実録
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実録(じつろく)は、中国の史官が、皇帝一代の事績を記録したものを指す用語である。
その起こりは、南北朝時代以前であるとされ、梁の武帝の事績を記した『梁皇帝実録』などの記録が見える。しかし、その編纂の制度が整備されたのは、唐代になってからであり、皇帝が崩御した後に、起居注を中心とした文書や記録を集めて編纂することとなった。さらに、実録を元にして各王朝の史書、つまり正史が作られることとなる。
現存する実録としては、北宋の『太宗実録』が見られるほか、『明実録』2,909巻と『清実録』4,000巻余を見ることが出来る。明清の実録は、ともに影印出版されているため、便利である(『大明実録』(1942年)、『大清歴朝実録』(1937年))。
[編集] 日本・朝鮮の実録
日本で編纂された正史で実録の名称が付されているものとしては、六国史の日本文徳天皇実録や日本三代実録がある。また、李氏朝鮮の担当者及び同政府を継承した朝鮮総督府によって編纂された李朝実録がある。
なお、明治以後、孝明天皇以後の代々の天皇の実録が宮内省で作られており、この事業は現在の宮内庁にも継承されている。これまで『孝明天皇紀』・『明治天皇紀』が完成し、『昭和天皇紀』の編纂計画が進められている事は明らかになっている。ところが、『大正天皇紀』に関してはその存在自体は推測されるものの現在の宮内庁においては情報公開の対象外とされている。このため、「大正天皇の健康問題が関わっているのでは?」などの様々な説が言われているが、実際のところは不明である。