リニアモーターカー
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リニアモーターカー(Linear Motor Car)は、リニアモーターを用いて走行する鉄道車両。
磁気浮上式と鉄輪式がある。
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[編集] リニアモーターカー
まず、リニアモーターカーという単語そのものは、典型的な和製英語である。
リニアモーターは、部品として見た場合は、連続的に誘導体が配置された(電磁誘導式)モーターのことであるし、あるいは乗り物の名称に含める場合は、単に動力の種類を指しているに過ぎない。 もともと鉄道、特に浮上式かどうかに限定した用語ではないし、そもそもCarという言葉を鉄道に当てることは普通ない。
また、そもそもリニアとは、連続的という意味である。つまり、リニアモーターとは、古典的な回転モーターに対して、「平面状に連続的に誘導体を並べた構造の」モーターのことであり、「直線的に誘導体を並べた」という意味ではない。
例えば、普通の自動車・バスなどで、リニアモーターの誘導体を車体とホイールハブに円弧状に内蔵して、タイヤの回転力を生み出し、それにより駆動するシステムを採用すれば、それもまたリニアモーターカーである(というより、むしろ英語圏の外国人は、リニアモーターカーと聞くと、そのようなシステムを想像する)。
磁気浮上式鉄道に関しては、マグレブという固有の用語があるので、それを除けば、本来ならリニアモータートレインとでも表現すべきであろう。
[編集] 磁気浮上式リニアモーターカー
現在、JR東海が実験中の「リニアモーターカー」(ジェイアール式マグレブ)、HSST、ドイツが開発したトランスラピッドの3種がある。日本でリニアモーターカーと言えばこの磁気浮上式リニアモーターカー、特に世界最速のジェイアール式マグレブを指すことが多い。世界的には、磁気浮上式鉄道(マグレブ(MAGnetic LEVitation))と区分される。
愛・地球博の交通アクセスの一つとして日本で初めて実用化したリニモはHSSTが開発した磁気浮上式リニアモーターカーの一つである。
- 磁気浮上式のリニアモーターカーの詳細は、磁気浮上式鉄道の項目を参照
上海では世界最初の営業用高速リニアモーターカー(トランスラピッド)である上海トランスラピッドが、上海龍陽路駅-浦東国際空港駅間で2002年12月から運用されている。
[編集] 鉄輪式リニアモーターカー
大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線など、通常のレールと車輪によって走行する列車でも動力としてリニアモーターが採用されているものがある。「接地式」ともいう。目的は、次のようなものである。
- 車両断面を小型化できる。このためトンネル断面を小さくでき、建設費を削減可能。(ミニ地下鉄)
- 駆動力を車輪とレールの摩擦に頼らないため、急勾配での走行性能が高い。大都市では地下鉄路線の過密化により直線的路線空間の確保が困難になっており、急勾配・急カーブを多く持つ線形にせざるを得ないが、そういう場合に有効である。
鶴見緑地線(現:長堀鶴見緑地線)で1990年に登場した70系(この年のローレル賞受賞)を皮切りに、リニアモーターを使った車両はこのほかにも、都営地下鉄大江戸線、神戸市営地下鉄海岸線、福岡市地下鉄七隈線にも使われ、現在建設中の大阪市営地下鉄今里筋線、横浜市営地下鉄グリーンライン、仙台市営地下鉄東西線にも採用されている。
[編集] 事故
2006年9月22日(日本時刻午後5時):ドイツの磁気浮上式高速鉄道(トランスラピッド)のエムスランド実験線で試運転中のトランスラピッドが、200km/h前後と推定される速度で工事用車両と衝突、作業員2人と、トランスラピッドに乗車していた見学者ら29名の計31名が巻き込まれ、死者23名。リニアモーターカーで初めて死者が出た大事故。原因は、人為的なものと推測されている。
[編集] 火災
2006年8月11日、午後2時20分頃、上海トランスラピッドで走行中の車両から火災が発生した。龍陽路駅で乗客を全員降ろした後、車両を駅から移動させて消火にあたった。この火災で乗客に被害はなかった。