フェンシング
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フェンシング (Fencing) とは剣を用いた攻撃および防御の体系のことである。通常はヨーロッパに由来するものを指す。今日では武術あるいは近代オリンピックスポーツとしての意味で用いられる。
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[編集] 近代および伝統的フェンシング
近代フェンシングは、国際フェンシング連盟(FIE:Fédération Internationale d'Escrime)がパリに設立された1913年にまでさかのぼることができる。FIEはスポーツとしてのフェンシング、とりわけ国際試合のルールの成文化と管理を目的とした団体である。この設立に先立ち、国際試合が(特にライバル国であるフランス・イタリア間で開催されたことは特筆に価する)開催された。
今日的な視点で見ると、FIEの設立は「スポーツ的な」フェンシング-つまり、独自に決められたルールで行われる試合に勝つことを目的としたもの-と、それ以外の「伝統的な」フェンシング-護身あるいは公式の決闘の手段としての剣術を探求するもの-を決定的に分断したものであったと言える。
[編集] 武器
近代的か伝統的かを問わず、フェンシングではフルーレ、エペ、サーブルの3種の武器があり、これらがそのまま種目名となっている。これらの武器は19世紀末葉に標準となったものである。女子サーブル以外はオリンピックもしくは同水準の大会の種目となっている(女子サーブルについては2004年のオリンピックでお目見えする予定である)。また、伝統的な教育の場では、大杖やレイピア、ダガーといった歴史的なフェンシングの武器についても学ぶことがある。
フルーレにはフェンシングの基本技術が集約されているため、初心者は最初にフルーレを教えられることが多かった。また過去においてフルーレは女性が行う唯一の種目であったし、剣が軽いため子供が扱うことも容易であった。フルーレを知っていることは有益ではあるが、今日ではフルーレ以外の武器から始める事も多い。
[編集] フルーレ
現在のフルーレは18世紀における紳士の一般的な携帯武器であるレイピアが軽量化された、スモールソード用の練習剣に由来する(かつてはレイピアやロングソードフルーレも使用されていたが、これらは重量や用途の点から見るとまったく別のものであるといってよい)。フルーレは柔軟な四角いブレード(剣針)をもつ軽い剣であり、突きだけが得点となる(今日のスポーツフェンシングでは電気剣が使用されており、最低0.5N(ニュートン)以上の力を剣先に加えなければならない)。
フルーレの有効面は範囲が限定されている。これはフェンシングの練習に制限のある防具を使用していた頃の名残である。当時は顔面を突く事は危険であったため、頭部は有効面からは除外されていた。その後有効面はさらに限定されることになり、命が存在すると考えられる胴体のみが有効面となった。
[編集] エペ
現在のエペは、近代のフェンシングで用いられていた伝統的な決闘用の武器に最も近い剣である。18世紀後半に社会が大きく変化した後は剣を帯びることがなくなったため、万一の場合に決闘場に持ちこまれるエペは紛争の解決手段として発展してきた。エペは長くてまっすぐで比較的重い剣であり、三角形で曲がりにくいブレードと大きくて丸いお椀型の鍔(ガルト)を持つ。
フルーレと同様、エペも突きのみの武器である。大きい鍔をもつのは、手が体の他の部分と同様に有効面とみなされるためである。同時突きが有効であり、攻撃権(下記参照)も存在しないため、エペの試合は極端に慎重なものになる傾向がある。電気剣で有効な突きを得るためには、0.75N以上の力を剣先に加えなければならない。伝統的なフェンシングでは相手の上着を確実に捉えることができるように、剣先(ポアン)に三つ又の部品を取り付けることもあった。
[編集] サーブル
現在のサーブルは、騎兵隊が用いていたサーベルよりはるかに軽い、北部イタリアの決闘用サーベルに由来するものである。サーブルは他の武器とは異なり、切りも有効である。今日の電気審判機を用いた試合では、相手の有効面(頭部、胴体、腕)を剣先か剣身、あるいは刃の部分で触れればよい。当然ながら、伝統的なフェンシングではより厳格な規則が適用されていた。
有効面は決闘用サーベルの練習方法が元になっている。相手の足への攻撃は防御側が足を後ろに滑らせることで避けることができる。このとき、攻撃者の頭部や腕部は剥き出しになっているため、防御側の高いラインの攻撃のほうが攻撃者の低いラインの攻撃よりも先に達する(足を滑らせる古典的な例が、1790年にアンジェロが著した「Hungarian and Highland Broadsword」に記載されている)。サーブルの有効面は腰より上の上半身全てである。サーブルにもフルーレと同様に攻撃権が存在する。
[編集] 攻撃権
