史通
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史通(しつう)は、中国における歴史書であり、単なる記録にとどまらず、系統立った史学概論・史学理論を体系的に記した最初の書物である。
撰者は唐の劉知幾で、全20巻、成立は景龍4年(710年)である。
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[編集] 成立
劉知幾は、史官の地位にあって、史書の編纂について知見を備えていたが、それが世に入れられないのを憤慨して、歴史書編纂の大要を記したのが本書である。その論は、後述の六家の特徴、編年体、紀伝体、断代史の長所短所や、歴史官の制度や沿革および、唐代までの正史などに関する批評や、歴史編纂の形式論、史料に対する取り扱いにまで及んでいる。
[編集] 構成
- 内篇 10巻 39篇 但し、うち体統篇・紕繆篇・弛張篇の3篇は散佚している。主として歴史家の体例について記す。
- 外篇 10巻 13篇 歴史書の源流、過去の歴史書に対する評論を記す。
- 史官建置篇・古今正史篇 『史通』全体のなかでも、初めに書き始められたとされる2篇。
- 疑古篇 『尚書』について、10の疑問を提起している。
- 惑経篇 『春秋』に対して、12の疑問を提起している。
- 申左篇 『左氏伝』の優れた点について述べる。
- 點煩篇 歴史書中の煩瑣な文章の例を挙げて批判し、簡潔な表現に改めた時の表現を明記する。
- 暗惑篇 歴史書中の、明らかに事実とは考えられない事例が、実しやかに史書中に記載されている事例を挙げて批判する。
[編集] 特色
劉知幾の立場は、『漢書』の形式美を『史記』の歴史観よりも評価するものである。ゆえにその特色も、その体例論に見ることができる。一例として、都邑志・民族志・方物志の3志を新設すべしという論が見られる。このような議論は、当時の趨勢に適合した論である。