ヒュッケル則
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ヒュッケル則(Hückel's rule)は、芳香族炭化水素の安定性についてエーリヒ・ヒュッケルが1931年に発見した規則で、π電子の数が(4n+2)を満たすときに芳香環が安定するというもの。
従って、環状炭化水素でヒュッケル則に従えば芳香族としての性質をもつと言ってもよい。ベンゼンやナフタレン、アヌレンのうち炭素数が4で割り切れないもの(6,10,14個...―ただし、角度ひずみのため、安定できるのは6個(ベンゼン)以外では18個([18]アヌレン)くらいである)はこの規則を満たしている。
逆に、炭素数が4の倍数のときは、共鳴安定化できないため不安定になる(反芳香族性)。例としては、シクロブタジエン([4]アヌレン)、シクロオクタテトラエン([8]アヌレン)などがあり、これらは平面構造ではなく曲がった構造をしている。
通常の分子ではヒュッケル則を満たさなくても電子がひとつ抜けたり(カチオン)、逆に入ったり(アニオン)することによってヒュッケル則を満たすものもあり、こうして発生したカチオンやアニオンなどのイオンは通常のイオンよりも安定である。この例としてはシクロペンタジエニルアニオンなどが挙げられる。
環の中に炭素の代わりに窒素や酸素・硫黄などのヘテロ元素が置換したものもヒュッケル則を満たせば芳香族性を示す。代表的な分子としては低分子量なものではピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなど、高分子量なものではポルフィリンや道路標識の青色に使われているフタロシアニンなどがあげられる。
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