スウィート・ホーム (映画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『スウィート・ホーム』(SWEET HOME)は、1989年に日本で公開されたホラー映画、および同映画を元にカプコンが作成したロールプレイングゲーム。
目次 |
[編集] 映画
1989年1月21日公開 製作=伊丹プロダクション・配給=東宝
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
[編集] スウィートホームを巡る法廷闘争
映画公開後、東宝よりレンタルビデオ用のビデオテープが発売されたが、このビデオを巡って監督の黒沢が伊丹プロを提訴した。ビデオの印税が黒沢の元へ払われていないこと、ビデオ化の際、黒沢の了承なしに勝手に編集が行われていることなどが争点となったが、最高裁までもつれ込んだ裁判は黒沢が敗訴している。その後、ビデオは廃盤となり(現在でも比較的多くレンタル店に在庫がある)、この法廷闘争の影響で現在までにDVD化の動きも全く見られず、今後のソフト化も厳しいものと思われる。
[編集] ゲーム
スウィートホーム | |
---|---|
ジャンル | コンピュータRPG |
対応機種 | ファミリーコンピュータ |
開発元 | カプコン |
発売元 | カプコン |
人数 | 1人 |
メディア | 2M+64kRAMカセット |
発売日 | 1989年12月15日 |
価格 | 6500円(税抜) |
スウィートホームは、カプコンから発売されたゲームソフト。同名の映画をゲーム化したものである。CMでは「スウィートホーム The Famicom」と紹介されていた。
1989年12月15日にファミリーコンピュータ用のコンピュータRPGとして発売された。
[編集] 作品解説
呪われた屋敷「間宮邸」を訪れたTV番組の取材班は霊の怒りに触れ、館に閉じこめられてしまう。館の様々な謎を解き、罠を回避し、モンスター(霊、クリーチャー)と戦い、館の主で今は亡き「間宮一郎」の妻である「間宮夫人」の霊の怒りを静め、館を脱出するのが目的。
ゲームのシステム、ストーリー、演出、そして音楽など、何よりも第一に「怖さ」を追求したホラーゲームとしてファミコンだけでなくゲーム史上に残る名作であると評価するファンが多い作品である。
「スウィートホームのリメイクを」という声も非常に多いが、映画版「スウィートホーム」がその権利関係で非常に製作者内で揉め、訴訟にも発展しているという経緯がありそれがネックとなり再び「スウィートホーム」をテーマにしたゲームを製作することは困難と思われる。
現在企画が進行しているのかは不明だが、スウィートホームのファンがスウィートホームのWindows版のリメイクを行っていた。作者がリメイク版スウィートホームを公開することについてカプコンに問い合わせたところ、了承が取れたとのコメントが出されている。だがその返答は、ユーザー自身で企画し制作された完全オリジナルの作品については著作権侵害には当たらないためオリジナルのゲームを問い合わせた者のサイト上で宣伝するのは問題ない、というものだが、「完全オリジナル」のゲームを自分のサイトで公開するのに問題がないのは当たり前のことであり的の外れた回答とも言える。「スウィートホーム」のリメイクを「完全オリジナル」の作品とは言えないだろう。
しかしファミコン版の「スウィートホーム」は、ファミコンのグラフィックはともかくとしてストーリーや音楽など、ゲームとしてすでにほとんど改良の余地のないほど極めて完成度の高いものであり、新たなプラットフォームで開発する意義はない、とする声も多い。
後にプレイステーションで発売され大ヒットした「バイオハザード」はこの作品を土台として作られた作品であり(週刊少年マガジンに掲載されたドキュメンタリーコミック「バイオハザードを作った男たち」にその記述がある)、「バイオハザード」のスタッフには「スウィートホーム」の制作に関わった者もいる。
[編集] ストーリー