フルーレとサーブルにおける「攻撃権」とは、先に攻撃したほうが優先権を持つという原則のことである。簡単に言えば、もし攻撃された場合には、自分自身が突かれる可能性がある場合には相手を攻撃せずに、まず自分を守らなければならないということである。攻撃は、運が悪かった場合や、判断ミス、あるいは防護側の行動によって失敗する。パラード(相手の剣を払うこと)することにより攻撃権は防御側に移り、防御側は相手を攻撃することができる。たとえば、一方の選手が攻撃を行い、もう一方の選手がすぐに反撃して(コントルアタック)双方の攻撃が相手に突きを決めていた場合、先に攻撃した選手の攻撃が有効となり、反撃した選手は間違いを犯したと判定される。しかし、もし攻撃された選手がその攻撃をパラードした後で反撃を行った(リポスト)のであれば、この場合は反撃側に攻撃権が移ったことになり、先に攻撃した選手は防御しなければならないということになる。
現代のスポーツフェンシングにおけるフルーレとサーブルでは、両選手が一定の時間内で同時に突きを決める場合がある。この場合、主審(プレジダン)はどちらの側に攻撃権があってどちらの得点になるのかを決定しなければならない。もしそれができない場合は両者の突きは無効と宣言され、試合が再開される。
[編集] 防具
現代のフェンシングで用いられる防具は丈夫な綿かナイロンあるいはケブラーで出来ている。以下のようなものが防具に含まれる。
- 足の付け根までを覆い、足の間を通すストラップがついた、体にフィットするジャケット
- ジャケットの下に着用し、横からの剣の衝撃を二重に保護するハーフジャケット(プラストロン)
- 手および、腕部を保護するグローブ
- 膝丈のズボン(ニッカーズ)
- 膝までを覆うソックス
- クビを保護する胸当てのついたマスク
伝統的にユニフォームは白色である(マスク・メタルジャケットには色のついたものもある)。これらの防具は選手を保護する面で有用である。
[編集] 試合方法
フェンシングは互いに向き合った2人の選手により、細長い演台あるいはピストの上で行われる。現代のフェンシングでは、ピストは幅1.5mから2m、長さ14mである。両選手はピスト中央に4mの距離をおいて構え(アンガルド)の姿勢から試合を開始する。
主審は試合の進行役となる。主審は得点、またはタイムキーパーがいない場合は時間の管理、および、突きがどのような順番でなされたのかの判定を行わなければならない。主審はピストの横に位置し、試合経過を観察する。
[編集] 電気審判機
電気審判機は大きな国際および国内試合のすべて、また地方大会のほとんどで使用されている。伝統的フェンサーは電気審判機がフェンシングの技術に悪影響を与えると考えているため、伝統的なフェンシングではこういった装置は用いられない。電気審判機を用いる場合、フルーレとサーブルではさらに別の防具が必要となる。フルーレ選手は胴体から足の付け根までを覆う通電されたベスト(メタルジャケット)を着用する。サーブル選手は通電されたベスト、および袖とマスクを着用する。どちらの種目でも、選手の剣は有線で結ばれる。相手選手を突くことによって電気回路が閉じてブザーが鳴り、審判に突きが有効であったことを知らせる。審判は理論上、自由に攻撃権を監視することが可能であり、突きが有効であったかどうかを判定する副審判も不要となる。
エペでは、先端がスイッチ状になっている特別な剣を用いる(これはフルーレも同様である)。突きが記録された場合、剣の先端が押し下げられることで回路が閉じ、突きがあったことを知らせるようになっている。エペでは全身が有効面であるため、エペの選手は特別な防具をつける必要はない。しかし、(たとえば相手のつま先を突こうとして)演台を突くことが得点されないよう、演台自身がアースされる必要がある。
[編集] 現代の著名な選手及び名人
- Aldo Nadi, 1920年夏季オリンピックの金および銀メダリスト。名人としてよく知られており、古典的な教科書「On Fencing」の著者である。
- Italo Santelli, 1920年代に「ハンガリアン」スタイルでサーブルに革命を起こした名人。
- Georgio Santelli, Italoの息子であり、ニューヨークにある Santelli salle の創始者。
- Laszlo Szabo, コーチ育成の体系を作り上げたハンガリーの名人。
- Imre Vass, エペの決定的な手引書を作成した。
- Peter Westbrook, 1984年夏季オリンピックの銅メダリスト。第13回合衆国男子サーブル全国大会の優勝者であり、「Harnessing Anger」の著者でもある。
- Sharon Montplasir
- Janice Romary
- Bela Valter, ハンガリーの名人、オリンピックコーチ。
- Iris Zimmerman
- Felicia Zimmerman
- Sergei Golubitsky, 3連続世界チャンピオン
- 太田雄貴, アテネ五輪フルーレ日本代表。将来を期待される選手。
- 新井祐子, アトランタ、シドニー五輪日本代表
- 菅原智恵子, アテネ五輪日本代表
- 原田めぐみ, アテネ五輪女子エペ日本代表、2005年世界選手権ベスト16
[編集] 著名な伝統的選手および名人
- William Gaugler
- Ramon Martinez
- Sean Hayes
- Adam A. Crown
- Nick Evangelista
- Chris Umbs