ニトロン
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ニトロン(またはナイトロンとも。英:nitrone)とは、有機化学において RR'C=N(→O)R'' または RR'C=N+(−O−)R'' の共鳴構造で表される官能基(ニトロン基)、またはニトロン基を含む化合物群のこと。イミンから誘導されるN-オキシドにあたる。
ニトロンは 1,3-双極子付加反応の基質として、不飽和化合物と[2+3]-環化付加反応を起こす。例えば、アルケンに 1,3-付加してイソオキサゾリジン環を与える[1]。この反応には不斉反応も知られる[2]。
1972年にキヌガサマナブと橋本静信は、ニトロンが銅(I)アセチリドと環化付加していったんジヒドロイソオキサゾール環を生成した後、転位反応により β-ラクタムへと変わる反応を報告した[3]。このように銅化合物を媒介として、ニトロンと末端アセチレンの付加から始まる β-ラクタムの合成法はキヌガサ反応 (Kinugasa reaction) と呼ばれている。
キヌガサ反応の応用例を示す[4]。
この反応の最初の段階は、系中で発生した銅アセチリドとニトロンとの分子内付加環化で、続く転位反応により生成物が得られる。
[編集] 参考文献
- ↑ (総説)Torssell, K. B. G. Nitrile Oxides, Nitrones, and Nitronates in Organic Synthesis; VCH: Weinheim, 1988.
- ↑ (総説)Gothelf, K. V.; Jørgensen, K. A. Chem. Rev. 1998, 98, 863. DOI: 10.1021/cr970324e
- ↑ Kinugasa, M.; Hashimoto, S. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1972, 466-467. DOI: 10.1039/C39720000466
- ↑ Pal, R.; Basak, A. Chem. Commun. 2006, 2992-2994. DOI: 10.1039/b605743h