ニューヨーク・ニューヨーク (漫画)
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『ニューヨーク・ニューヨーク』は羅川真里茂による少女漫画作品。白泉社より刊行されている隔週誌「花とゆめ」に1995年19号から1998年14号まで時折休載しながらも連載された。
[編集] 概要
作者の羅川真里茂はそれまでコメディ色の強い作品を書く「花とゆめ」の看板作家だったが、この作品では一変してゲイをテーマにしたシリアスな話を一貫して書いている。世間一般に流通しているようなボーイズラブ的な内容ではなく、ゲイである事を隠して生活をする難しさやそれに伴うジレンマ、ゲイへの偏見や弾圧、肉親への罪悪感、更にはエイズ (HIV) の問題までと極めて深刻なテーマを多岐に渡って扱い、少女漫画誌に連載されていた作品ながら幅広い層からの支持を獲得した伝説的な作品として知られている。
[編集] ストーリー
- ニューヨーク州クイーンズで警官を勤めるケイン・ウォーカーはゲイだった。普段はヘテロ(異性愛者)を演じているが、そんな生活に疲れ、渇きを潤すためにゲイ・ネイバフッズ(ゲイ地域)に脚を運ぶ生活を続けていた。特定の恋人は作らず、ゲイバーで気に入った相手を引っ掛けては一夜だけの関係を楽しむ事にしていた。
- ある晩、ゲイバーに好みの金髪碧眼であるメル・フレデリクスが訪る。お互い一目で相手を気に入った2人は、ケインのアパートで飲み直すことにし、そこでケインは自分の性の初体験は女性である事やゲイだと気付いた事、メルは恋人と別れ手首を切って自殺未遂した事を話した。その晩2人はセックス無しで夜を共にし、翌朝まだ眠っているケインを置いてメルは玄関の鍵をポストに入れ、アパートを後にした。メルが出て行った直後に目を覚ましたケインが慌ててアパートの窓から通りを見下ろすと、メルは笑顔で手を振って去って行くところだった。住所も電話番号も聞かずもったいないことをした、と呟いてうなだれるケイン。
- その夜、再びマンハッタンに出てメルはいないかと探すケイン。メルと同じように金髪の男性を自分のアパートに連れ帰ると階段でメルとすれ違った。アパートの玄関のドアにはメルからの伝言が書かれた紙が挟まれ、そこにはメルの住所と電話番号、仕事が休みの日が書かれていた。
- 翌日、メルが部屋にいると巡回中のケインが警官の制服で現れ、明日非番だと告げる。翌日、ケインのアパートをメルが訪れ、ケインは肉体的にも精神的にも今迄で一番満たされたセックスをした。以後、2人は時に苦難に見舞われながらも良好な関係を築いていく。やがてケインは、ついに両親に自分がゲイである事を打ち明け、恋人としてメルを紹介することに決める。
- ある時、ケインはメルのかつての恋人ジョシュア・ブロンソンと知り合う。ジョシュアはメルの過酷な半生を語った……。
[編集] 登場人物
- ケイン・ウォーカー
- ニューヨーク市警所属の警官。25歳。出身はマサチューセッツ州ミドルセックス、ニュートン。家族構成は両親・ケインのみ。後にメルと養子縁組をし、事実上夫婦同然の関係を作った。
- メル・フレデリクス
- コーヒーショップのウェイター。23歳。出身はニューヨークアッパーマンハッタンハーレムの近くで生まれ育った。母の死後、血縁関係の無い叔母夫婦に育てられたが高校在学中に家出したため事実上天涯孤独の身である。後にケインと養子縁組をした(マサチューセッツ・ニューヨーク双方の州に同性婚を認める法律が無いため)。
- ダニエル・ハワード
- ケインの元同僚。ヘロインの密輸にかかわり、たまたまそこに居合わせたメルを強姦。口封じのためメルを殺そうとするが、警官に射殺される。ケインと同じく隠れゲイでケインに好意を抱いていた。
- ブライアン・バーグ
- ケインの上司の巡査部長。古いタイプの人間だが、ケインとメルの関係に理解を示し2人の結婚式にも参列する。
- ジョシュア・ブロンソン
- メルの元恋人。メルが自殺未遂するきっかけを作った。モデルでバイセクシュアル、気に入った相手とは誰とでも寝る事から、メルとは口論が絶えなかった。
- J・B
