実空間法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
実空間法:通常のバンド計算では、周期的境界条件の下に、 逆格子空間での計算を必要とする(*)が、実空間法では、実空間での波動関数を、 FET(有限要素法)や、差分方程式を直接解いて求める。 この手法には次のような利点がある。
- 実空間のみで計算が行われるので、FFT(高速フーリエ変換)による計算を必要としない。FFTの計算部分は並列化が難しく、これを使用しないことは計算を並列化する上で有利となる。
- 境界条件を自由に設定でき、周期的境界条件に縛られない。従って電場のような外場を課した系に対しての電子状態計算も、外場に細工することなし(*2)に可能となる。
(*)バンド計算において、電子間のクーロン相互作用による クーロン項(ハートリー項)の計算は、逆格子空間で計算する場合、畳み込みの形にでき、この場合FFTを利用して高速な計算ができる。実空間では、ポアソン方程式を解いて求めるが、逆格子空間での場合より多くの計算量を要する。
(*2)周期的境界条件を前提とした、通常のバンド計算で電場のような外場を扱う場合は、電場(外場)の形をのこぎり状に変形し(無限の電場の傾きを周期的境界条件下では実現できないため)、無理に周期系でも矛盾が生じないようにさせて計算を行う。このため計算の信頼性が、外場のないバンド計算の場合より落ちてしまう。