技としての爽やかなイメージに変えて人気を博した。なおこれらのスタイルが確立できた要因として、主人公達が新たに柔道部を立ち上げたため部に上級生がおらず、運動部につきものの厳しい上下関係を排除できたことが挙げられる。ストーリーが進んで登場人物が強くなるにつれ、全体的に真剣味が増していったが、上記の特色は変わることが無かった。
柔道自体に関しては、作品全体を通して技に重きを置き、柔能く剛を制す、そして明るく楽しい柔道を描こうとしていた。これは独自の練習法で頂点に登りつめた神取忍の影響だと作者は語っている。作者自身も柔道の経験を持っており、柔道の技術などには細かい説明を加えてあるため、柔道の素人にもわかりやすいつくりになっている。
また、単行本の巻末で開催された「絵筆をもってね!」という読者によるイラストコンテストが、1回につき2000通を超える応募が来るまでに人気を博した。ゲスト審査員として当時「サンデー」で連載を持っていた漫画家が多く登場し、デビュー前の安西信行やモリタイシがグランプリを獲得している。登場人物の兄弟などに名前がない場合、しばしば投稿葉書から名前を採用された。カバー折り返しに掲載された4コママンガにも人気があった。
作品の主な舞台は作者の出身地である浜松市(旧・引佐郡引佐町)を中心に静岡県西部となっている。作中で試合の様子が描かれたのは、主人公達が高校2年生の時に行われた選手権大会(学年が変わる前の春に開催)までで、3年生の夏に行われた金鷲旗とインターハイは結果だけが示された。また高校卒業後のエピローグとして、高校柔道から大学柔道に舞台を移し、全日本のタイトルを巡ってライバル関係を続けるキャラクター達の姿が描かれた。
[編集] 留意点
作中でインターハイの女子個人戦が行われているが、当時女子は1990年に始まった団体戦のみで、個人戦は開催されていなかった。この事について作者は勘違いと認めた上で大会を続行した。そして作中で女子個人戦が描かれてから10年以上経った2004年、インターハイで女子個人戦が行われるようになった。
巧達の入学した年は1989年に設定されているが、1991年のインターハイが地元静岡開催であるために、作中の時間は捻じ曲げられ、1990年を飛ばして1989年の翌年が1991年になっている。しかしその年の福岡国際は1992年相当の開催回数で行われ、年末や年明けのカレンダーでは飛び越えた時空を元に戻し、1990年~1991年のものになっている。そして選手権大会中は1992年のバルセロナ五輪が開催済で、開催回数では1994年相当にまた飛んでいる。だがその年夏のオリンピックが開催されている。
また作品全体を通して階級が軽量級から重量級までの5階級で表されているが、この階級分けは1997年までのもので現在とは違っている。1998年に60kg以下級から100kg超級までの7階級に変更されたが、階級が細分化されかつての階級に1対1で照らし合わせることは出来ないため、以下に作中当時の階級を示す。軽量級=60kg以下級、軽中量級=71kg以下級、中量級=86kg以下級、軽重量級=95kg以下級、重量級=95kg超級。
[編集] あらすじ
中学3年生の7月に行われた昇段試験において、北部中学の粉川巧、杉清修、南部中学の斉藤浩司、東部中学の宮崎茂、三溝幸宏、そして高町中学の近藤保奈美、海老塚桜子は出会う。それから約半年後、揃って県立浜名湖高校(浜高)に入学した7人は同じクラスとなり再会を果たす。早速柔道部に入ろうとするが浜高には柔道部がなく、7人の担任でもある倉田龍子を顧問に据え、新たに柔道部を立ち上げる。
