丘の家のミッキー
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丘の家のミッキー(おかのいえのミッキー)は、小説である。作者は久美沙織。
第1作となる表題作は1984年にコバルト文庫(集英社)から出版され、以後1年に2作のペースで第10作までが出版された。最盛期には初版が10万部以上刷られていたとも言われている。
2001年に、新装版として再版された。新装版には1980年代と現在に関してギャップのある内容について解説が加えられている。
めるへんめーかーによって1巻相当の内容が白泉社から漫画化(全2巻)されているほか、関連本が数冊出版されている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] あらすじ
[編集] 1巻
主人公である浅葉未来(あさばみく)は、東京都心のお嬢様学校である"華雅学園"の、中等部の生徒で、周りからは"ミシェール"と呼ばれている。この学園には、住むところや家柄などを兼ね備えた者が選ばれて入る"ソロリティー"という社交クラブが存在するが、浅葉未来は幼なじみのトコと共にソロリティーに所属しており、さらにその代表である麗美に憧れてもいた。
そんな、未来が中等部3年生の4月の末、未来の父は、現在の居所である三番町から長年の夢であった葉山のそば、堺惟(さかい)にある家を買って移り住むことを決意する。華雅学園には通学距離の制限があり、そのため主人公は退学、転校を余儀なくされることとなった。転校先は"森戸南女学館"という中高一貫の女子校であった。
転校初日から両校のあまりのギャップにとまどう主人公であるが、西在家麗(にしざいけうらら)をはじめとして、少しずつ新しい友人もできる。父親とはなんとなくぎくしゃくしたままだが、その父は長年の夢の続きとしてダルメシアンを飼うことにし、家の船着き場を貸したりもする。そして、未来の家に来た小さいヨット(ディンギー)とそれを持ち込んできたうららの兄、朱海(あけみ)。朱海は未来のことを、"ミッキー"と名付け、森戸南の周りでは少しずつ未来はミッキーと呼ばれ始めた。朱海は未来にいろいろアプローチしたり、告白したりするのだが、未来にはいっこうにそれがピンとこない。
7月、ソロリティーの仲間も遊びに来たディンギーの進水式の日、未来は、ミシェールと呼ばれる自分とミッキーと呼ばれる自分、どちらも自分であることに気付き、また、引っ越した家が未来の幼い頃の夢でもあったことにも気付くのだった。
[編集] 2巻
夏休みも近づいた7月、自力でヨットに乗り込めない事に気がつかされた未来は、腕を鍛えることに。加奈子に憧れた杉丸は、進学先を華雅学園にすることに決める。しかし未来は、自分が中学卒業後華雅学園に戻るのか、森戸南に進学するのか、改めて迷うことになる。
そして迎える夏休み。西在家の家には留学生、バートがホームステイすることになった。未来もその歓迎として設けられた香席に参加し、朱海の親戚みづゑに初対面したり、バートに鎌倉を案内したりすることになる。夢だった鎌倉を自分の目で見られることに喜ぶバートを見て、未来は自分の可能性が他にあるのではないかと漠然と気付く。
朱海に懸垂を見てもらい、その後西在家の家に行った未来は、そこで華雅御前と言われた香織を初めて目撃し、うららに華雅御前の真相について聞かされる。香織は華雅御前を辞めたいと思った末に作家活動を始め、活動について誤解されたことを利用して退学に成功したとも。
香織が落ち着き、面倒を見る必要がなくなったことでヨットも再開。しかし、未来が朱海と乗ったヨットにみづゑのウィンドサーフィンが接触事故を起こし、ヨットは転覆する。朱海になんとか助けられた未来は、父親にこの事故の事は言わないようにしようと考える。未来にも、父親に対して秘密が出来た。
[編集] 3巻
未来はいったん転校した自分がどのように高等部から再入学できるのか聞くため転校元の華雅学園に向かった。校長が指定した夏休み中のその日は華雅学園の登校日で、ソロリティの総会の日でもあった。未来はトコを始めとした懐かしい面々に再会する。その夜、未来は憧れの麗美の家に2人きりで泊まった。
大分慣れてきたヨットの練習をしていたある日、バートを取材しようとテレビ番組の取材がやってきた。未来の父と知り合いだというディレクターの内田は、「原節子に会わせる」と口約束して、バートを大喜びさせ、バートは、未来を「タイプの女性」と紹介して頬にキスする。テレビを見て未来の両親も大喜び。未来にとっては何もかも嫌なことなのに。
オンエア直後の日曜日、バートが内田に連れられて原節子に会いに行くのを、未来と未来の父はこっそり尾行する。着いた家、和室にいる和服のおばあさんに、バートは原節子への思いを、小津監督に対する思いを、そしていつか本当の原節子に会うという決意を語った。バートは、会った相手が原節子でないのに気がついていたのだ。同様に尾行してきた朱海とうらら、併せて5人の帰り道、踏切待ちの前を通り過ぎた電車の中にいた美しい老婦人を見て、バートは立ったまま気絶する。
