ネルソン級戦艦
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ネルソン級戦艦( - きゅうせんかん、Nelson class Battleship)とはワシントン海軍軍縮会議の結果、イギリス海軍が建造した戦艦の艦級。
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[編集] 概要
ワシントン海軍軍縮条約(以下条約)では、建造中もしくは建造予定の艦は全て破棄されることになっていた。しかし、日本が陸奥の竣工を主張したため、それを認める代わりに建造が認められた艦であり、条約期間中新造された唯一の戦艦である。同型艦は2隻で、1番艦ネルソンは1927年に竣工した。
なお、本級は英国が建造した唯一の「16インチ砲」「三連装砲搭」搭載の戦艦である。
[編集] 艦形
本級は、条約締結前に計画されていたG3級戦艦を基本とし、条約制限ギリギリの基準排水量35,000トンの16インチ砲搭載戦艦として計画された。
しかし、G3級がポストユトランド型戦艦として、攻撃力・防御力・速力を重視して計画されたのに対し、本級は条約の制約によってその全てを求めることはできなかった。そのため、本級は攻撃力を重視し、防御力・速力は当時の標準として建造されることとなる。
ちなみに、日本は速力を重視し防御力を下げ、アメリカは防御力を重視し他を標準とした設計となっている。
[編集] 船体
艦体は弩級艦として初の水平甲板型を採用した。ほぼ垂直に切り立った艦首から真正面方向へ仰角をかけずに斉射できるようにする為にシアは設けられず、三連装16インチ砲三基を装備してる。この主砲の前方集中配置は世界の海軍の注目を集め新造艦建造時に検討されることとなるが、後述する弊害が発生するため、この配置を積極的に採用したのはフランス海軍のみとなった。
艦橋・機関区スペースは主砲塔が艦前部から中央部に集中した為に艦尾部に集中配置されることとなり、煤煙により測距・見張作業が困難になったばかりか、前弩級戦艦並の速力と後方に配備された艦橋のため繰艦も難しく、歴代艦長から「英国海軍は今後ネルソン級を模範とした艦形を採用すべきでない」と苦情が出るほどであった。そのため、艦隊行動の際に港湾に入港するときには最後にまわされ、出港時には衝突の危険がある船は避難する必要があった。
[編集] 主砲塔配置
1・3番主砲塔を同じ高さに置き、その間に2番主砲塔を一段高所に、しかも全門前向きに置いた。三連装砲塔3基を全て背負い式にしていないのは背負い式にした場合、3番主砲塔が最も高所にきてしまうためである。それ自体が重心の上昇を招く上に、その砲塔の影響を受けないように視界を確保するために各艦橋をより高所に設けねばならなくなり、これは更なる重心の上昇を招く。重心の上昇は荒天時の横揺れの悪化や左右主砲斉射時のショックによる動揺悪化に繋がる為、この配置になったと言われる。
しかし、訓練時に主砲を後方に向けて全門発砲した所、爆風で艦橋のガラスが割れる事態が発生した。そのため後方射撃時には3番主砲は使用しないことになり、砲撃力は2/3に減少することとなった。
[編集] データ
[編集] 竣工時
- 水線長:214.5m
- 全長:216.5m
- 全幅:32m
- 吃水:10.0m
- 基準排水量:33,313トン
- 常備排水量:34,000トン
- 満載排水量:38,000トン
- 兵装:45口径16インチ3連装砲3基、50口径15.2 cm連装砲6基、12cm単装高角砲6基、ポンポン砲8基、62.2 cm水中魚雷発射管2基
- 機関:重油混焼缶8基、タービン2基2軸推進
- 最大出力:45,000hp
- 航続性能:16ノット/7,500海里
- 最大速力:23.0ノット
- 装甲値
- 舷側装甲:356mm(傾斜角18~22度)、甲板装甲:159mm、主砲塔装甲:406mm、パーペット部:381mm、司令塔:355mm(いずれも最大値)
- 乗員1,314名
[編集] 同型艦
- ネルソン
- ロドネイ