そして三方ヶ原工業高校(三工)の藤田恵とは因縁を深め、佐鳴高校の石塚孝裕や袴田今日子・豊姉弟、暁泉学園の堀内平八郎らとは親交を深め、倉田典善の指導を受けて浜高柔道部は徐々に強くなってゆく。
2年目には仲安昌邦、石野雪久、来留間麻理の3人が新入部員として加入し、赤磐高校の別所愛子と親交を深め、西久保の指導を受けて浜高柔道部はますます強くなってゆく。
- 1年目のインターハイ
- 団体戦地区予選で、浜高は初段の1年生5人だけで参加してベスト4に進出するが、準決勝で佐鳴と代表戦の末敗れる。佐鳴は三工に決勝で敗れ、三工が地区・県と優勝し全国大会でもベスト16まで勝ち進む。
- 1年目の選手権大会
- 団体戦地区予選で、浜高は三工との決勝戦に辛くも勝利し地区優勝を果たし、県予選も制する。しかし全国大会では沖縄尚北に敗れ、1回戦で終わる。
- 2年目のインターハイ
- 団体戦は地区予選が廃止され県予選から始まり、浜高と三工はそこでベスト4による決勝リーグに進出し、三工が1位、浜高が2位となるが、地元開催の特例で両校とも全国大会に進む。全国大会で、浜高はベスト8まで勝ち進むが千駄谷に敗れ、三工はベスト4まで勝ち進む。
- 男子個人戦は、地区予選で浜高の5人全員と三工の藤田が県予選に進出し、巧・宮崎・三溝・藤田は全国大会にも進出する。全国大会では、巧が準優勝、宮崎が3位、三溝が予選敗退、そして藤田は優勝を果たす。
- 女子個人戦は、地区予選で麻理・桜子・袴田が県予選に進出し、麻理と袴田は全国大会にも進出する。全国大会で3度目の決勝を争った結果、袴田が優勝、麻理が準優勝となる。
- 2年目の選手権大会
- 団体戦は、県予選で浜高と三工が決勝を争い、前年同様浜高が勝利する。全国大会で浜高は次々と優勝候補を破り決勝に進み、そこで千駄谷を下しついに全国制覇を成し遂げる。
- 男子個人戦(無差別級のみ)は、団体戦に照準を絞った巧や三溝は出場せず、藤田が県予選を制する。藤田は全国大会でも決勝まで勝ち進むが、千駄谷の橘に敗れる。
- 女子個人戦は、直前の福岡国際で優勝した麻理が、48kg以下級を県予選・全国大会ともに敵なしで制する。麻理を恐れ転向組が大挙して押し寄せた52kg以下級では、薩川が桜子や別所を破り県予選を制し、全国大会も制する。
- 3年目の金鷲旗
- 浜高は前年旅費や斉藤の怪我で出場を見送ったが、この年初参加で準優勝。優勝は千駄谷。
- 3年目のインターハイ
- 団体戦は、県予選でついに浜高が三工を破り優勝し、全国大会でも決勝で千駄谷を下し再び全国制覇を成し遂げる。
- 男子個人戦は全国大会で、巧が中量級優勝、斉藤が軽中量級準優勝、宮崎が軽量級優勝、三溝が重量級3位となる。杉は藤田か巧に阻まれ県予選3位。
[編集] 主な登場人物
[編集] 浜名湖高校
静岡県の西部地区にある、男女共学の県立高校で、通称浜高。別々の中学校で柔道をしていた主人公達が、この高校で集結し物語が始まる。主人公達の入学当初は柔道部がなく、5人の1年生部員だけで柔道部を立ち上げる。何故か上級生が入部することはなかったが、創部2年で高校柔道選手権の団体戦優勝という全国制覇を成し遂げる。
- 粉川巧(こがわ たくみ)
- 本作の主人公で浜高のポイントゲッター。入学当初は168cm65kgで軽中量級。後に中量級となり、エピローグでは78kg以下級。得意技は左右の背負い投げと一本背負い。
- 熱血な性格ではなくのほほんとしているが、厳しい練習が全く苦にならない程柔道が好きで、才能と努力が相まってめきめき腕を上げていく。強敵相手では類稀な実力を発揮する反面、油断によるポカも多い。県大会、全国大会と進むにつれて浜高の精神的支柱へと成長する。得意技の背負い投げに磨きをかけてからは「超高校級」と称された。保奈美とは幼馴染にして周囲公認の彼氏彼女の間柄。ただし、小学生並の進展度と言われたことがある。
