匿名組合
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匿名組合(とくめいくみあい)とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をなし、その営業より生じる利益の分配を受けることを約束する契約形態をいう。つまり、営業者が匿名組合員から集めた財産を運用して利益をあげ、これを分配するのが匿名組合契約である。日本においては商法535条に規定されている。
組合という名称にも関わらず匿名組合は団体ではなく、法的には営業者の単独企業である。よって匿名組合員の出資は営業者の財産になり(商法536条1項)、匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利義務を有しない(同条2項、なお民法675条と対照)。その反面として、匿名組合員がその氏若しくは氏名を営業者の商号中に用い、又はその商号を営業者の商号として用いることを許諾したときは、その使用以後に生じた債務について、営業者と連帯して履行する責任を負う(商法537条)。
こうしたことから、匿名組合員は、営業者の行為に関する権利義務関係の名宛人とならず、一般には営業者の商号にもその名前が顕れないので、「匿名」と呼ばれるわけである。 また、匿名組合契約に基づく損益は、匿名組合員に全て分配することが出来るため(ただし、損失分配時は税務上は出資額を限度とする)、導管体として利用価値が高く、しばしば特別目的会社(SPC)と投資家との間において利用されることがある。(この場合、SPCを営業者、投資家を匿名組合員とする)
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[編集] 匿名組合の起源
匿名組合は中世における地中海貿易で活用されたcommendaに由来する。同じく合資会社もcommendaから発展したものである。commendaの中でも貴族や聖職者のようにその身分から営利行為に関わることを良しとはされなかった人々が出資関係を秘匿しつつ利益を上げるという需要に応えて発展したのが匿名組合であり、出資関係の秘匿を必要としないcommendaが合資会社へと発展した。
[編集] 特定債権等に係る事業の規制に係る法律における匿名組合
特定債権等に係る事業の規制に係る法律(1992年6月5日法律第77号)の第2条第4項第2号イでは、この法律に従って「特定債権等譲受業」を行うべき事業体のプロトタイプとして、匿名組合契約を次のように定義している。
「当事者の一方が相手方の営業のために出資を行い、相手方が営業としてその出資された財産を特定債権等の取得及び行使(特定物品にあっては、その譲渡又は賃貸をいう。以下同じ。)により運用し、当該運用から生ずる利益の分配及び当該出資の価額(当該出資が損失によって減少した場合にあっては、その残額)の返還(以下「利益の分配等」という。)を行うことを約する契約」
[編集] 不動産特定共同事業法における匿名組合
不動産特定共同事業法(1994年6月29日法律第77号)の第2条第3項第2号では、「不動産特定共同事業契約」の一類型として、匿名組合契約を次のとおり規定している。
「当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため出資を行い、相手方がその出資された財産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる利益の分配を行うことを約する契約」
[編集] 最近の活用例
最近、映画の撮影資金、アイドルタレントのデビュー資金を匿名組合で集めるなど、ユニークな事例が出てきている。その中でも注目すべきは、本来大規模な資金を必要とするクリーンエネルギー設備資金を、一般市民からの匿名組合出資で薄く広く集める「風力発電ファンド」「太陽光発電ファンド」であろう。風力発電については北海道で、太陽光発電については長野県で、それぞれ匿名組合出資の実例がある。