尼削ぎ
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尼削ぎ(あまそぎ)とは現在のセミロングにあたる平安時代の髪型。子供に用いる場合はうない、振分け髪とも。
長い髪をことさら大事にした平安時代の貴族女性は、出家の際も髪を切らず大抵肩の辺りで切りそろえた。この短い髪型が髪を伸ばしかけの少年少女の髪型に似ているので、そのような子供の髪型でも尼削ぎという。
[編集] 少女の髪型
平安時代の少女の髪型は多少の違いこそあれ総じて下げ髪である。平安のころから日本人の子供に対する関心や愛着は高く、同じように見えても成長の過程で微妙に変わる髪形を呼び分けた。
うなじあたりで髪をそろえたごく短い幼児の髪型を「うない」という。(元服前の少年少女の髪型全般を指すこともある)
「尼削ぎ」(おかっぱ頭)のごく幼い少年少女の前髪が目の上辺り迄伸びてきているものを「目刺し」とよぶ、自身も母であり子供好きの清少納言は随筆枕草子でこのぐらいの子供が邪魔な前髪を後ろに掻き揚げながら何かに夢中で見入っているさま、真ん中で分けて耳の上に挟んだ前髪がまだ短いので顔にこぼれかかっているさまなどを生き生きと描いている。
髪が肩ぐらいまで伸び、前髪も目が隠れるまで伸びてくると、邪魔にならないように髪を真ん中で分けて左右に垂らす。これを「振り分け髪」といい、耳の上辺りで紙で包んで前髪を止め、視界を防がないようにすることもある。伊勢物語で女君が幼馴染の求愛に答えた「くらべこし振り分け髪も肩過ぎて」の歌からも婚礼(髪上げ)前の少女が少年とまったく同じ髪形をしていたことがわかる。