- 杉清修(すぎ せいしゅう)
- 柔道部主将。入学当初は179cm72kgで中量級。得意技は内股や大内刈りおよび返し技全般で、後に奇襲技のすくい投げを会得する。
- 巧とは中学時代からの親友で、同じ浜名湖高校に進学した。団体戦では安定した強さを発揮するも、個人戦では同じ階級にいた三工の藤田にことごとく阻まれ、最後まで県大会止まりに甘んじた(最後の大会は中量級に階級を上げた巧の可能性もあり)。スキンヘッドが特徴だが、意外に美形でもある。後に実家が寺ということが明かされた。宮崎と並ぶ浜高のギャグ要員だが、学業は優秀で一浪して東大へ進学するほど。優秀な学力の持ち主ではあるが、浜校メンバーのまとめ役の座は技巧派の斉藤に奪われており、自ら頭脳戦には向いてないと発言したり、「なあ、うちの主将が誰か知ってるか?」「知らない。斉藤か?」などとギャグにされたりしている。他にも、桜子が自身の彼氏候補を考えてみたとき、杉を称し、「女子に人気あるんだよねぇ。よく見るとルックスいいし・・・」とされたが、「でも・・・バカだから」で、悲しくも除外されていた。単行本巻末企画「絵筆をもってね!」では格好のネタ要員とされていた(例:FBIに連れられた宇宙人・杉など)。薫というイタズラ好きで小生意気な2学年下の妹がいる。
- 斉藤浩司(さいとう こうじ)
- 柔道部副主将。入学当初は173cm68kgで軽中量級。得意技は多数ある。
- 浜高メンバーきっての良識派だが、ギャグセンスは無い。開いているのかわからない細目と、逆立てたツンツンヘアが特徴(合宿所の風呂場で髪を降ろしていたら巧から「あんた誰?」と言われたことあり)。豊富な柔道知識で試合中にアドバイスをしたり解説役をこなしたりする。柔道に対してはかなりストイックで、作中で杉らと方針を巡って対立した程。個人戦では同階級の巧とも激戦を繰り広げる。浜高きっての技巧派で、得意技は一本背負いや背負い投げ、体落とし、足技などの立ち技から谷落としや腕返し、帯取り返しといった奇襲技、さらには寝技、関節技、飛び関節まで枚挙に暇がない。インターハイでは怪我に泣いて無名に終わったが、対三方ヶ原工業高校の3人抜きや優勝候補である東名大藤沢の津末・原を下すなど、その実力は選手権で如何なく発揮される。千駄谷の橘との戦いは本作品中屈指の名勝負。家は母が一人でラーメン屋を経営しており、弟3人妹1人がいる。家族全員、目が同じである。別所愛子とは2年目のインターハイ後ペンフレンドないしそれ以上の関係になる。それが杉・宮崎・三溝にばれて、彼らからはしばらく嫌がらせを受けた。
- 宮崎茂(みやざき しげる)
- 浜高の切り込み隊長。入学当初は160cm58kgで軽量級。得意技は背負い投げや巴投げで、後に逆一本背負いなどのアマレス技を会得する。
- 背は小さいが気の強い生意気タイプ。照れ屋。杉と並ぶギャグ要員で、三溝を加えて「三バカ」になることもある。団体戦では小柄な体格ゆえ不利になることも多かったが、技とスピード、気迫で立ち向かった。個人戦の戦績は巧と並んで全国トップクラス。スピード感あふれる柔道を得意とする。家は酒屋を経営。三溝は幼馴染。
- 三溝幸宏(みつみぞ ゆきひろ)
- 巧と並ぶ浜高のポイントゲッター。愛称はミッタン。入学当初は195cm110kgで重量級。得意技は大外刈りや内股、払い腰で、後に立ち姿勢での関節技を会得する。変則技のヴァン・デ・ヴァル投げも得意だが、強過ぎるために1年目の秋以降は作者によって封印された。