夏休みも終わりに近づき、未来は杉丸が憧れの加奈子に会えるよう、トコと加奈子と麗美を呼んでの蛍狩りを計画する。しかし当日、加奈子はボーイフレンド連れでやってきた。トコと杉丸のためになんとかしたいと空回りする未来。その日はバーベキュー、肝試し、蛍狩りに花火大会と過ぎて夏休みも終わった。
2学期最初の日。元気な未来とは対照的に、よどんだ雰囲気の教室。それは単に夏休みが終わったからといった理由だけではなかった。テレビの中でもてまくった未来へ、学内の生徒が束になって襲いかかる。その中心にいたのが、朱海親衛隊の隊長、菅原稲子だった。稲子は未来に朱海への気持ちを問いただすが、そんな稲子に未来は文通の約束を取り付ける。
[編集] 登場人物
浅葉未来(あさば みく)
- 主人公。華雅学園中等部の三年生在籍として物語が始まる。華雅学園での呼び名は洗礼名からミシェール。森戸南女学館でのあだ名は名前からミッキー。
純真無垢の「お嬢様」
小堀麗美(こぼり れみ)
- 未来の憧れの女性。華雅学園高等部三年生。ソロリティーの会長。高等部卒業後は華雅学園ではない大学に進学するつもりでいる。
千葉加奈子(ちば かなこ)
- 華雅学園高等部三年生。ソロリティーの一員。麗美との付き合いが長い。杉丸の憧れになる。
逆井琴子(さかい ことこ)
- 未来の幼なじみで親友。あだ名はトコ。実家は神田多町のお寿司屋。
未来の父
- 某銀行の六本木支店長。長野出身で昭和10年頃生まれ。太陽族に憧れ、千代田区三番町のマンションを売って堺惟(葉山と横須賀の境の海沿いにあるという架空の地名)にある先輩の家を譲り受け、引っ越すことに。
未来の母
- 未来の父より5歳ほど年下。未来の父とは有楽町のカフェーで出会った。結婚当初のウエストは54cm。
池貝有希子(いけがい ゆきこ)
- 未来と同学年の、麗美の遠い親戚。ソロリティーのメンバーではなかったが、未来が華雅学園を退学した後、母が入院したため麗美の家に預けられた際に住民票を移し、ソロリティーのメンバーとなった。
鶴橋晃司(つるはし こうじ)
- 森戸南女学館での未来の担任。未来が中学三年の時点で34歳未婚。理科教師で、医者を目指している。
杉田月子(すぎた つきこ)
- 森戸南女学館で未来に最初にできた友人。あだ名は杉丸。もとはうららを慕っていたが、その後加奈子が憧れになり、華雅学園高等部入学を目指す。
西在家麗(にしざいけ うらら)
- 森戸南女学館で未来の友人となる。ショートカットで日焼けしていてボーイッシュ。西在家当代の四女。西在家の中ではウリ坊と呼ばれることが多い。
植田美土里(うえだ みどり)
- 未来のクラスメイト。森戸南女学館での消しゴム麻雀で、未来にハコ点を食らう。クラスでは一番に近いくらい美人で大人っぽい、らしい。転校当初の未来いじめの中心人物であり、未来は苦手にしている。
小熊辰子(おぐま たつこ)
- 3年A組。西さやかの小説のファンで、私設のファンクラブ会長を務めているほか、西さやかのマネージャー的役割もこなしている。麻雀も強い。
西在家朱海(にしざいけ あけみ)
- 鎌倉にある御成学院高校の2年生。うららの兄。宝珠流香道の家元の跡継ぎ。友人である一穂(カズホ)と尚史(タカシ)と共にヨットを手に入れ、どこに繋留するか佐島のマリーナで相談しているところに未来の父と会い、未来の家の船着き場にヨットを置くことになる。バイク乗り。未来をミッキーという名で呼ぶきっかけを作る。西在家の中ではみー君と呼ばれることもある。
西在家香織(にしざいけ かおり)
- うららの姉(長女)。七代目の華雅御前と呼ばれていたが卒業前に華雅学園は退学した。その当時から作家で、ペンネームは西さやか。男性に免疫がなく、あった男性のほとんどに恋してしまうため、家族はなるべく外に出さないようにしている。
バーソロミュー
鈴原みづゑ(すずはら みづゑ)
- 西在家の親戚。横浜にある聖フェリシア在学の18歳。朱海を軸に、未来と対立する。
羅士丸(らしまる)
- 未来が飼っているダルマシアン。ただし、未来の父は犬の名を"ラッシー"にしたいと考えていて、実際未来の父も未来の母も"ラッシー"と呼んでいる。
<以下書きかけ>
[編集] 関連事項
第1巻から第6巻までは俗に"中学編"、第7巻から第10巻までが俗に"高校編"と呼ばれることもある。
新装版にはサブタイトルが付いている。
- お嬢様はつらいよの巻
- かよわさって罪なの?の巻
- 野の百合は暗くなるまで待てないの巻
- 行くべきか行かざるべきかの巻
- 永遠の麗美さまの巻
- 望んだものは天使の巻
- 未来進化するの巻
- ツルへの恩返しの巻
- きみといつまでもの巻
- 井の中の蛙世界に飛び出す!?の巻
このサブタイトルの頭文字を順に取り出すことで、元の題名が浮かび上がるようになっている。