ピーター・パン
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ピーター・パン (Peter Pan) とは、イギリス、スコットランドの作家ジェームス・マシュー・バリーの戯曲『ケンシントン公園のピーター・パン』、小説『ピーター・パンとウェンディ』などの主人公である架空の少年である。
現実の世界では、この架空の少年は1929年4月以来病に苦しむ子に救いの手を差しのべる。作者は「金額を決して公表しないこと」を条件に版権を、ロンドンのオーモンド大路小児病院に寄付し、これは2005年現在も続いている(後述)。
「ウェンディ」というよくみられる女性の名も、ピーター・パンの登場以前には全くといっていい程存在しない。yで終わる名であるにも関わらず、その元となった名が存在しない(yで終わる名前は殆どすべてが「通称」若しくはそれに由来し、(Maria ->Mary, Robert->Bobby ...)起源となる名が存在する)の理由により作者の創作による架空の名だったといわれている。
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[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 概要
ピーター・パンはロンドンのケンジントン公園で乳母車から落ちたところを乳母に見つけられず迷子となったことから年を取らなくなり、海賊フック船長やインディアンのタイガーリリーが住む異世界ネヴァー・ネヴァー・ランド(ネバーランド)に移り住み妖精ティンカーベルと共に冒険の日々を送る永遠の少年である。
ネバーランドにはピーターと同じように親とはぐれ年を取らなくなった子どもたち(ロストボーイ)がおり、ピーターは彼らのリーダー的な存在である。木の葉で作った緑の衣装をまとったところは、さながら子ども版「ロビンフッド」のようにも見える。しかしピーターは子供の長所と短所をデフォルメしたキャラクターとして描かれており、純粋で一途な反面、善悪やけじめの見境がなく身勝手な性格描写が顕著であり、原作者バリも本編で、そのようなピーターの態度に対して皮肉ったりたしなめたりする文章を書いていることから、決してピーターはヒーローとして描かれているのではなく、あくまでも子供の象徴として登場する。
その敵役は、海賊ジェームズ・フック船長である。フックは狡猾で頭の切れる海賊であるが、その反面合理的で紳士な人物として描かれた、矛盾する人物像となっている。 これは幾つもの顔を使い分けて世渡りをしなければならない大人の象徴として描かれた、ピーターの対極に位置するキャラクターとして登場していると言われる。
このピーターとフックの性格描写はクライマックスの戦いで顕著に現れている。フックは負けを悟ると意図的に武器を置き、ピーターを逆に挑発する。ピーターはその挑発に乗ってフックを、チクタクワニが待ちかまえる海へ蹴り落とす。フックはこれを予想しており、「丸腰の者を蹴ってとどめを刺すとはどこまでも人間としておとる奴。勝負ではおまえに負けたが、人間として俺は勝ったのだ」と笑ってワニに食われていく。 バリがピーターよりもフックに肩入れしているのが顕著である。
[編集] ディズニーのピーターパン
『ピーター・パンとウェンディ』は1953年、ディズニー社によってアニメーション映画となったほか、度々ミュージカルとしても上演されている。ディズニーアニメ版は非常に有名で、シンプルに楽しめる作品である。詳細はピーター・パン_(アニメ映画)を参照。
[編集] 世界名作劇場のピーターパン
フジテレビ系列の『ハウス世界名作劇場』で1989年1月15日から同年12月24日まで『ピーターパンの冒険』として放映された。
[編集] ホリプロのピーターパン
詳細はピーター・パン (ミュージカル)を参照。
ホリプロ制作のミュージカル『ピーターパン』は、1981年に初演が行われた。この時のピーターパン役は榊原郁恵で、その後もキャストを変えながら毎年公演されている。舞台上で空を飛ぶフライングのシーンが有名である。公演された年によっては『新ピーターパン』というタイトルになっていた。
歴代のピーターパン役は、初代の榊原郁恵に続いて、沖本富美代と沖本美智代(双子の姉妹)、相原勇、宮本裕子、笹本玲奈、中村美貴が演じている。2005年度の公演からグラビアアイドルとして知られる宮地真緒が主演する。
[編集] ピーター・パンと著作権法
原作者・バリーは1937年に死去しており、当時のイギリスの著作権・意匠及び特許法では著作権の保護期間を著作者の死後50年間と定めていたことからイギリス政府及び議会は1987年12月31日の著作権保護期間満了に前後して301条へ以下の規定を追加した。
- 本法附則第6条の規定は、ジェームズ・マシュー・バリー卿の原作による演劇「ピーター・パン」もしくはその著作物の翻案を公に実演、営利目的の出版、放送または有線番組サービスへの提供に対しその使用料の請求権を、原著作権が1987年12月31日に消滅したか如何に関わらず、ロンドン市グレート・オーモンド街の小児病院の為に被信託人へ付与する効力を有する。
この規定は事実上、本作に対して報酬請求権を永続させるものであるが法律の効力はイギリス国内及び相互主義を取っていないためバリーの著作権が本国・イギリスで消滅して以降も継続している国(アメリカ合衆国では2023年まで存続の予定)に適用対象が限定される。なお、日本では戦時加算分を含めて1998年に本作の保護期間は満了し、パブリックドメイン扱いとなっているためこの規定は適用されない。
その後、イギリスでは1995年にEU著作権指令施行のため著作権の保護期間が著作者の死後70年間に延長され、本作に対しても遡及適用されたことから2007年までの12年間は著作権が復活したがオーモンド大路小児病院財団では2007年12月31日の保護期間満了(但し、イギリス国内や一部の国における報酬請求権は前述の「301条特例」に伴い同条が廃止されない限り永続する)を目前に控えた2004年より「ピーター・パン生誕100周年記念事業」として正規の続編執筆者を公募。その結果、児童文学作家ジェラルディン・マコックランの書いた「ピーター・パン イン スカーレット」が原作と同様、一切の権利を財団に譲渡することを条件として2006年にオックスフォード大学出版局より刊行された。日本語版は同年11月30日に小学館より刊行(こだまともこ訳、ISBN 4092905343)。
[編集] 関連項目
- 『ピーター・パン』(1953年、アメリカ映画)
- 『ピーターパンの冒険』(1989年、日本のアニメーション)
- 『フック』(1991年、アメリカ映画)
- 『ピーター・パン』(2003年、アメリカ映画)
- 『ネバーランド』(2004年、アメリカ・イギリス映画。主演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット)
- 『ピーターパンのネバーランド』(2006年4月20日より、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで開催されているラグーンショー)
- ピーターパン症候群
[編集] 外部リンク
- オーモンド大路小児病院財団
- 『ケンシントン公園のピーター・パン』と『ピーター・パンとウェンディ』の日本語訳
- 「ピーター・パンと著作権法」で詳述の通り、ピーター・パンの原作は日本国においてはパブリックドメイン扱いとなる。次にリンクする日本語訳は、ウィキペディアとは関係ない第三者が、日本国内に置かれたサーバーで公開しているものである。
- ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』(ホリプロ)