- 体は大きいものの普段は気が小さい。だが、脱臼を押して試合に臨むなど、ここ一番では闘志にあふれる姿勢を見せる。重量級だが身長もあるバランスのとれた体型。その怪力は無差別級優勝者の橘をも上回るほどで、一年時の選手権団体戦では藤田に瞬殺された悔しさのあまり床を殴りつけ、スプリングの敷かれた床全体を振動させるという描写があった。3人の美人で気の強い姉がいる。宮崎は幼馴染。
- 近藤保奈美(こんどう ほなみ)
- 柔道部マネージャー。真面目な性格で斉藤と並ぶ良識派だが、運動神経はゼロで天然ボケの気がある。浜高柔道部を陰から支え続ける他、試合中「負けないで」コールをして巧の真のパワーを引き出す。桜子は中学時代からの親友、巧は幼馴染にして彼氏。巧は彼女に頭が上がらない。エピローグでは巧専属の通訳を目指し海外留学をしている。
- 海老塚桜子(えびづか さくらこ)
- 柔道部マネージャーおよび途中から女子柔道部員。入学当初は160cm、柔道を始めた時は48kg以下級で、後に52kg以下級、56kg以下級と階級を上げていく。持ち技は小内刈りと背負い投げの連携のみで、必殺技は相手がどんな体勢であろうと引っこ抜くようにして投げるハイスピードのバックドロップ(裏投げ)。
- 保奈美とは中学からの付き合いで同じ浜名湖高校に進学する。柔道部のムードメーカーで体育会系のノリの良い性格。ただしギャグには一種のこだわりがあり、つまらないギャグには杉や宮崎、果ては三工の来留間大志にまで厳しくつっこむ。体育の成績が10段階評価で10という驚異的な運動神経の持ち主。それが「災い」して、来留間大志の目に留まり”来留間麻理の練習相手をこなすためだけの”柔道部員にさせられた。しかし、嫌々参加した大会で白帯ながら悪運も手伝い目覚しい快進撃をみせ、結局大学まで柔道を続ける羽目に陥る。試合中は気の抜けるような変な掛け声(「ほや!」「あ!わ!び!」等など」)を発する。袴田豊のみならず多くの男性キャラに密かに想われていたが、それらに気付くことはなかった。読者人気が高く、人気投票では第1回・第2回において主人公の巧を抑えて1位を獲得し、第3回でも2位に入った。単行本最終巻には本誌掲載時には語られることのなかった彼女の意外な一面が付け加えられた。
- 仲安昌邦(なかやす まさくに)
- 巧達の1学年後輩。階級は不明(中量級?)。得意技は内股や体落しで、後に中学時代の得意技一本背負いを再び使い出す。
- 赤髪・長髪・黒帯と入部希望者の中で一番目立つ存在で、厳しい練習に耐えて残った新入部員。柔道経験者ではあったが2年生5人には及ばず補欠要員となる。入部直後に赤髪こそやめたものの金髪のままでいたため、遅刻した巧と杉の代わりに出場したインターハイ県予選では、選手登録の際に「仲安・C(チャーリー)・昌邦」と偽名を使うことを強いられた。また怪我をした斉藤に代わってインターハイ本選の前半ではレギュラーを務めた(さすがに以降は黒髪になった)。来留間麻理は中学時代の同級生で片思い相手。
- 石野雪久(いしの ゆきひさ)
- 巧達の1学年後輩。階級は不明。得意技は大外刈りで、後に払い巻き込みに変化した。
- 柔道初心者だが陸上部経験や上背の高さなどで潜在的素質が見られ、厳しい練習に耐え抜く根性もある。巧と杉が遅刻したインターハイ県予選では仲安とともに補欠出場し、大外刈りで一本勝ちする。無口で存在感が無いために作者が描き忘れることもある不遇なキャラクター。
- 来留間麻理(くるま まり)
- 巧達の1学年後輩。入学当初は149cm40kgで48kg以下級。得意技は背負い投げや一本背負いで、後に内股からのすみ返しを会得する。
