ドーム兄弟

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ドーム兄弟作の花器
1900年頃作

ドーム兄弟(Daum Frères)は、19世紀～20世紀のフランスのガラス工芸家。兄オーギュスト（Auguste Daum,1853－1909）と弟アントナン（Antonin Daum,1864－1930）の2人。ガラス工芸メーカーのオーナー一族として「ドーム兄弟」の呼称が定着しており、工房名にもDaum Frères を付していたので、本項でも「ドーム兄弟」と称することとする。

[編集] 生涯

オーギュストとアントナンのドーム兄弟は、フランス、ロレーヌ地方のビッチの出身である。普仏戦争終了後の1872年、ドーム家はプロイセンの占領を避けてナンシーへ移住した（アルザス、ロレーヌの割譲後もナンシーはフランス領であった）。兄弟の父、ジャン・ドーム（1825－1885）はガラス工場の経営者であったがオーギュストは1878年頃から、アントナンは1887年から、それぞれ父のガラス工場の仕事を手伝っている。父親のジャンが経営した工場はもっぱら実用食器などを製造するメーカーであった。1889年のパリ万国博覧会に、ドーム工房はテーブルウェアなどを出品した。1891年に、新たに装飾工芸ガラスを制作する部門を設置し、アール・ヌーヴォースタイルのガラスを発表するようになった。ドーム工房のガラス器は1894年、ナンシーおよびリヨンの博覧会で金賞を受賞。1897年のブリュッセルの万国博覧会でも金賞を取り、この年、オーギュストにはレジオン・ドヌール勲章が授与されている。さらに、1900年のパリ万国博覧会でも大賞を取り、この年アントナンにもレジオン・ドヌール勲章が授与された。1901年にエコール・ド・ナンシー（ナンシー派）が結成されると、アントナンは副会長に推されている。オーギュストの没後、1914年には第一次世界大戦の影響でドーム工房は操業を停止したが、1919年に再開。1920年代はアール・デコのスタイルで、その後は透明クリスタルのガラス置物などの生産で伝統を受け継いでいる。近年では、一時、ドーム社に在籍したアール・デコ時代のパート・ド・ヴェール作家、ワルターのコピー商品なども生産しているが、往年のレベルには達していない。

[編集] 作品

ドーム兄弟のガラス器は、植物文様を多用した、典型的なアール・ヌーヴォー様式で、作風はエミール・ガレの影響を強く受けている。ガレ作品が器形、文様、色使いなど大胆奇抜なものが目立つのに対し、ドームの作品は全体に穏やかで落ち着いた雰囲気のものが多い。特にエナメル彩色で風景模様を表わした花器には、日本の山水画を思わせるデザインのものも多く、ガレ同様にジャポニスム（日本趣味）の影響が明らかである。1910年前後には色ガラスの粉をまぶしつける技法「ヴィトリフィカシオン」を多用して、複雑な色彩が混ざり合った作品を多く製造した。また工芸デザイナーのルイ・マジョレル（1859－1926）がデザインした金具に自社製のガラスのシェードをつけたランプも製造した。

ドーム兄弟に特徴的な技法としてはアンテルカレール、ヴィトリフィカシオンなどがある。アンテルカレールは、ガラス素地に絵模様を描いて、さらにガラスをかぶせる技術で、模様を重ねるダブルイメージ的な効果が出る。この技法はドーム兄弟が1899年に特許を取得したものである。また被せガラスの技術を簡素化したヴィトリフィカシオンは粉末状にした色ガラスをまぶして再加熱し、素地になじませるもので、ガラスの肌に多くの色を発色させることが容易にできる。