フレスコ画家である間宮一郎は多くの絵を館に遺し、この世を去った。それから30年、テレビ局の取材班である星野和夫、早川秋子、田口亮、アスカ、和夫の娘のエミの5人は間宮一郎の幻のフレスコ画の撮影のため、山中の館を訪れる。呪われていると言われている館に足を踏み入れたが、5人は間宮夫人の霊の怒りを買い、館に閉じこめられてしまう。5人は館から脱出するために館の内部へと踏み込んでいく。
[編集] 主な登場人物
プレイヤーキャラ
- 星野和夫(かずお)……プロデューサー。本作品の主人公的立場の人物。
- 早川秋子(あきこ)……ディレクター。和夫とは仕事仲間でありながらお互いに心の中で男女として意識しあっている。
- 田口亮(たぐち)……カメラマン。アスカにいろいろアプローチをかけるものの軽くあしらわれる。
- アスカ(あすか)……ナレーター。フレスコ画に詳しい専門家で、霊感の強い女性。
- 星野エミ(えみ)……和夫の娘。妻に先立たれた和夫と秋子を結びつけようと思っている。
物語上重要な登場人物
- 山村健一(やまむら)……間宮邸の付近に住む自動車工。間宮家の秘密を知る唯一の人物。
- 間宮一郎……フレスコ画家で間宮邸の主。間宮夫人が亡霊となって蘇った後、行方不明となる。
- 間宮夫人……過去に子供を不慮の事故で亡くし、自らも命を絶つが、何者かが子供の供養塔を荒らした事で亡霊となって蘇る。
そのほか、主人公に先んじて屋敷に迷い込んだ者や、かつて間宮夫妻に仕えていた使用人が間宮邸内に取り残されているが、これら屋敷内に取り残された者たちのほとんどは、主人公らが遭遇したときには既に罠や悪霊の犠牲となっている。
[編集] システム
スウィートホームではあまり他のゲームでみられないオリジナリティのあるシステムをいくつも採用している。
[編集] パーティ
プレイヤーは5人のキャラクタの中からその都度ひとり選んで行動しなければならない。パーティを組んでいてそのパーティのメンバーを選択した場合、選択したキャラがパーティの先頭に立つことになる。パーティのメンバーはシステム上最大3人までである。
[編集] アイテム
アイテムは大きく分けて三種類存在し、武器と通常アイテムは間宮邸の各所に置かれている。
- 専用アイテム
- 5人のキャラクタは、ひとりひとつずつ自分の特性を生かした専用アイテムを持っている。専用アイテムは通常のアイテムと異なり、館内の他のアイテムやパーティの別のキャラのアイテムと交換することはできない。専用アイテムには、
- 和夫の「ライター」(館内の障害物であるロープを取り除くなど)
- 秋子の「薬箱」(異常状態に陥ったキャラを治療する)
- 田口の「カメラ」(館内のフレスコ画に隠されているメッセージを読み取る)
- アスカの「掃除機」(床のガラス片など館内の様々な障害物を除去するなど)
- エミの「鍵」(「『鍵』のとびら」を開ける)
- がある。たとえば「鍵」で開けることのできるドアの前にガラス片が散らばっており障害物となっていて通れないというような場合、アスカとエミでパーティを組み、アスカの「掃除機」でガラスを取り除き、エミの「鍵」で扉を開けて進行する、というようにその都度必要なメンバーをパーティに入れ替えながら進行していくことができる。
- なお、通常アイテムの中に専用アイテムと同じ効果を持つ代用品となるアイテムがある。
- 武器
- 武器はナイフ、剣、斧、槍、鈍器、スキの六系統が存在する。各キャラクタに一つのみ装備させることができる。
- 各武器には生物系と霊体系に対するそれぞれの攻撃力が設定されており、効果が高いものほど装備するのに高いレベルが要求される。
- アイテム
- 進行を進める上で重要なものや、悪霊との戦いに役立つものまで様々な物がある。アイテムは一人につき最大2つしか持つことができないため、何を持っていくかをよく考えなくてはならない。
- アイテムによっては戦闘で使うことにより、悪霊に大きなダメージを与える効果を持つものもある。
- 通常は目に見える形で置かれているが、「形見の服」や「滑車」といった目に見えない隠しアイテム的存在のものもある。
[編集] 戦闘
間宮邸の中にはゾンビや幽霊等の悪霊・クリーチャーが多数潜んでおり、これらに遭遇すると戦闘となる。敵は必ず一体のみで登場する。戦闘になるタイミングとして、館の中を歩いているとエンカウントで現れるタイプと、銅の鎧やコウモリのように初めから目に見えていてそれに触れると戦闘になるタイプの二種類がある。