- 三工の来留間大志の妹で、中学時代に段をとっていた実力者。天性の柔道センスを持ち、デビュー戦から一本勝ちを量産する。マネージャーであった桜子を兄、大志ゴリ押しにより、練習相手として獲得、その数ヶ月後には兄譲りの強引さで桜子を大会出場にまで引き込んだ。袴田今日子に強い憧れを抱いており、インターハイ女子個人戦では予選から全国大会まで3度に渡り彼女と好勝負を演じる。インターハイは袴田に破れ準優勝に留まるが、福岡国際で優勝し一躍世界レベルにまで達する。浜高のマスコット的存在で、読者人気投票でも常に上位にランキングされていた。仲安は中学時代の同級生で、タイプではないと言い切るも彼絡みだと普段より感情が多く発露する微妙な関係(エピローグ中、二人は付き合っていると斉藤は鳶島に言っている)。
- 倉田龍子(くらた りゅうこ)
- 浜高の数学教師兼巧達が1年生時の担任で、柔道部顧問。巧達が入学した時点では24歳。剣道では三段の実力者(必殺技は円月殺法)だが、柔道に関する知識はまったくないため、序盤は巧たちの指導に手を焼いた。母は彼女が小学生の時に死去し、以後は父の倉田典善と2人暮らし。西久保とはなんだかんだでいい関係。エピローグでは西久保と結婚して二人で浜高柔道部を指導していた。
- 倉田典善(くらた てんぜん)
- 龍子の父。柔道六段を持ち県警の柔道師範を務める実力者。指導に手を焼く龍子に助言をしているうちに柔道部にも顔を見せるようになる。作品の中盤まで浜高柔道部の強化に度々寄与する。
- 西久保亨(にしくぼ とおる)
- 当初は、県警機動隊員であった。三工が大学生と練習していることに対抗して、浜高が典善の引き合わせで県警柔道部に通ったことがきっかけとなり、浜高の躍進の一助となる。2年目秋からは浜高柔道部コーチ。元国体強化選手の機動隊員だったが、2年目のインターハイが終わった後、退職して浜高柔道部のコーチに専念し、肩書きが家事(八百屋)手伝いとなる。千駄谷学園コーチの石丸とは大学時代のライバルだったが、10回以上対戦して接戦の末に全て敗れている。指導者として再び石丸とライバル関係になるが、柔道の理想像は同じもの(「技とスピード」)である。倉田典善に代わり作品中盤以降の浜高柔道部強化に寄与し、エピローグでは龍子と結婚している。
[編集] 三方ヶ原工業高校
浜名湖高校のライバルで、長らく西部地区のトップに立つ最強豪校。通称三工。
- 藤田恵(ふじた めぐみ)
- 巧達と同学年で、最大のライバル同士であう。三工のポイントゲッターで、入学当初は179cm78kgで中量級。後に86kgになるが、何故かエピローグでは再び78kg以下級に戻っている。得意技は左右の内股で、後に変形の小内巻き込みを会得する。
- 中学全国大会の優勝経験を持ち、1年生にして夏からレギュラーを務める。地区・県の予選で浜高と激戦を繰り広げるのみならず、プライベートでも巧と浅からぬ因縁を持ち、お互いを強く意識している。それを示すエピソードとして、たまたま、同時開始となった二人別々の個人戦において、暗黙のうちにどちらが早く勝つかを競いあったことがある。仲が悪いのも確かだが、全力で競い合ってきた者同士、相通ずるところもあるようで、それを感じさせるシーンもよく見られる。階級は中量級だが、選手権の無差別級個人戦では全国大会決勝にまで上り詰めた。惜しくも敗れたが、千駄ヶ谷の橘との決勝戦は、全国大会決勝の名に恥じぬ激戦といえる。序盤からの登場キャラクターだが、単行本の表紙を飾ったのは終盤(第24巻)だった。そのセクシーな表紙イラストはファンの間で今でも語り草となっている。アマレスと空手をそれぞれしている弟2人がいる。
