ドライバー (工具)
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ドライバーとは、スクリュードライバー (Screwdriver) の略語で、ねじ回し(ねじまわし)ともいう。ねじを回してねじを固定する、またははずすための工具である。大きいもの、小さいもの、長いものなど、さまざまな種類がある。扱うねじのサイズに合ったドライバーを使わないとねじの溝あるいはドライバーの先端を傷めることがあるので注意が必要である。
[編集] 種類(先端による区分)
- プラスドライバー(+)
- プラス溝のあるねじを回すのに使われる。フィリップス社により開発されたため、フィリップス型ドライバーとも呼ばれる。ねじの溝にドライバーの先端を合わせると自然にかみ合うので、作業性に優れる。先端を着磁したマグネットドライバーでは、かみ合った状態のまま逆さにしてもねじが落ちないので、より作業性が良くなる。またマイナスドライバーに比べ大きい力に耐えられる特長があるが、かたく締まったねじを回す際にドライバーの先が浮き上がるので、強く押しつけながら回す必要がある。
- マイナスドライバー(-)
- マイナス溝のあるねじを回すのに使われる。もっともシンプルな形状であり、古くから使われているが、プラスドライバーに比べると作業性に劣る。一方で、叩いたりこじったりとたがねの代用品として使用されることが多いが、本来の使用法ではないため危険である。
- なお日本では、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(ピッキング防止法)の「指定侵入工具」に指定されており、業務その他正当な理由による場合を除いて、隠して携帯すると処罰されることとなった。よって、マイナスドライバーを屋外等で持ち歩く事は、不必要な場合には避けるのは勿論の事、通常の正当な目的であっても理由を説明できるようにしておく必要がある。
- 六角ドライバー
- 六角穴付きのねじに使用する。トルクが必要な場合、六角レンチが利用される。
- トルクスドライバー
- 六角穴付きねじを改良し、より大きなトルク(締め付け力)に耐えられるよう穴の側壁が曲面からなるねじに対応したドライバー、あまり一般的ではない為、簡単に開けられては困るような場所に使用される場合もある(より困難にするために、中央部に突起がある、「いじり止めトルクス」も使用される)。
- 三角ドライバー(ねじの頭が3つ又のものに使用)
- ボックスドライバー(ナットドライバー)
- 先端がソケット形状になっており、ボルトやナットを回すのに使われる。構造上大きなトルクをかけることができないため、適用は小サイズのボルトやナットに限られるが、早回しに向いている。
- ドライバーハンドル
- 先端が差込角のオス(主に1/4")になっており、ソケットを接続して使用できる。後端に差込角のメスが設けられたものは、エクステンションバーとしても使用できる。
[編集] 種類(機能面)
- 精密ドライバー
- 時計ドライバーともいい、微小なねじを回すことに用いる。柄の端に空回りする円盤状の支えが設けられていて、手のひらで押すことでドライバーをねじに対して垂直に保つことが容易になっている。これにより指は「掴む」「押す」という動作から開放され回す動作に専念でき、回転力を微妙に加減できる。人差し指でドライバー後端を押さえ、親指と中指で回す使い方もされる。
- スタビードライバー
- 柄を含めた全長が短い。狭い所に使用する。
- フレキシブルドライバー
- 先端と柄の間が柔軟性のあるスパイラル構造になっている。狭くて手が入らないような所に使用する。
- 電工ドライバー
- 電気工事用に柄の部分が絶縁加工されている。
- 検電ドライバー
- 柄の内部にネオンランプなどを内蔵しており、先端を電気配線に触れ、柄の後ろの金属部を手で触れると、人体を通じて流れた微少電流でランプが点灯して、配線が活電部であることが確認できる。先端を直接手で触れると当然感電の危険があるので注意が必要である。
- ラチェットドライバー
- 一方向のみに回転するような爪とギアを組み込んでいて、往復動作させるだけで回転できるようになっている。回転方向は切り替えられるものが多い。
- トルクドライバー
- ねじの締結トルクを適正に管理することが出来るように、設定以上のトルクを掛けると空回りするような構造になっている。
- インパクトドライバー
- 回転に一定の負荷がかかると内蔵されたハンマーが回転方向に打撃を開始して瞬間的に大トルクを発生する。強い締め付けが必要なネジ、固い素材へのねじ込みなどに適する、反面微妙な力加減を必要とする作業には向かない。先端工具は目的に応じて交換可能。駆動部は正転逆転可能。動力として圧搾空気または電気が必要。
- ショックドライバー
- インパクトドライバーに含めて呼ぶこともあるが、ハンマーを内蔵しないため使用には別途ハンマーが必要となる。回そうとするネジにドライバーの先端を当てて保持し、ドライバーの後端をハンマーで打撃して使う。インパクトドライバーに比して回転トルクの加減が困難なため締付けに用いることは稀であり、主に錆びなどで固着したねじを緩めるために使用される。打撃の衝撃荷重の大部分が先端の押し付けに作用し、一部が回転エネルギーに変換されてネジを回す。カムアウト等ドライバー先端が逃げてネジを破壊する事故が減ると同時にショックが固着したネジを回すきっかけになる。破壊寸前となったネジの緩め作業に最終手段として使用することが多い。
- 電動ドライバー
- モータにより回転するドライバー。コード式のものや、充電式のものがある。トルク管理機能を持ったものが多い。
- ドライバービット
- 軸のみで柄がついていないドライバー。専用のハンドルと組み合わせて使用される。インパクトドライバーや電動ドライバーなどは、通常ビット部分が交換可能になっている。
- コアドライバー
- 無線機器の発振コイルや中間周波トランスに使われている調整用フェライトコアを回すためのドライバー。磁界に影響を与えないように、非磁性体で作られている。
- 貫通ドライバー
- ハンマーなどで叩けるように軸が柄を貫通して後端に露出しているドライバー全般を指す。ショックドライバー同様の使い方ができる。感電事故を避ける為に電気工事には用いられない。