アエロフロート航空593便墜落事故
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アエロフロート航空593便墜落事故とは、1994年3月22日にロシアのアエロフロートのエアバスA310-308がシベリアに墜落した航空事故である。事故の原因であるが、パイロットが自分の子供を操縦座席に座らせたのが直接の要因であると判明した。
[編集] 事故の概略
アエロフロート航空593便はエアバスA310-308(機体記号F-OGQS、フランス籍のリース機)で、モスクワから香港に向かっていた。事故当時は夜間であったが気流に問題はなかった。しかし同機は、1994年3月22日午前1時(現地時間)、遭難信号も緊急事態を報告する通信も発することなく、シベリアのノボクズネツクから南東300Km離れたアルタイ地方の針葉樹林に墜落した。この事故で乗員12名、乗客63名のあわせて75名全員が犠牲になった。フライトレコーダーの記録では巡航高度10000m(ロシアではメートル法が使用されている)から失速し、回復不能なスピン状態に陥った後で急激に降下して標高400mの山地に激突したことが判明した。
[編集] 事故原因
ボイスレコーダーの記録から事故直前、機長が自分の娘と息子に機長席に座らせて自動操縦装置の操作をさせていたことが判明した。この事が、機長が認識していなかったエアバスの操縦システムによって事故を誘発した最大の要因であった。
15歳になる彼の息子に操縦桿での操縦をさせていた際に、息子の操縦で変更された針路をエアバスの自動操縦システムが修正していたが、この息子の行為は30秒にわたって自動操縦を否定することになったため、手動操縦と自動操縦が干渉し、釣り合った状態でやや右に傾きながら飛行することになった。この傾いた姿勢は夜間であったこともあり操縦者に認識されなかった。また機長も操縦座席に座っていなかったためわからなかった上に、コックピットに残っている娘に気を取られ注意力が欠如していた。そもそもコックピットに子供を入れた上に操縦桿に触れさせるモラルの欠如が最大の事故原因であったといえる。やがてトルクリミッターが作動し、エルロンに自動操縦装置の信号が届かなくなり、機体が大きく45度右に傾いて失速することになったが、この時いかなる事態に陥ったかを機長は認識していなかった。
その後、回復不能なスピンに陥ってまっ逆さまに降下することになり、あわてて副操縦士が操作を代わって急激な引き起こしを行ったが、水平飛行に戻すことに成功する寸前に墜落した。引き起こしによって機体にかかった重力は4.8Gにもなっていた。
自動操縦装置に対する知識の不足と回復操作の遅れが事故を招いたと指摘されたため、機体が予期せぬ状態になった時の回復操作訓練を加えるとともに、操縦者が規定どおり運航しているかをチェックすることが答申された。