- 関谷和実(せきや かずみ)
- 藤田と同学年で、三工の柔道部員。階級は軽中量級。得意技は返し技全般。
- 三工の他の1年生に遅れて二段を取りにいった昇段審査で巧に勝利する。なかなかの技巧派で、1年生の秋からはレギュラーになるが、大きく成長した巧にはあっさり破れた。やがて自分自身が尽力した後輩の成長に伴い、団体戦では、補欠にまわったこともある。
- 来留間大志(くるま たいし)
- 藤田の二学年上の先輩。階級は重量級。
- 来留間麻理の兄で、顔と性格が妹とそっくり。見事なアンコ型体形ではあるが、すばらしい運動神経と身軽さをあわせ持っている。いろいろな意味で驚異のキャラクターである。高校入学当初までは野球部員だったが、先輩との確執などがあり退部し、断り続けていた柔道部顧問吉岡先生の勧誘に応じて、柔道部へと移った(単行本第9巻収録の外伝)。柔道経験は浅く、柔道をしている姿は1コマ(一瞬で一本勝ち)しかないが、3年生の夏に重量級で地区優勝するなど全国レベルの実力はあったようである。海老塚桜子に柔道を無理矢理はじめさせた張本人。引退後も妙な存在感を示し、シリアスになりがちな三工サイドのギャグ担当キャラクターとなる。高校卒業後は野球に復帰し、社会人を経て中日ドラゴンズに入団しプレーしている。
- 端本進也(はしもと しんや)、蜂野正広(はちの まさひろ)、武戸敬二(むと けいじ)
- 藤田の一学年上の先輩達。容姿と名前の通り闘魂三銃士がモデル。
- 吉岡(よしおか)
- 三工の柔道部顧問兼コーチ。
[編集] 佐鳴高校
浜名湖高校と同じ西部地区にある進学校。かつては強豪校だったが、近年は一回戦敗退が常となっていた。女子柔道が盛ん。
- 石塚孝裕(いしづか たかひろ)
- 巧達の1学年上で、佐鳴高校の柔道部主将。173cm65kgで軽中量級。得意技は体落しや背負い投げおよび足技を多用した連続技。
- 中学時代はバレーボール部に所属していたが、限界を感じて柔道に転向する。保奈美と桜子は中学時代の後輩で、保奈美に告白してあっさり振られた経歴の持ち主だが、再会時には既に袴田今日子という彼女が出来ていた。2年生の時は佐鳴唯一のポイントゲッターで巧にも勝利するが、その後実力は離される一方で、袴田との恋愛ネタ要員になる。
- 袴田今日子(はかまだ きょうこ)
- 石塚と同学年で、佐鳴高校の女子柔道部員。階級は48kg以下級。得意技は体落しや背負い投げ、内股など。
- 可憐な容姿で浜高の三バカの心を鷲掴みにするが、勝手に親衛隊を作られて困惑する。全国大会の常連で、2年生の時は春の体重別選手権で、3年生の時はインターハイでそれぞれ全国優勝する。来留間麻理の出現までは女子柔道界のホープだったが、受験勉強で出場しなかった福岡国際で麻理が優勝し、その座を奪われる。石塚とは恋人同士で、豊という弟がいる。才色兼備だが、料理は下手である。将来は教師を目指している。
- 袴田豊(はかまだ ゆたか)
- 袴田今日子の1学年下の弟。階級は中量級。
- 中学時代は柔道をしていてそこそこ実力はあったが、才能溢れる姉と比較されることを嫌い、高校入学後はしばらく柔道から離れていた。桜子に惚れ込み助言に従い復帰するが、時既に遅く浜高などとは実力が開ききってしまっていた。
[編集] 暁泉学園
浜名湖高校と同じ西部地区にある、ライバルとして登場してくる新設の私立校。体育科があり、スポーツ推薦で有望な選手を集め、その育成に力を入れている。しかし柔道部員は他のスポーツからの転向組ばかりで、運動部偏重の私立校という典型的ライバル設定にも関わらず、イロモノだらけのギャグ要員になっている。
