デュレーション
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デュレーションは債券のキャッシュ・フロー、あるいは債券にリンクしたあらゆるキャッシュ・フローで加重平均した残存年数のことである。残存n年の割引債のデュレーションはn年になり、利付債のデュレーションはn年より短くなる。 この尺度は、債券価格の関数を金利について微分したものと密接に関連している。デュレーションはあくまでも微分であり、加重平均した残存年数を求めるというのは、単にノン・コーラブル債のデュレーションを求める簡易法にすぎないという考えもある。 デュレーションは債券への投資金額が債券のキャッシュ・フローによって何年で回収できるかを示す尺度、と言われることがあるが正確ではない。
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[編集] 価格
デュレーションは債券の金利変化に対する価格感応度の指標として有用である。所与の金利変化に対して、債券価格の変化はほぼ反比例する。例えば、金利が1%上昇した場合、債券価格はどの程度下落するのかデュレーションは示す。したがって、デュレーションが7年の15年債は、金利が1%上昇した場合、およそ7%価格が低下することになる。
[編集] キャッシュ・フロー
はじめに述べたように、デュレーションは債券キャッシュフローの加重平均残存期間である。割引債ではデュレーションは ΔT = Tf − T0となる。(Tfは債券の償還時点、T0は計算開始時点)ここで、 キャッシュ・フローが存在する場合、それぞれのキャッシュフローCiのデュレーションは ΔTi = Ti − T0となる。rを債券の利回り(連続複利)とおくと、この債券の価格が求められる。
デュレーションを計算するには、キャッシュフローごとのデュレーションにウェイトをかけて総和し、債券の現在価値で割る(ウェイトの合計が1になることに注意):
したがって、債券のクーポンが高いほどデュレーションは短くなる。デュレーションは常に債券の残存より短い。またデュレーションは債券の利回りの微小変化に対する債券価格Pの変化の大きさを表している。この関係を以下に示す:
債券の金利の微小変化δrに対する価格Pの変化は、以下の関係となる。
ここから、債券の金利変化と債券価格の変化は異符号の関係であることがいえる。なお、二次項については無視する。二次項についてはコンベクシティで考慮される。
[編集] 金額デュレーション
金額デュレーション(ダラー・デュレーション)の定義は、デュレーションと債券価格(価値)の積である。金利の微小変化に対する債券価格の変化量を表す。金額デュレーションD$はVaRの計算で一般に用いられる。式で表すととなり、このときエクスポージャーのベクトルはとなる。
[編集] マコーレー・デュレーション
マコーレー・デュレーションは、この理論を最初に発表したフレデリック・マコーレーにちなんで名付けられた。これは各キャッシュフローを相対的に割り引いたものをウェイトとした加重平均残存年数である。
ここで、Cはキャッシュ・フロー、tはキャッシュ・フロー発生までの時間。
マコーレーは、単純平均した残存年数では金利変動リスクを予測するのに不適当だとして、有用となる二つの尺度を新たに考えた。 マコーレーとワイルのデュレーションは論理に忠実で、割引債の価格をディスカウント・ファクターにする。また、より現実的な形式(上述)では、債券の最終利回りからディスカウント・ファクターを算出する。コンピュータを使うことで両者は簡単に計算できるようになった。 マコーレー・デュレーションは現在でも広く使われている。
連続複利利回りの場合、 マコーレー・デュレーションは債券価格を利回りで微分した関係が当てはまる。年複利利回りの場合は、次で述べる修正デュレーションが適当である。
[編集] 修正デュレーション
年複利の場合、の関係はあてはまらない。そこで、代わりに修正デュレーション D * が使われる:
ここでrは債券の最終利回り(複利) 、nは1年あたりのキャッシュフロー発生回数。
この関係を以下に述べると、まず、
が成り立つ。ここでn=1の場合を考える。このとき債券の価値(価格)は、
である。ここでiは、計算開始時点からキャッシュ・フローCiが発生するまでの期間。デュレーションは加重平均残存期間と定義したので、
となる。Pをrについて微分すると、
となり、をかけることで、
が得られる。また、
であり、ここから以下の式が導かれる。
この関係は、rが年複利利回りのときにも成り立つ。
[編集] 内包オプションと実効デュレーション
オプションを内包する債券の場合、マコーレー・デュレーションと修正デュレーションでは金利変動に対する価格変化を正しく示しているとは言えない。プット条項付の債券を例にとって考えてみる。保有者が償還期限前にパー価格で償還させることができる100円の債券があるとする。この債券の価格は、金利がどれだけ上昇しても100円を下回ることはないと考えられる。この債券の金利変動に対する価格感応度は、同じキャッシュ・フローだがプット条項がない債券とは異なるものとなる。オプションを内包する債券は実効デュレーションを用いて分析する。実効デュレーションは金利関数における債券価格のカーブについての離散近似である。
ここでΔyは利回りの変化量、P − ΔyとP + Δyは利回りがy下降あるいは上昇したときの債券価格の変化である。
[編集] 平均デュレーション
ミューチュアル・ファンドなどが債券に投資しているファンドにおいて、債券ポートフォリオの金利変動に対する感応度は重要である。ポートフォリオにおける債券の平均デュレーションはよく報告書に記載される。ポートフォリオのデュレーションはそのポートフォリオのすべてのキャッシュ・フローの加重平均残存期間と等しい。個々の債券の最終利回りが同じであれば、そのポートフォリオの債券のデュレーションを加重平均したものと等しくなる。それ以外の場合は、債券のデュレーションの加重平均は近似値となるが、金利変動に対するポートフォリオの価値の変化を推定するのには用いられる。
[編集] デュレーションの式(閉形式)
C = 一期間当たりに支払われるクーポン(半年利払)
i = 一期間当たりの割引率(半年)
a = 購入時から次回利払までの期間
m = 償還までの利払回数
[編集] コンベクシティ
デュレーションは金利変化に対する価格変化の線形指標である。金利が変化しても、価格の変化は線形に変化せず、凸に変化する。コンベクシティ(コンベキシティ)は金利変化に対する価格感応度を曲率でみた指標である。具体的には、デュレーションが価格関数を金利について一階微分したものであるのに対して、コンベクシティは二階微分したものである。
コンベクシティは将来キャッシュフローのスプレッドと見ることもできる。デュレーションが割引された残存期間と考えられるように、コンベクシティはリターンの標準偏差を割引計算するのに用いられる。
[編集] PV01
PV01は金利の1ベーシス・ポイントの変化が現在価値に与えるインパクトである。時間を考慮するデュレーションに代わる価格感応度として用いられることがある。
[編集] 関連項目
- コンベクシティ
- イミュニゼーション
- 最終利回り