リング禍
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リング禍(りんぐか)とは、おもにボクシングなど格闘技の試合において競技者が深刻な負傷をしたり、死亡した場合などを指す用語。ボクシングなどの試合では、必ずしも負けた側がリング禍に至るとも限らず、試合の勝者がリング禍に至る場合もある。
試合中に直接的な原因がわかる場合もあれば、過去受けたダメージの蓄積など内在的な理由が大きい場合もあり、リング禍の形態は様々である。
試合以外でも、スパーリングなどが原因で練習中、練習後に死亡する場合なども広義においてはリング禍の一種と言える。
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[編集] ボクシングにおけるリング禍
ボクシングは相手の頭部を狙って殴る競技であるが、頭部に衝撃が加わることにより殴られた者が脳内出血で死に至るリング禍が頻発している。試合中にリング禍に至る場合もあれば、KO、判定如何に関わらず試合を終えた後に意識を失い、リング禍に至る例も多い。殆どのコミッションではボクサーへ試合前後の検査を実施しているものの突発性の高いリング禍の場合、直接的な予防は困難を極める。アメリカの各州のコミッションでも、幾度と無く安全面での改革が行われているがリング禍は現在でも続いている。
現在、リング禍として報道されるものの大半は軽量級の試合で起こっており、多くの場合、リング禍へ至るまでの試合展開、過程に共通点が存在する。詳細はリング禍に対する見方にて後述。
[編集] リング禍によるボクシングへの影響
1982年11月13日、アメリカのニューヨークで行われたレイ・マンシーニと金得九のWBAライト級世界戦で 14ラウンドTKO負けとなった金得九がリング禍にあい 試合四日後に死亡した事、金得九の死から四ヶ月以内に金得九の実母と当該試合を裁いたレフェリーの リチャード・グリーネが自殺した事、それらをマスコミが大々的に報道し一連の事柄が 全米で社会的な注目を浴びた事などがWBCが世界戦を15ラウンド制から12ラウンド制に変更する契機になった。 その後、WBCに追随する形でWBA、IBFといった他の世界王座認定団体も世界戦を12ラウンド制に変更した。
[編集] リング禍に対する見方
通念的には、階級(体格、体重)とパンチの威力は比例関係にあると考えられており、階級が重くなるほどパンチのクリーンヒットがダウンや決着に繋がる割合が高くなり、逆に階級が軽くなるほどクリーンヒットの決定力は低下し、より多くのパンチを浴び続けられる事が結果的に頭部への負担を増大させる、との観点から、軽量級の試合はリング禍の危険性が高いとする見方もボクシングファンの間に存在する。
一方で、軽量級の選手数は重量級よりも多く、開催される試合の数も多い事が必然的にリング禍の割合を多く占める理由になっているだけとの見方やパンチによる頭部への影響は、打つ側と打たれる側の相対的な要素が複合する為リング禍の要因を定めるのは不可能だとする見方も多い。
いずれにせよ、今日、ボクシングの試合で死亡事故のリング禍として報道されるものの大半は軽量級の試合であり序盤でのKOでの早期の決着ではなく、中盤や終盤まで多数のパンチを頭部に浴びた続けた結果として起こっているのは事実である。
[編集] リング禍の防止
女子ボクシングの試合や一部興行の試合で行われているように1ラウンドの時間を通常の3分間よりも短い、アマチュアボクシングと同じ2分間にする事で試合時間の短縮を図り、頭部への負担を低減する試合形式もリング禍の可能性を減少させる方法のひとつである。 しかし世界的には未だラウンド2分間の試合は広く行われているとは言えず、日本ボクシングコミッションが統括する日本においても、毎年リング禍による犠牲者が絶えない中、現在もプロボクシングの公式戦は全てラウンド3分間で行われている。
最も現実的かつ確実なリング禍の防止法は、あらゆる点において選手が自主的に頭部へ負担をかける事自体を極力減らす事である。ボクサーにとっての究極的なリング禍の防止法は極力試合を、ボクシングを控える事だが、ボクシングファンはボクサーに対しより多く試合をすることを望んでおり、また、ボクサーがボクシングにおける地位を向上させるには当然、より多くの試合で勝利し評価を高めなければならない。
試合数だけでなく試合時間についても同様の構図が存在する。長い時間試合を見たいというファンの心理、及びそれを迎合する興行的観点から、興行の構成の中核にあたるような選手や人気選手が4回戦や6回戦といった短いラウンド数の試合を行う事は敬遠される。 今日、一定の経験や実績を積んだボクサーは10ラウンド制の10回戦試合を行うのが常であり人気選手同士の試合では、たとえノンタイトル戦でも12ラウンドで行われる場合もある。
このようにボクシングファンのボクシングへの向き合い方はリング禍の防止努力からは対極に位置し、そうしたボクシングファンの要望を実現する事で、プロボクシングビジネスが成り立っているのが現実である。
尚、WBAなどの世界王座認定団体では、おもに世界戦の判定でジャッジの採点による勝敗結果が不適切であると判断した場合、両選手に世界戦での再戦の指令を出す事になっているが、選手の競技努力とは無関係な、ジャッジの採点の間違いという外的な理由で最も苛酷で長い12ラウンドの試合を選手に行わせる事は、リング禍防止の観点からいえば最悪の措置といえる。
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