- 堀内平八郎(ほりうち へいはちろう)
- 巧達と同学年で、暁泉学園の柔道部主将。階級は軽重量級。得意技は大外刈りや内股、払い腰など。
- 巧と保奈美とは幼馴染で、かつてはいじめられっ子だったが、空手やボクシングを習って強気な性格に変わる。高校で柔道を始め、個性豊かなチームメイトのまとめ役になっている。スポーツ推薦による入学だったようで、そのプレッシャーからか、当初はお気楽そうな巧を始めとする浜高柔道部に反感を持っていた。その後、浜高との団体戦を通して分かり合うようになる。
- 一度、髪型を帽子と間違われたことがある。
- 永田賢(ながた けん)
- 平八郎と同学年で、暁泉学園の柔道部員。階級は軽中量級。得意技は飛び込み内股やアダムス式回転十字固めなど。
- ロングヘアの美形キャラで、カマ言葉で妖しい魅力を振りまくナルシストだが、柔道の才能と実力は確か。普段は温厚だが、キレると人格が変わり粗暴になる。初めて登場した頃は、その人格をコントロールできず、試合もスロースターター気味だったが、その後、コントロールを覚え、意図的にキレて試合に臨んでいた。登場するたびに桜子に抱きつく癖がある。料理が上手く、部員にはお重に入ったお弁当を振舞っている。なんとポットまで試合会場に持参して、お茶を飲んでいた。
- 佐野直弼(さの なおすけ)
- 平八郎と同学年で、暁泉学園の柔道部員。元水泳部。粗野な言動をしたり袴田今日子に言い寄ったりと、暁泉にダーティなイメージを付与する悪役だったが、途中からその役を降ろされただのチームメイトAになる。
- 黒柳将治(くろやなぎ まさひろ)
- 平八郎と同学年で、暁泉学園の柔道部員。元相撲部で140kgの重量級。持ち技は裏投げのみ。いつも相撲取りの名前で呼ばれる。
- 原田彦蔵(はらだ ひこぞう)
- 平八郎と同学年で、暁泉学園の柔道部員兼ゴルフ部員。柔道は素人で頭数を合わせるためだけのメンバーであり、その老けた容貌から「ダンナ」と呼ばれ大切にされている。ゴルフ部員としては、「バンカーの勝負師」の異名を持つ程のゴルフプレイヤーである。唯一教わった柔道の投げ技”出足払い”にゴルフの経験を融合させた「ドライバーショット足払い」(自称・略してDSA)が必殺技。この技で油断しきっていた巧に勝ってしまう。2年生になってからは柔道経験者の喜久地が入部しレギュラーを外れたものの、部の精神的支柱(?)として存在感を発揮し続けた。
[編集] 千駄谷学園
柔道を志す者が全国から集まってくる、東京の超強豪校。部員全員が寮生活を送り柔道漬けの厳しい指導をする。モデルとなったのは世田谷学園。
- 鳶嶋雅隆(とびしま まさたか)
- 兄・佳隆を追って千駄ヶ谷学園に入学したが、登場した時にはすでに後に兄以上の選手として注目されるまでに成長していた。巧達と同学年で、兄の後を継ぎ柔道部主将を務める。168cm71kgで軽中量級。3年生になってからは中量級に階級を上げる。得意技は袖釣り込み腰。
- 2年生の時インターハイ個人戦決勝で巧を破って以来、全国大会では常に浜名湖高校の前に立ちはだかる超高校級選手。
- 橘大樹(たちばな たいき)
- 巧達と同学年で、鳶嶋と並ぶ千駄谷のポイントゲッター。188cm120kgで重量級。
- 上背のある均整のとれた体格、パワー、スタミナもさることながら、何事にも動じることの無い温厚な性格であり、作中では高校生最強。選手権団体戦決勝で彼をどう攻略するかが終盤最大の山場となった。チームメイトには「大仏」と呼ばれている。
- 滝川澄之(たきがわ すみゆき)
