ノーウィッチのジュリアン
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ノーウィッチのジュリアン(Julian of Norwich ,1342年11月8日?-1413年?)はイギリスの神学者。キリスト教神秘主義の系統に属し、幻視にもとづいて書かれた『神の愛の十六の啓示』で知られる。聖公会の聖人。
[編集] 概説
彼女の生涯についてはほとんどわからない。名前すらも正確でなく、ジュリアンという名前は彼女が観想生活を送っていたノーウィッチのジュリアン教会に由来している。30歳のとき、大病を患って死の床にあったとき、一連の幻視(ヴィジョン)を見たという。二十年たって彼女はこのヴィジョンをまとめて著作にし、『神の愛の十六の啓示』(1393年ごろ)とした。この本は史上、女性の手で英語で書かれた最初の本であるといわれる。
彼女の神学は非常に前向きで、義務と法でなく喜びと共感による神の愛を説く。ジュリアンにとって苦しみは罰ではなく、神へ近づく道であった。これは疫病を神の罰と考えるような同時代の思想からはかけはなれた発想であった。彼女は 万人救済論者の先駆であるともいわれる。