ヴイナス戦記
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『ヴイナス戦記』は、学習研究社のコミックNORAにて連載された安彦良和の漫画作品、およびこれを原作とする1989年に公開されたアニメ映画。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 概要
『アリオン』に続く安彦の漫画2作目。未来の金星を舞台にしたSF作品だが、後の安彦漫画に通じる歴史ドキュメンタリー風のタッチで描かれている。
人類が植民した金星(ヴイナス)の二大勢力の軍事衝突を背景に、「アフロディア」の戦闘バイク部隊に志願した少年ヒロの戦いを描く第一部(ヒロ編)、終戦後の「イシュタル」の覇権争いに巻き込まれた青年士官マティウの運命を描く第二部(マティウ編)から構成されている。
1989年、ヒロ編をベースにアニメ映画化された。
[編集] あらすじ
21世紀初頭。金星は小惑星との「大衝突(グレート・バンプ)」によって環境が激変し、人類の生活可能な惑星となっていた。金星の植民が開始されて半世紀余り、金星は強大な軍事力を誇る“イシュタル”と肥沃な国土に恵まれた“アフロディア”の二大自治州に別れ、対立を深めていた。
生きる意味を見いだせないままバイクゲームに興じていたアフロディアの少年ヒロは、軍の技術士官シムスにスカウトされる。やがてイシュタルの重戦車部隊がアフロディアに侵攻、戦闘バイク部隊“HOUND”の一員として出撃したヒロは、大きな歴史のうねりに呑み込まれていく。
終戦後、イシュタルでは現執政(コンスル)レーベンドルフと軍司令ワルデマルとの覇権争いが激化する。しかし野望の男ラドーの陰謀により両者共に死亡、彼と結託したレーベンドルフ未亡人グートルーネが実権を握る。陰謀に巻き込まれ左遷された親衛隊の青年士官マティウは、軍を離れて得た仲間達と共にラドーに戦いを挑む。
[編集] 主な登場人物
[編集] 第一部
- ヒロキ・セノオ - 通称ヒロ。移民四世。軍の戦闘バイク部隊“HOUND”にスカウトされる。地球へ行く事を夢見ている。
- マーゴット・ナカモト - 通称マギー。ヒロのガールフレンド。世話焼き。戦争で家族と共に難民となる。
- ミランダ・コッカー - ヒロが所属するバイクゲームチームの女リーダー。後に“HOUND”に志願。
- ロバート・イシイ - ヒロの友達。
- ヘレン・マクルーシ - テラ(地球)宇宙軍監察官。理想主義者。ヒロと関わりを持つ。
- スジャック・ギュナン - ヘレンの同僚で、巡視隊隊長。トルコ出身。
- ワット・シュティフター - 金星開発局(VDB)アフロディア支局主任。ヴイナスの将来を憂う。
- マクマード・シムス - “HOUND”指揮官。階級は少佐(後に大佐)。
- ジェフリー・カーツ - “HOUND”戦闘部隊の指揮を執る士官。階級は中尉。
- マイケル・ジョブス - “HOUND”の一員。階級は二等兵。ヒロの兄貴分。
- エイラート・アカバ - 宗教結社“メサダ”の指導者。クーデターでアフロディアの実権を握る。
- クラウス・ワルデマル - イシュタル軍司令官。次期執政の座を狙う。
- ダンクバルト・ラドー - ワルデマルの若き副官。野心家。
[編集] 第二部
- マティウ・シム・ラドム - イシュタル親衛隊准尉。ラドーの陰謀に巻き込まれ、彼に戦いを挑む。
- ルイザ・フェレオラ - 軍主計局少佐。ラドーに利用される。マティウの思い人。
- ルピカ・ラチニア - マティウの幼友達。除隊したマティウと再会し、行動を共にする。
- カール・レーベンドルフ - イシュタル現執政。政敵ワルデマルと共に暗殺される。
- グートルーネ・レーベンドルフ - 愛人ラドーと結託して夫と政敵を暗殺し、次期執政の座を得る。
- Dr.コーリー - かつて細菌兵器の開発に関わっていた細菌学者。逃亡中のマティウと関わる。
[編集] メカニック
[編集] アフロディア
- HOUND
- イシュタルの「タコ」に対抗して、アフロディア軍開発局でシムス少佐を中心に開発された新型軍用バイク。重量1トン、排気量3500cc、出力20000rpm。車体はセラミック製の装甲カウルで覆われている。武装は40mm口径の対戦車ライフル砲とミサイル2基、対人用機関砲2門。また3輪バギー型の対空砲タイプも存在する。
[編集] イシュタル
- アドミラルA-1戦車
- イシュタル軍主力戦車。アフロディア側からは「タコ」と呼ばれ恐れられている。前面で1000mmという重装甲に、160mm滑腔砲と200mmミサイル砲を同軸装備している。
[編集] アニメ版
[編集] スタッフ
- 原作・監督・キャラクターデザイン:安彦良和
- プロデューサー:倉田幸雄
- 脚本:笹本祐一、安彦良和
- 作画監督:神村幸子
- メカニック作画監督:佐野浩敏
- 作画監督補:仲盛文、川元利浩
- メカニックデザイン:小林誠、横山宏
- 美術監督:小林七郎
- 撮影監督:玉川芳行
- 音響監督:千葉耕市
- 音楽・音楽監督:久石譲
- アドバイザー:川又千秋
- アニメーション制作:九月社
- 製作・著作:ヴイナス戦記製作委員会(学習研究社、松竹、バンダイ)
[編集] キャスト
[編集] その他
当初の設定では、金星は小惑星との「大衝突(グレート・バンプ)」により自転と公転の周期が等しくなり、(地球の月の様に)太陽に常に同じ面を向けているため見かけ上昼夜が変わらないという事になっていた。しかし後に読者の指摘で、金星は自転と公転の向きが逆であるためにこうした現象が起こり得ない事が判明、第二部とアニメ版では、非常に長い周期で昼夜が訪れる設定に変更されている。