バキュームフォーム
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バキュームフォームは、直訳すると「真空成型」となる。プラスチックや塩化ビニールの薄い樹脂板を熱して軟化させ、木などで出来た元型に密着させて成型する手法である。
バキュームフォームを行うための機材は、樹脂板を熱するヒーター、樹脂板をセットする枠、元型を置く台、空気を吸引するための真空ポンプから成る。元型を置く台には無数の小穴が空いており、その下に真空ポンプから導かれた吸引ダクトが装着されている。まず、枠に樹脂板をセットし、ヒーターをかぶせて熱する。樹脂板が軟化したらヒーターを離し、元型を乗せた台の上に枠をかぶせ、真空ポンプを作動させて枠と台の間の空気を抜き、元型に吸着させる。樹脂板が冷えて再び硬化したら元型からはがす。こうして元型と同じ凹凸がついた樹脂板が出来上がる(玉子のパックや、縁日のお面を想像するとどのようなものか解りやすい)。
模型分野では、主に欧米の小規模な模型工房が、プラモデルとして商品化されないマイナーな飛行機などのキットを作る事に利用した。例えば飛行機なら、胴体の右側、左側、翼の上面、下面の元型を作り、それをバキュームフォームする事で、キットがひとつ出来上がる。ただし、原理上、表面に細かい凹凸のあるものは再現しにくく、また、成型品自体は単に凹凸のついた板に過ぎないので、うまく切り抜き、隙間や段差なく貼り合わせるには相当の技量を要する。また、細い棒状の部品も作りにくく、そういった部分は自作する事を要求される。日本では、ガレージキットの創生期にこの手法で作られたものがあった。真空ポンプを用いずに、軟化させた樹脂板を元型に押しつけるだけで成型する手法は「ヒートプレス」と呼ばれ、バキュームフォームとは区別されている。