パイ投げ
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パイ投げ(パイなげ)(英:Pieing)は、人間の顔面などに向かってパイを投げつけること、またはその遊び。
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[編集] 概要
パイ投げと呼ばれる行動では、パイ皿ないし紙皿にホイップクリームを大量に盛ったものを投げつけることが多い。近距離であれば顔に向かって平手気味に叩きつけるのが一般的である。スラップスティックコメディのドタバタでしばしば行われるが、政治家や有名人に対する抗議、あるいは単なる悪戯や遊び目的で行われることもある。
スラップスティックコメディにおいてパイ投げ大会は、突発的におこるものである。不意をつかれパイを投げつけられると、その人物の顔に白いクリームがたっぷり附着して、それまでのすました顔がとたんに喜劇的なものとなる。大体、その姿を見て笑っているものが、第二の標的になる。スラップスティックコメディでは、投げつけられた人間もいずこかからパイを取り出し投げ返すので、途端にパイ投げ合戦、大会に発展し、混迷を極める事態に陥る。争いが始まって、投げあう人の中には、パイを両手に持って走り回りながら投擲する対象を追いかけるものもでてくる。
実際、これを楽しむ愛好家もいる。この場合、しっかりした準備の下パイ投げをとり行う。
[編集] 使用する道具
パイ投げに於いて、使用される物はあまり多くない。
[編集] パイ
パイ投げで用いられるパイは、食用のものとは少々異なり、大抵はパイ皿に白いホイップクリームが大量に盛られている。直径は15 - 30cm程度。形状は四角形や三角形や星型などのものはあまりなく、円形が主流である。
パイ投げを撮影する際には、本物のパイを使うこともあるが、調達や見栄え、後かたづけの手間を考え、食用のホイップクリームの代わりにシェービングクリームを盛りつけてあることが多い。
使用されるパイ皿だが、安価に済ませる向きでは紙皿を利用する。ただし金属製のパイ皿は重く、人にぶつかると大変危険である。陶器製のパイ皿も固い上に割れるため、同じく危険である。場合によってはクレープの皮のようなものにクリームを盛る事もある。ケーキのスポンジにクリームを盛る事もあるが、こちらはややコストが掛かるため、豪勢な遊びといえよう。
シェービングクリームを使ったものは主に喜劇用で、パーティー等の余興では食べられるクリームを使う場合が多い。もちろん、腹が空いた時は手に持ったパイを食べても構わないが、競技の趣旨から言えば、顔面に投擲されたパイのクリームを舐め取ったほうがより滑稽で、適していると思われる。
なお、アツアツのピザパイはパイ投げに使うべきではない。火傷の恐れがあり大変危険なので、間違っても、これを投げてはいけない。
パイを投げる際のパイの位置関係についても注意を払う必要がある。フリスビーのように地面と水平に投げると、パイ皿の端が相手にぶつかることになり危険を伴う。そのため、接触面積の大きいパイの上面が相手にぶつかるよううまく狙いをつけて投げなければならない。
[編集] 衣服
パイ投げに参加した人間は、顔面のみならず体中にクリームが附着して服がひどく汚れてしまうので、事後のクリーニングは必須である。従って、パイ投げに臨む人間は、一張羅ではなく汚れても構わない服装をしておくべきであろう。またパイ投げは屋外でやるほうが後始末が楽だが、屋内で行う場合は、汚れに弱い調度品は適切なカバー等が必要であろう。また飛来物で破壊される危険性のある物品は、予め室内から出しておく事が奨められる。
だが、スラップスティック性という面では、正装であるほど・澄ました格好をしているほどに喜劇性が向上する。このため洗濯しやすい(汚れの落ちやすい)化学繊維製の燕尾服やドレスといった、普通の正装では見られない専用の着衣もあるもようで、バブル景気の日本ではイベント向けにパイクリームやパイ皿とセットで乱痴気騒ぎ用にレンタルする業者がいたとする話も聞かれる。
相互に投げ合って楽しむ場合には、あらかじめ汚れても構わない配慮が徹底しやすいが、特定個人を揶揄・批判したりする場合に、事前の打ち合わせ無しにこれらパイを投擲した場合には、標的と成る人物の着ている衣服を場合によっては弁償させられる場合がある。少なくとも着ている服のクリーニング代を請求される覚悟も無く投げ付けてはいけない。
一方で、あらかじめクリーニング代金を封筒に入れて用意してから、パイを投擲する場合がある。これらでは事前ないし事後にこの封筒を手渡す事で、ジョークであるので許して欲しいという意図が伝えやすい。だが抗議の意図を込めて・ないし愉快犯として投擲する場合は、クリーニング代金を考慮せずにぶつける人もいる。例:1998年2月、被害者ビル・ゲイツ、2000年8月、被害者ジャン・クレティエン。
[編集] 起源
1914年、サイレント映画監督マック・セネット(Mack Sennett)が「キーストーン・コップス(Keystone Kops)」シリーズの映画でパイを投げさせたのが始まりである。その後パイ投げはエスカレートし、1927年のローレル&ハーディ(Laurel & Hardy)による映画「The Battle of the Centuries」では、1,000個のパイが投げられたと伝えられる。パイ投げはマルクス兄弟(Marx Brothers)や3バカ大将(Three Stooges)らのスラップスティックコメディの定番ネタであった。
[編集] 日本におけるパイ投げ
1970年 - 1980年代にテレビの娯楽番組(日本テレビ系「元祖!どっきりカメラ」やフジテレビ系「ドリフ大爆笑」など)で折に触れてスラップスティックコメディの一環として披露し、視聴者の笑いを誘っていたが、PTA、保護者、良識人、識者からは食い物を粗末に扱う行為であると指弾されるなど、専ら非難の対象となった。欧米諸国では競技・遊びの一つとして認識されていること、また、パイ投げに用いられているのはシェービングクリームである事などは敢えて報道される事はなかった。これは、同じく食品を食用以外の行為に用いるビールかけやシャンパンかけに対する態度とは、対照をなす。
以前はテレビ以外でも、結婚披露宴の余興や学園祭の模擬店等のイベント事でパイ投げがよく行われた。 またバブル期には、ぶつけられ役になる人間をパーティー会場に派遣するサービスも見受けられた。 一般では、ぶつけられ役になるのはほとんど男性で女性にパイをぶつけるのはほとんど皆無であった。
1990年代より以後パイ投げは影をひそめ、娯楽番組の中で見られる事も殆ど無くなった。 2000年代になると「ハロー!モーニング。」で松浦亜弥のコンサートなどのスタッフが誰かが誕生日を迎えたときにパイ投げをする恒例行事があると話した。
[編集] 関連項目
- キネ旬パイ投げ事件