- メルが勤めるバーのオーナー。ゲイ。ゲイが集まる店であるため、メルにとっては居心地が良いがケインは当初反対した。本名は不明。
- ジョージ・ウォーカー
- ケインの父親。高校教師。かつて教え子にゲイがいた事から、同性愛に深い理解を示し、メルの存在も難なく受け入れた。同性愛者の集まりにも時折顔を出している。
- エイダ・ウォーカー
- ケインの母親。2度流産し、もう子供は難しいと診断された後にケインを出産したため、ケインを溺愛している。ケインがマサチューセッツではなくニューヨークの大学を選んだ時も号泣した。それまでの人生の中で同性愛者と接する機会が無かった事や敬虔なクリスチャンである事からケインとメルがゲイの関係である事に深い嫌悪感を示したが、親友シャーリーや夫ジョージからの話を聞くうちに態度が軟化し、最終的には2人の関係を受け入れた。
- デイビス・オマッティ
- ケインの高校時代の友人。ケインからゲイであるとのカミングアウトを受けた時はあからさまに嫌悪感を示したが、後に軟化し関係が修復された(と推測されるが、作中では言及されていない)。
- シャーリー・ロウ
- エイダの高校時代からの親友。ジョージと同じく、最初から同性愛に深い理解を示している。シャーリーとエイダの高校時代の同級生ヘザーがレズビアンであった事をエイダに伝えた。
- ゴーシュ・ストーンマン
- ケインの同僚。ゲイバーで顔を合わせた事からお互いにゲイだと悟ったが、暗黙の了解としてお互いに何も言わない関係を作った。既婚者で娘が一人いる。作中、同性愛の関係からHIVに感染し死亡。
- ベイカー
- ケインが所属する警察署の署長。
- マチルダ・バーグ
- ブライアンの妻。夫と共にケインとメルの結婚式に参列。
- ジョーイ・クライン
- テッドと偽名を使いロベルトの下でバンガローの管理をしている連続殺人鬼。金髪碧眼の男女のみを狙って誘拐し監禁、強姦後に拷問して殺害している。作中での犠牲者は8人となっている。ルナに射殺される。
- ルナ・ピッツバーグ
- FBI捜査官。ケインにジョーイ・クライン連続殺人事件への参加を要請。ジョーイの腹違いの姉。後にFBIを退職した後、ジョーイの物語を書いてその作品は映画化もされた。
- エリック(・ピッツバーグ?)
- ジョーイの腹違いの弟。冷淡な家族の中で唯一ジョーイに暖かく接した。後にジョーイと共に暮らすが、意見と価値観の相違を理由に別離した後に死亡する。画家志望だった。別離したとはいえエリックの死亡直後ジョーイが最初の犯行を犯した事から、お互いに連絡を取り合っていたものと推測されるが作中では不明。
- トム・クライン
- ジョーイ・エリック・ルナの父親。ギャンブルが好きで酒癖が酷かった。離婚後ジョーイと暮らすが、後にジョーイに殺害される。
- ロベルト・ティーノ
- ジョーイにバンガローの管理を任せている大企業の社長。イタリア系。
- ジェシカ・ランガー
- ジョーイに殺害された被害者。ロベルトの愛人で高級娼婦。
- エドモンド・グレイ
- ジョーイに殺害された被害者。
- モーガン
- FBIニューヨーク支局の捜査官。ジョーイに殺害される。
- グレン
- FBIニューヨーク支局の捜査官。ジョーイに殺害される。
- エミリ・グレイ
- エドモンド・グレイの妻。妊娠中。
- ウィズナー
- ジェシカ・ランガーの検死を担当した検死医。
- ジョーンズ
- ケインの同僚で、ケインがゲイである事が発覚した後露骨に嫌悪感を示し、ケインのロッカーに侮辱的な落書きをする・人前でなじる等悪質な嫌がらせを繰り返し、作中ケインに拳で殴られた(謹慎・警告等の処罰があったのかどうかは不明)。
- エリカ・ウォーカー
- 養護施設にいた孤児。母親が麻薬中毒で子供を育てられないため養護施設に預けられた。ケインとメルの養子になった。
- マシュー・ライアン(マット)
- エリカの結婚相手。記者志望だったが最終的にはフリーランスライターになった。エリカと結婚後ケインとメルの物語『ニューヨーク・ニューヨーク』を書き、それはゲイシーンの名作の一つとなって長い間書店のショーウィンドに飾られる事になった。
- エミリ
- エリカの娘でケインの孫。
- メル
- エリカの孫でケインの曾孫。