導電性高分子
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導電性高分子(どうでんせいこうぶんし)とは、電気伝導性を持つ高分子化合物の呼称である。
共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な物質としてはポリアセチレン、ポリチオフェン類などが挙げられる。「導電性」と呼ばれているが、実際の性質は導体というより半導体のそれであり、高分子半導体などと呼ぶ場合もある。
導電性は自由電子を持つ金属固有の性質で、自由電子を持たない有機材料である高分子は電気を流さない絶縁体であり、その性質ゆえ電気・電子分野においては絶縁材や誘電体などに使われてきた。しかし、1970年代に白川英樹らによるポリアセチレンフィルムの合成により電気が流れる高分子、つまり導電性高分子に関する研究が飛躍的に発展し、現在では電解コンデンサや電子機器のバックアップ用電池、携帯電話やノート型パソコンに使用されているリチウムイオン電池の電極等に応用されている。また、導電性高分子は導電性だけでなく発光性を有し、かつ製膜性を有するのでフレキシブルディスプレイの実現が可能な有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)への応用や、シリコン等の無機半導体でなく有機物を利用した有機トランジスタ、導電性高分子をインクとしてインクジェット技術などを利用し直接基板にパターンを作るプリンタブル回路などの次世代への研究・実用化も盛んに行われている。
導電性高分子は一般に2重結合と単結合が交互に並んだ構造、つまりパイ共役が発達した主鎖を持ち、導電性はこの性質に起因する。それゆえ導電性高分子は共役系高分子とも呼ばれる。共役系高分子はパイ共役を持つので一般の高分子と異なり導電経路は有するものの、自由に動ける電荷移動体、つまりキャリアが存在しないためそれ自身では導電性を発現しない。しかし、シリコン等の無機半導体のようにキャリアをドーピングし自由に動けるキャリアを注入することで導電性を発現することができる。
このドーピングは、ヨウ素や五フッ化ヒ素などの電子受容体(アクセプタ)やアルカリ金属などの電子供与体(ドナー)等の適当な化学種を高分子に添加することで行われ、化学ドーピングと呼ばれる。このように、化学ドーピングにより導電性高分子は自由に動くことのできるキャリアを生じるため、有機物でありながら金属に匹敵する導電性を有するのである。
これまでにポリアセチレンをはじめとし、芳香環を有するポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレンなど多くの導電性高分子が合成され、研究が行われている。
2000年、導電性ポリアセチレンの発見と開発の功績により、白川英樹がノーベル化学賞を受賞した。