始めは1~3人で戦う事になるが、戦闘中に「よぶ」を選ぶことによって戦闘に参加していない他の仲間を応援に呼ぶ事ができる。呼ばれてから十秒以内に戦闘を行っている場所にたどり着ければ戦闘に加わることができ、5人で戦う事が可能。
戦闘での行動は味方がコマンド入力順に行動を起こした後、最後に敵が攻撃するという形になる。敵は通常攻撃以外に様々な特殊能力を持ち、戦闘終了後に毒などの異常状態にされることがあるが、異常状態は全て秋子の「薬箱」か代用品の「クッキー」で直す事ができる。
[編集] 死
スウィートホームがホラーゲームとして大きな評価を得ている要因の1つが、「一度死んだキャラは絶対に生き返ることはない」というシステムである。仲間が1人死ねば必然的に戦闘は苦しくなる。それによりさらに2人、3人と犠牲者が増えていく確率は高くなる。死んだキャラ専用のアイテムを代わりに別のキャラが持つことはできないという問題も発生するため(代用品となるアイテムは存在する)どんどん進行が困難になっていくのである。 そのため完全に進行が不可能となることもあるため「ぎぶあっぷ・あきらめる」というコマンドさえ存在する。 基本的に体力と心の力の回復はアイテムの「薬ビン」を使用する他に回復手段が無いため、限りある回復アイテムの使い時を見極めなくてはならない。
[編集] 心の力
5人のキャラクタは「こころのちから」を使用することができる。これは戦闘中においては魔法や呪文のような役割を持つ。使用することで敵に大きなダメージを与えることができる。また戦闘以外でも、物語を進行させるために「こころのちから」を使用しなければならないイベントも散りばめられている。
[編集] その他事項
- このゲームは防御力を上昇させる防具的役割のアイテムは存在せず、各キャラクタそれぞれに設定されている固定値のみとなっている。設定されている防御力は田口が全メンバーの中で最も高く、エミが一番低いとされている。
- 館内を歩いていると、突然椅子やシャンデリア等がポルターガイスト現象によって襲い掛かってくるイベントが発生することがあり、回避行動の選択をする必要がある。行動の選択が早ければ早いほど回避できる確率は高くなる。避けられなかった時は先頭のキャラクタがダメージを受けてしまう。
[編集] スウィートホームの謎
ファミコン版のスウィートホームは、前述の通り映画「スウィートホーム」をファミコン化したものである。映画版では明らかにされなかった謎を解くためのヒントがファミコン版スウィートホームの中に散りばめられているのは面白いところである。
今でもスウィートホームのファンの間では「山村健一」の正体は何者だったのかという議論が行われることもあり、代表的な説には「彼が間宮一郎説、間宮邸に5人より先に仲間と侵入したが一人だけ仲間を見捨てて逃げ帰った説、彼は間宮邸の従者だった説」などがある。
また、クリアには絶対必要ではないが見えないため通常のプレイではその存在に気付くことがほとんどないような隠しアイテムもある。「こころのちから」を回復する、間宮夫人の「かたみのふく」が有名だが、他にも様々ある。中には現在でもその使用方法が解明されていないものさえある。
ちなみに間宮邸の所在地の設定については明かではないが、映画の冒頭に和夫を除く4人が明らかに砂丘と想われる場所に集合していること、さらに和夫が間宮邸に入る許可を取ろうとしているシーンで役所に担当の役人が登場するやいなやおもむろに靴を脱ぎ、中の砂を捨てるシーンがあることは間宮邸の場所についての重要なヒントになるだろう。
[編集] 関連商品
- ゲームブック
タイトルは「スウィートホーム 魔性の棲む館」(-ましょうのすむやかた)。尾崎克之著。双葉社のファミコン冒険ゲームブックシリーズとして発売。
- サウンドトラック
映画版とファミコン版の2種類が存在する。映画版のサウンドトラックはインターネットオークションなどで現在も頻繁に売買が行われているが、ファミコン版は希少価値があり、1万円以上の価格が付くこともある。
ファミコン版サウンドトラックはファミコンの音源をCD化したものではないが、エンディング曲が完全に収録されているなど非常に完成度の高いものである。
- 攻略本(双葉社)
[編集] 外部リンク
- 建築家・間宮一郎個人サイト