タガネソウ
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タガネソウは、楕円形の葉を持つ、スゲの類である。
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[編集] 特徴
タガネソウは、単子葉植物カヤツリグサ科スゲ属の植物である。一般にスゲ類はススキのような細長い葉を持っているが、タガネソウは、例外的に楕円形に近い葉を持つ。
地下に匍匐茎があり、横に這ってまばらな群落を作る。根出葉を一カ所から数枚つける。葉はやや立ち上がり、緑か黄緑で、質は薄く、つやはなく、縦のしわがある。基部の鞘は紅色を帯びる。
花茎は、前の年に葉があった部分から出て立ち上がり、高さは30cmほど。緑色でつやがなく、全体に無毛。花茎は稜があってなんとなく三角っぽい。小穂は上の方に数個、互いに離れてつく。小穂の基部の苞は鞘があって、葉身は小さい。
小穂は下のものほど柄があるが、真っすぐに花茎に沿う。小穂は雄雌性で、それぞれの先端部に雄花が少しつく。果胞は先端が丸く、肉厚になっている。
花茎は果実が熟すると倒れ、葉の間の地表に姿を隠す。
名前は、この類としては特に幅広い葉の形を、鏨(たがね)に見立てたものと言われる。
[編集] 生育環境
比較的乾燥したところに生え、山腹の木陰や山道の脇で見かける。日本では北海道から九州までに広く分布し、国外では北東アジアに広く分布する。
[編集] 近似種
このような姿のスゲは他にはほとんどないが、近縁種は他に二種知られている。
- ケタガネソウ:タガネソウに非常に似ているが、全体にやや小型であること、全株に毛が多く、特に葉の縁に長いものが並ぶこと、花茎先端の小穂が雄小穂であることなどから別種とされている。本州から九州と、前種よりやや南に片寄った分布を持つ。国外でも似た傾向がある。
- ササノハスゲ:葉の見かけはタガネソウに似ているが、小穂は随分異なる。小穂は雄雌性、ほぼ球形で、花茎の各節から2-3個づつ出る。近畿以西の本州と四国のみに産する。
[編集] 利用
実用的な利用価値は特にない。
ただし、タガネソウはその姿がややまとまっているので、野趣を買われて山野草として鉢植えや庭植えされることがある。特に、葉に斑入りがあるものは鑑賞価値が高い。この場合、タガネソウとケタガネソウを区別していない。
[編集] 分類
形態的に似通った上記三種と、葉は線形だが小穂の形態などが似たイワヤスゲ(四国固有)をまとめてタガネソウ節とする。あるいはタマツリスゲ節に含める。
スゲ属 Carex
- タガネソウ節 Sect. Siderostictae
- タガネソウ C. siderosticta Hance
- ケタガネソウ C. ciliatomarginata Nakai
- ササノハスゲ C. pachygyna French. et Sav.
- イワヤスゲ C. tumidula Ohwi