グレイト・ロックンロール・スウィンドル
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グレイト・ロックンロール・スウィンドル(The Great Rock 'n' Roll Swindle)は、パンク・ロックバンド、セックス・ピストルズのドキュメンタリー映画。ジュリアン・テンプル監督、1978年公開。
[編集] 概要
ピストルズ・ヒストリーではあるものの実際は、マネージャーのマルコム・マクラーレンが語り手となって、いかにして、ロックンロール・インダストリーのトップの座を騙し取ったかが得々と語られる内容となっている。公開当時ピストルズの生の演奏を見られなかったファンたちが大いに期待して見たものの、実際の演奏シーンは思ったほど多くなく、そのかわりにマルコムの「どれだけピストルズがインチキでスウィンドル(詐欺)であったか」という能書きを厭というほど見せつけられこととなった。 しかし、マルコムの奇妙な語り口とその存在感は圧巻で、当時のピストルズの未公開映像やアニメーションなども織り交ぜられたこの映画は、凡百のロックミュージシャンのムービーの中ではひときわ異彩を放つものとなった。
「混乱から金を」「実際、演奏ができるよりはできない方がよいのだ」「音楽性はともかく、ジェネレーションギャップを創り出す方が肝心」「ピストルズを有名にするためにはあらゆる競争を避けた。」「音楽にはまったく興味のない弁護士を雇え」「ジョニー・ロットンは最終的には敵側(アメリカ)に身を売ったコラボレーター(対独協力者)」等々、マルコム独自のマネジメント哲学が語られており、彼の状況主義的スタンスが鮮明になっている。
映画タイトルのナンバー「グレート・ロックンロール・スウィンドル」の演奏シーンでは、「誰でもピストルズになれる・ガキのオーディション」と銘打ち、そこらへんのガキたちに代わる代わるボーカルを取らせており、ピストルズの虚構ぶりを強調しているのも印象的。つまり、ピストルズなんて所詮その程度のもので、売り方(マネジメント)次第で人気なんて出ちゃうんだよ、と言ってるのだ。「さぁ、時は今!ロックスターの座を騙し取ろう!」
ただし、この内容は「事実無根のでたらめ」とジョニー・ロットンらの怒りを買い、2001年「ノー・フューチャー」という新たなピストルズドキュメンタリーが、同じテンプル監督によって、旧メンバー全面協力のもと作られることになった。
リアルなピストルズストーリーとしては、「ノー・フューチャー」の方が正しい内容なのであろう。ただ、「グレート・ロックンロール・スウィンドル」は、マルコム・マクラーレンという稀代の詐欺師を強く印象づけ、彼自身を新たなスター、それも一流のトリックスターたらしめるきっかけとなったのだった。
同名のサウンドトラックがリリースされている。詳しくは『ザ・グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル』を参照。
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