- 足技が得意で、天性のカンで技をかけることができる。フケ顔。チームメイトに「ジイ」と呼ばれている。
- 安藤忠(あんどう ただし)
- 気が強く、小柄ながらどんどん奥襟を取りにいく積極的な柔道をする。チームメイトに「チュウ」と呼ばれている(名前から)。
- 御厨太郎(みくりや たろう)
- 一年生ながら千駄ヶ谷のレギュラーを務める。軽量級。得意の背負い投げは石丸コーチ直伝。重量級をも投げることのできる実力の持ち主。チームメイトに「クリリン」と呼ばれている。
- 鳶嶋佳隆(とびしま よしたか)
- 雅隆の兄。千駄ヶ谷学園の監督にスカウトされて九州から上京する。インターハイの団体戦ではキャプテンとしてチームを引っ張るが、浜高との試合では団体戦勝利後の消化試合である巧との試合に敗れている。雅隆の袖釣り込み腰は佳隆が磨いた技を伝えたもの。
[編集] 女子柔道
本作では、日の目を見ることが少ない高校女子柔道も並行して扱っている。女子柔道自体は『YAWARA!』などでも扱われているが、当時現実の高校までの女子柔道は男子に比べ扱いは軽かった。それは作中西久保が言った通り、部員数が足りず部活動ではなく町道場が主体になる事がままあったからである。作中でも袴田今日子が中学時代は学外で柔道をしていた旨語っている。なお女子の団体戦は何故か登場せず、みな個人戦でのみ戦っている。
海老塚桜子、来留間麻理、袴田今日子についてはそれぞれの高校を参照。
- 別所愛子(べっしょ あいこ)
- 静岡の中部地区にある赤磐高校所属。桜子と同学年。階級は48kg以下級、後に52kg以下級に転向。得意技は膝車や内股など。
- 初登場時は白帯で、それが縁でインターハイの県予選で桜子と顔を合わせて仲良くなる。控え目で恥ずかしがり屋な性格。華奢な見た目とは裏腹にパワフルで正統派な柔道を得意とする。当初は巧に想いを寄せ保奈美と冷戦を繰り広げるが、後に対象を斉藤に変更し、文通をしたり斉藤の気合を引き出したりする。惚れっぽく自然に男達を振り回し仕事をしないところから「姫」と称された。何故か赤磐高校から誰も応援に来ないという謎を抱えている。
- 松原渚(まつばら なぎさ)
- 静岡の中部地区にある三保女子学園(初登場時は学院)所属。袴田と同学年。階級は48kg以下級。
- 春の選手権では県予選3位になった実力者だが、インターハイの県予選初戦で油断しまくって桜子に負ける。桜子との対戦が3年生の夏だったため直後に引退し、後輩の薩川を指導して雪辱を果たそうとするが、自立する薩川の姿を見て改心する。
- 薩川佐代子(さつかわ さよこ)
- 静岡の中部地区にある三保女子学園所属。麻理と同学年。階級は52kg以下級。得意技は大外刈りや一本背負いなど。
- 先輩の松原に指導を受け、桜子への復讐を代行しようとする。だが桜子や麻理と出会ってから考えを改め、復讐ではなく楽しい柔道を目指すようになる。
- 乙淵ふね(おとぶち ふね)
- 栃木の宇都宮西高校所属。階級は48kg級、後に52kgに転向。作者公認のいじめっ子。
- インターハイの全国大会準決勝で麻理に両ビンタをかまして(実際はネコだましをするつもりだったが、麻理の出足が速過ぎてビンタとなる)泣かせたり、その直後、麻理と袴田の決勝を野次で妨害しようとしたり(桜子に阻止され、会場外で雨の中乱闘となり風邪を引く)、春の選手権準決勝で薬品を使って薩川の目潰しを企てたりする。目立ちたがり屋かつ意地悪な性格。全国大会に出場できる実力はあるが、卑怯な手段で勝とうとしてはことごとく自滅する。ふねという名前にコンプレックスがあり、取り巻き達に「ふっちん」と呼ばせ、自称もそうしている。