中世哲学
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時代区分としての中世において行われた哲学のことであるが、伝統的には、地理的にヨーロッパに限定された、ヨーロッパ中世における哲学のことを主に示す訳語として使われてきた。ことに8世紀以降は、西ヨーロッパに限定して使われることが多い。したがって中世哲学はキリスト教神学の哲学的研究と伝統的にはほぼ同義に使われてきた。だが実際には、そうしたヨーロッパでの発展、特に12世紀以降のそれは、特にイスラム世界での哲学の発達と密接な連関を持っており、20世紀に入ってからの研究では、その連続性を強調することが一般的である。ことに、アヴェロエス、モーゼス・マイモニデスなどキリスト教思想に直接に影響を与えた論者の研究は、一般的に中世哲学の研究対象ともみなされている。
具体的な時間的広がりとしては、一般にアウグスティヌスやボエティウスが始まりとしておかれるが、論者により便宜的に、4世紀以前の教父学を含めて言うことがある。その終わりは、中世という時代区分に従いながらも、よく知られた人物で代表させ、14世紀のオッカムやビュリダンらの時期に実質的におかれることが多い。だがその成果はスコラ学の伝統として、16-17世紀のスアレスなどを経由して、近世まで受け継がれてゆく。
代表的な論者には、上に挙げたほか、エリウゲナ、アベラルドゥス、ボナヴェントゥラ、トマス、ドゥンス・スコトゥス、エックハルトなどがある。