世襲政治家
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世襲政治家(せしゅうせいじか)とは、親族や親戚が政治家であることのメリットを生かして、政治家になった人。
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[編集] 概説
近代の代表民主政治は特定の一族による政治支配を避ける目的があった。しかし、世襲であることのメリットによって、政治家になりやすい傾向を浸透すると、政治家たる事を家業となる風土が生まれ、特定の一族による政治支配が懸念される。縁戚関係を強くするため、甥や婿などの親戚を養子にする場合もある。
世襲政治家には一般国民と乖離している点、著しくその資質に欠ける人物がいる点、能力のある人間が議員の子でないばかりに排除されている点などが懸念されている。このことから世襲批判もなされるが、法律で世襲候補者の立候補規制を行うと、平等権や参政権の問題から基本的人権の原則を崩すことになるため、判断は有権者に委ねられている。
一方で政治家の家庭で育つことから早くから政治に目覚め、鞄持ち・秘書等を経て優れた政治手腕を発揮する政治家もいる。
[編集] 日本
日本では概ね父や祖父をはじめとする親族が作った選挙区での地盤(支持者団体)を、そのまま継承して選挙に当選した政治家のことを指す。ただし選挙区が違う場合など、世襲で受け継ぐ地盤がなくて恩恵を受けていない場合でも、親子などの関係があれば世襲とみなすという考えもある。
世襲でよくある手法は、有力議員が次の選挙の数ヶ月前に引退を表明して、後継者として子や孫を指名するというものである。選挙が近づくまでそれを表明しないのは、対立政党や同じ党のライバルに準備をさせる期間を与えないためである。これで指名された後継者は、党の支部などから公認を得て、次の選挙を戦うことになる。後継者の指名前に世襲となる後継者を当該議員の秘書としている事例も多い。
世襲候補は親から受け継いだ後援会組織(地盤)、親議員の知名度(看板)、親の資産(鞄)の三バンが揃っており、他の新人候補と比べて有利に選挙戦に望む条件が揃っている。当選すればまた地盤固めを進め、次の選挙でより有利に戦うのに備える。
しかし、他にも公認希望者がいる場合、分裂選挙になることもある。後継者を指名する前に議員が逝去してしまった場合、分裂選挙が起こりやすい。
小泉政権下では安倍晋三自民党幹事長が自民党新人候補は公募する制度を確立し、世襲候補を自動的に擁立する仕組みに変化を与えている。それは2006年の安倍政権でも続いている。
[編集] イギリス
イギリスの貴族院では、特定の貴族は世襲によって政治家を引き継ぐことが可能であった。このことが問題視され、ブレア首相の労働党政権によって世襲議員制度の改革がなされた。