塩化カルシウム
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塩化カルシウム(えんかカルシウム)は、化学式 CaCl2 で示される化合物。工業的に炭酸ナトリウムを生成する「ソルベー法」の副産物として得られる。
式量は110.98。薬品として、2水和物CaCl2・2H2O(式量 147.01)がよく使用される。
[編集] 用途
除湿剤、融雪剤、豆腐用凝固剤、食品添加物などに使用される。水に溶けやすく、水溶液の凝固点が低くなる。この性質を利用して、スケートリンクの冷媒として飽和水溶液を用いる。
日本国内では、晩秋になると、積雪に備え道路の各所(主に橋梁、急勾配、急カーブ)に塩化カルシウムを入れた容器が配備される。 積雪や凍結などで路面が危険な状態にならないよう、通行者が自主的に撒布することができるようになっている。その際の適正な使用量は、1平方メートルあたり約30グラム(一握り)で、撒きすぎないように注意しなければならない。
水に溶けるときは発熱する。
[編集] 塩化カルシウムによる害
塩化カルシウムは海水など自然環境の中に広く存在する、毒性の少ない物質として知られている。しかし、家庭用の吸湿剤を使えばタンクの中に高濃度の塩化カルシウム水溶液がたまるようになっているし、前述の融雪剤として断続的に塩化カルシウムを使うことによる害について知っておく必要がある。
吸湿剤のタンクにたまった液が皮革製品に接した場合、表面が侵される。吸湿剤は皮革製品を含む衣類を収納している場所に設置するのが常なので、吸湿剤を交換するとか、衣類の出し入れの際にタンクを倒さないように配慮する必要がある。同時に、子供が誤飲することのないように設置場所を工夫したり、事前に注意しておくことも大切である。
融雪剤として撒布された塩化カルシウムは周辺の植生にとって有害である。都市内の道路のように周辺に植生のない場所なら問題ないが、山間部などでは必然的に塩化カルシウムの撒布が多頻度で行われるため、土壌における塩化物イオンの量が過剰となり植生が衰退傾向を見せることもある。
塩化物イオンは、鉄筋コンクリートに対しても悪影響がある。これらの弊害については塩害の記事を参照されたい。
また、道路の融雪・凍結防止目的で撒布された塩化カルシウムは水溶液となり、その上を車両が通行する際にしぶきとなり、自動車の車体や車輪に付着して、腐食や劣化の原因となる。塩化カルシウムが撒布された(とおぼしき)道路を通行した場合は、速やかに洗車することが望ましい。頻繁に通行する場合は、あらかじめマリン用品として出回っている塩害防止スプレーを噴霧しておくなどの予防策が有効である。さらに、素手で塩化カルシウムを撒くのは皮膚炎の原因となりうる。特に雪などで皮膚がぬれている場合は注意したい。水分を遮断できる手袋を着けて撒くのが最適である。
[編集] 関連項目
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