アウトサイダー・アート
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アウトサイダー・アート (outsider art) とは、フランスの画家ジャン・デュビュッフェ(Jean Dubuffet; 1901年-1985年)がつくったフランス語「アール・ブリュット(Art Brut)」を、イギリスの著述家ロジャー・カーディナルが英語の「アウトサイダー・アート」という表現に訳し替えたものである。
その意味は、デュビュッフェが1949年に開催した「文化的芸術よりも、生(き)の芸術を」のパンフレットには、「アール・ブリュット(生の芸術)は、芸術的訓練や芸術家として受け入れた知識に汚されていない、古典芸術や流行のパターンを借りるのでない、創造性の源泉からほとばしる真に自発的な表現」のことだとある。
つまり、特に芸術の伝統的な訓練を受けていなくて、名声を目指すでもなく、既成の芸術の流派や傾向、モードに一切とらわれることなく自然に表現したという作品のことをいう。特に、子どもや、正式な美術教育を受けずに発表する当てもないまま独自に作品を制作しつづけている者などの芸術も含む。
なお、デュビュッフェの作品をArt Brutに含めるケースもある。
デュビュッフェ自身は、知的障害者が描いたものとは一切言っていないが、一般に、そういう障害者の作品をいうことがままある。一般にアウトサイダーアートは精神障害者の描いた絵画と思われているが、必ずしもそうではない。
とかく、障害者を社会の枠外に置きたがる風潮のなかで、そうした人たちに対して「アウトサイダー」という言い方をする場合、差別的という非難をされてもしかたがない。アウトサイダー・アートを安直に、精神障害者のアートと結びつけることも好ましくない。その代わり、今日では、そういうさまざまな障害を持った人たちの作品を、エイブルアート、ワンダー・アートという呼称で、社会につながりを持つための手がかりとして支援しようとする動きがある。国内では、トヨタ自動車などがその最大のスポンサーとして活動している。
ただし、精神病院内におけるアートセラピーという背景事情があり、作者の多くが「結果的に」精神障害者だったことは、事実として認めなければならない。
日本においては、1993年に世田谷美術館における「パラレル・ヴィジョン」という企画によって、本格的に紹介されている。
また、デュビュッフェは、これらの作品を収集し、このコレクションは、現在、スイス・ローザンヌ市で「アール・ブリュット・コレクション」として所蔵されている。
またオーストリアのウイーン郊外にある、マリア・グギング国立精神病院内のグギング芸術家の家は、入院患者のうち絵画の才能のある人たちが居住して創作活動を行っており、アウトサイダー・アートの拠点となっている。
なお、アウトサイダー・アートの評価であるが、いわば、こちら側の視点で、あちら側の「芸術」を評価しているという構造自体がおかしい、と、現在の「評価方法」の根本に疑問を呈する論者もいる(アウトサイダー・アートの価値自体を認めないという立場とは異なる)。これは、プリミティブ・アートに対する西欧(文明)からの評価に対する批判と同じ視点である。
[編集] 参考文献
- パラレル・ヴィジョン―20世紀美術とアウトサイダー・アート/モーリス・タックマン、キャロル・S.エリエル/淡交社/1993年
- アウトサイダー・アート/求龍堂/2000年
- アウトサイダー・アート/服部正/光文社新書/2003年