カラフトシシャモ
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カラフトシシャモ | ||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Mallotus villosus | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
Capelin |
カラフトシシャモ(樺太柳葉魚・学名Mallotus villosus Müller 1776)は、サケ目キュウリウオ科マロータス属の海水魚。英名は capelin。
北太平洋、北大西洋の極北海域、オホーツク海、ベーリング海に生息し、日本では、北海道のオホーツク海沿岸にも回遊する。
シシャモと同様に産卵期の雌の腹腔は肥大した卵巣で満たされるが、河川に遡上するのではなく、浅海域で大群を成し、波打ち際の砂礫底に押し寄せて産卵する。現在の日本国内に産卵地は知られていない。
[編集] 流通上の問題
日本国内では1970年代以降、同じキュウリウオ科の日本固有種・シシャモの代用品として、シシャモの名で流通してきたが、シシャモとはかなり味が異なり、またキュウリウオ科の中の系統的位置も必ずしもシシャモに近いとは言えない。
シシャモとの最も確実な区別点は、鱗の大きさである。シシャモは鱗が大きく、体側の側線沿いに並ぶ鱗を数えると61-63であるのに対して、カラフトシシャモははるかに鱗が小さく、側線沿いの鱗を数えると170-220にもなる。
カラフトシシャモの和名自体は、同じキュウリウオ科で一見したときの姿が似ているものが、日本国内や沿岸域に分布する魚にシシャモ以外はないために名づけられ、古くから魚類学や水産学の現場では使われていたものである。
しかし、1970年代、シシャモの漁獲量の激減に伴い、流通現場ではカラフトシシャモをシシャモの代用品として流通させるようになると、北海道東南部沿岸に固有のシシャモより世界的な資源量ははるかに大きかったため、かつてのシシャモの流通量をはるかに上回る量で流通するようになり、それまで郷土食材、あるいは比較的高価な魚として流通し、全国的にはそれほど知名度が高くなかったシシャモを圧倒、1980年代には居酒屋チェーン店がメニューとして採用するなど、大衆魚としての地位を獲得した。
しかし、このような事態は、シシャモの特産地であった北海道鵡川町などの住民らに、郷土の特産品を汚されるような悪感情をもたらし、カラフトシシャモの和名すらシシャモのまがい物を名乗るものとして忌み嫌われるに至った。
食品表示の厳格化に伴い、2000年頃から英名を仮名表記したキャペリン、カペリン、和名のカラフトシシャモといった名称で流通するようになり、ようやくシシャモの代用品として扱われてきた経緯が広く知られるようになってきた。先述のように北海道のオホーツク沿岸にも回遊してきているが、国内では漁獲は行われておらず、日本に流通しているものの主体は大産地からの輸入品である。 近年、原産国ではシシャモの乱獲が進み、資源の枯渇が危惧される為、当該国では資源保護をうたい、漁獲制限を実施し始めている。日本におけるシシャモの主な輸入国は、ノルウェー、アイスランド、カナダ等が挙げられる。
[編集] カラフトシシャモの雄
本家のシシャモの雄は、淡泊な味わいがあることから市場にも流通するが、カラフトシシャモは100%メスで、いわゆる「子持ちシシャモ」として流通する。カラフトシシャモの雄はペットフード等の加工品に回るほか、水族館における海獣類への餌などに使用され、食用として市場に流通することは希である。
1980年代、カラフトシシャモがまだ高価な食材であった頃は、キズがついた雌の卵を取り出し、注射器で雄の口から押し込み人工的な子持ちシシャモの製作を試みる業者もいたようだが、取り扱い業者が増えると瞬く間に流通価格が下落し採算が合わなくなってしまった。